八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十九話 夏祭り前日その八
「死んでからもです」
「存在するんですね」
「夫婦、親子もです」
「死んでからもですね」
「夫婦であり親子なのです」
「そういうものなんですね」
「ただ、夫婦は再婚もあります」
畑中さんはその長く深い人生経験からこのケースも話してきた。
「恋人同士でもありますね」
「はい、あと離婚とかも」
「そうしたこともありますので」
「その関係は、ですか」
「リセットされたり新しくはじまったりもします」
「永遠でありながら」
「そうしたこともあります」
こう僕に話してくれた。
「そういうことも覚えて頂ければ幸いです」
「そうですか」
「私は妻と一緒ですが」
「何十年もですね」
「半世紀以上の間です」
金婚式はもう過ぎていた、クラシックの曲でもそんな曲があったのを思い出した。
「ずっとです」
「半世紀以上ですか」
「妻のことを忘れていません」
その長い間ずっと、というのだ。
「そうしてきています」
「そうなんですね」
「それが夫婦という絆です」
こうもだ、畑中さんは話してくれた。
「かけがえのない絆です」
「そして親子もですね」
「義和様にとっても止様にとっても」
「親父もなんですね」
「少なくもとも私が見る限り止様はよいお父上です」
「まあ最低かっていうと」
そう言われるとだ、僕にしてもだ。
「そこまではいかないですね」
「左様ですね」
「破天荒ではありますけれど」
「決して卑しい方、乱暴な方ではないですし」
「軽蔑はしていません」
僕はこうも言った。
「俺は尊敬するなとは言われましたけれど」
「尊敬はですね」
「そんな偉い人間じゃないって言って」
「それもいいことです」
「自分を尊敬するなって言うことはですか」
「よいことです」
そうだというのだ。
「非常に」
「まあ自分を尊敬しろとか」
僕もだ、こうしたことにはどうしたものかという顔になってそうして首を傾げさせてそのうえで畑中さんに答えた。
「恥を知らない人の言葉ですね」
「私もそう思います」
「ですから僕もそんなことは」
とても、だった。
「言えないです」
「そうですね」
「親父はそのこともいいですね」
「確かに」
「破天荒でも人として弁えていることは弁えている」
「それが止様です」
つまり僕の親父だというのだ。
「私はあの方が好きです」
「じゃあ今度親父に行っておきます」
「そうして頂ければ何よりです」
「じゃあ」
「その様に。では」
「行ってきます」
こう話してだった、僕はこの日登校して部活に出た。見れば今日部活に来ている部員はいつもより少ない感じだった。
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