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天才小学生と真選組の方々。

作者:沖田
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不吉な予感

「んで」みんなが一旦席に着くと、旦那が切り出した。「どんな情報が欲しいんだ?その…神威、阿伏兎について。」
私と神楽ちゃんの顔がこわばり、神楽ちゃんが手を握ってきた。私も手を握り返した。
「全部だ。」目暮警部が言った。「小さい頃の様子、ここ最近の言動、何かおかしかった点。」
どちらが先に話すか、神楽ちゃんと私は顔を見合わせた。ややあって、神楽ちゃんが話し出した。
「あいつは、戦闘オタクアル」神楽ちゃんの声は震えていた。「小さい頃からよく、近所の子供達と喧嘩してたアル。それで、大きくなって、マミーが病気になると、パピーがいない時を見計らって、夜に出かけるようになったネ。どこに行くのか聞いても答えてくれなかったけど、帰ってくると必ず怪我を負ってたアル。それでだんだん出かける頻度が高くなって、マミーが亡くなった日の夜出かけたっきり帰ってこなくなったネ。それで銀ちゃんと万事屋組んで、戦うようになったらひょっこり顔だしてきたヨロシ。最近、気になった言動といえば、この前戦ったときに、『お兄ちゃんたちはね、新しい獲物を見つけたから、そこで暮らすんだ。だからここにはしばらく帰ってこないかも。』って言ってたことアル。」
「なるほど」小五郎さんが言った。「その新しい獲物というのが、今回殺害された人たちかもしれない、と。」
神楽ちゃんは頷いた。手が震えているのが、握っていてわかった。
刑事さんたちが私の方に顔を向けた。
私は深呼吸をして、話し出した。声が震えているのが、言われなくてもわかった。
「あ、阿伏兎、は」
その途端、私の意識は、小さい頃に戻っていた。

「う、うわぁぁぁぁぁ!姫が来たぞぉー!」
と言って男の子たちが逃げていく音が聞こえる。
その当時、まだ私は5歳ほどだったが、同い年の男の子を倒してしまうほどおてんばで、「姫」と呼ばれていた。
そこに、1人の男の子が現れる。栗色のサラサラヘアー、円らな瞳、甘いマスク。若かりし頃の総悟だ。
「俺と、決闘をしてほしいでさぁ。」
「いいの?負けても知らないわよ。」
そう言って、戦いは始まった。実力は五分五分ほどだったが、結局は私が勝った。
そうすると、総悟は笑って、「俺に剣術を教えてくだせぇ。」と言った。
私は、笑ってOKした。

「恋奈?どうしたアル?喋り始めから何もしゃべってないネ。大丈夫アルカ?」
「あ、ごめんなさい。」
私は先ほど見た、小さい頃の記憶を振り払うようにして話し始めた。
「阿伏兎は、小さい頃は普通の男の子だったけど、でも、神楽ちゃんと同じ時期に、親がいない時を見計らって出かけることが多くなって、そして神楽ちゃんのお母さんが亡くなった日の夜、出かけたっきり帰ってこなくなりました。最近の言動で気になった点はありません。」
「ふむ」また小五郎さんが言った。「つまり、その時期から、阿伏兎と神威は、一緒に行動していた可能性がある、と。」
「可能性がある、ではなくて」土方さんが訂正した。「そうなんだ。真選組の調査でも発覚しているし、本人が自白している。」
小五郎さんは不満そうだったが、頷いて、言った。「警部、ここは彼らに頼って、やつらが次に殺害しそうな人のリストを作った方がいいのでは…」
目暮警部が頷いた。「では、そのようにしてくれませんかね。」
その途端、神楽ちゃんが弾かれたように立ち上がり、後ろに行ったかと思うと、壁をゴン!と拳で殴った。もちろん神楽ちゃんの馬鹿力、壁にピキピキピキ…と亀裂が走った。
「すごい…」「蘭お姉さんみたい…」「本当ですね…」と少年探偵団のみんなが口々に言った後、神楽ちゃんが突然大声で言った。
「許せないアル!異世界でもこんなことしてやがるなんて、あいつら許せないヨロシ!あんなやつ、さっさとくたばって死んじゃえばいいネ!」
「おーい、神楽ぁ」旦那が気の抜けた声で言う。「やめろー。その壁の修理代、万事屋から出すことになんだぞー。そうすればお前の給料もっと少なくなっぞー。」
「って銀さん!」とすかさず新八くんが突っ込む。「こんな時でもお金のことしか考えてないんですね!あなたサイテーですよ!」
しかし、神楽ちゃんは止めない。それどころか、2度、3度と拳を壁に打ち付ける。ヒビが大きくなっていく。
「あちゃー。んじゃ、姫さん、やってくれや。」
旦那に言われて、「その呼び方、やめてください。」と釘を刺してから、神楽ちゃんの元へ向かう。
「神楽ちゃん?わかったから、もうやめてくれない?」
まだ、神楽ちゃんは止めない。
そこで私は、ちょっと強引だが、肩を掴んで、こちらに無理やり向かせた。すると、神楽ちゃんは私に向かって拳を突き出してきた。
覚醒しかかってる。怒りが神楽ちゃんの本能を引き出そうとしている。
私はうまく拳を避け、目の前で指をパチン!と鳴らした。神楽ちゃんの目がこちらに向かった。
「…恋奈だったアルカ。ごめんネ。私、覚醒…」
「しかかってた。怒りに身を任せちゃダメだよ。」
神楽ちゃんは目に恐怖を浮かべ、言った。「止めてくれて感謝してるアル。」
「いいえ。」
ただ、私は思った。
不吉なことが起こりそうな予感がする。
 
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