八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十九話 夏祭り前日その七
「そうしたものだと考えています」
「どちらか一方の人が死んだ時にわかるのですか」
「若し悲しいと思わないならです」
その死んだ時にだ。
「その人は友達ではないのです」
「そういうものですか」
「死んで嬉しいと思えば」
「それはもう絶対にですね」
「友達ではなく敵です」
「それわかります、人はどうしても」
それこそだ。
「嫌いな人いますから」
「そうした人が死んで悲しいとは思いませんね」
「あまりにも嫌いな人なら」
「嬉しくさえ思いもしますね」
「ざま見ろとか」
後は地獄に落ちろ、等だろうか。流石にそこまで嫌っていると相当だと思うけれど。
「そう思うとですね」
「もうとてもです」
「はい、友達じゃないですね」
「それは敵です、しかし」
「悲しいと思えばですね」
「友人です」
そうなるというのだ。
「その方は」
「それが友達ってものですか」
「私もわかった様な気がします」
「友達というものについて」
「自分がそうだと思っていても相手が違う場合がありますので」
そしてその逆もだ。
「しかし。その人が死んでです」
「悲しい、残念だって思えば」
「そこで友情というものがはっきりわかるのです」
「相手の気持ちなんて中々わからないものですからね」
「この世で最も難しいことは人の感情です」
まさにそれこそがともだ、畑中さんは話してくれた。
「相手の人の感情は把握しにくいです」
「その真意は」
「それが世の中で最も難しいことなのですから」
畑中さんは再び僕にこう言った。
「ですから」
「友情はわかりにくいですね」
「とても、そしてその人が友達だとわかった時は」
「辛いものですね」
「相手の人とはもう生きて会えないのですから」
「残念なことですね」
「私の考えは間違ってるでしょうか」
ここまで話してだ、畑中さんは僕に尋ねてきた。
「それは」
「どうでしょうか、ただ」
「ただ?」
「畑中さんがそのお考えに至ったのにはやはり」
「そうしたことがありました」
「お友達が、ですか」
「先に死なれて悲しい思いを幾度もしてきました」
その人生においてとだ、畑中さんは実際にこう言った。
「そしてその度にです」
「その人が友達だとですね」
「わかってきました、成人式の時に友人だった人の遺影を持って来る方もおられますね」
「はい、聞きます」
「それは友達だからですが」
「畑中さんのお考えだと」
「その方はお互いに生きていた頃からそう思っていたかも知れませんが」
畑中さんのその友情観がここでも出た。
「先に逝かれてです」
「そこで、ですか」
「友達だとわかったからこそ」
「その人を連れて来たのですね」
「そうだったのです」
「成程、そうなのですね」
「人の絆は生きていても存在しますが」
畑中さんはこうしたこともだ、僕に話してくれた。
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