八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十九話 夏祭り前日その四
「愛嬌もありますし」
「確かに愛嬌もありますね」
僕は畑中さんのその言葉に納得した、そういえば妙に愛嬌のある国だ。
「憎めないっていうか」
「戦争に弱く女の子が好きで快楽的で抜けたところもあるイメージですが」
「それでもですよね」
「あの国には愛嬌を感じますので」
「憎めないんですね」
「それは義和様も同じですね」
「はい、僕にしても」
実はだった、実際に。
「あの国嫌いじゃないです」
「左様ですね」
「同じ枢軸国だったのに戦勝国になっていたのは釈然としないですけれど」
本当に何でだと思う、しかも攻めておきながら惨敗ばかりでドイツに助けてもらってばかりなのもどうにもと思う。
けれどだ、そうしたところも含めてだ。
「愛嬌ありあますね」
「確かに」
「止様も今イタリアにおられますが」
「ああ、親父前からイタリア好きなんですよ」
「左様ですね」
「イタリアで楽しくやってるみたいですし」
電話の向こうの表情が容易に想像出来る位にだ。
「嫌いじゃないですね」
「左様ですね」
「親父に合ってる国だと思いますし」
感覚的にだ。
「ですから」
「はい、止様にもです」
「合ってる国ですよね」
「止様はとても陽気な方なので」
「まあ陽気なだけじゃないですけれどね」
極端に享楽的だ、どうにもならない位に。親父はその辺りは諸刃の剣だと僕は思っている。周りは皆違うことを言うけれど。
「それでもですね」
「イタリアに合っておられます」
「だから楽しんでるんですね、今も」
「何でも新車を買われたとか」
「イタリアで」
「はい、あちらの車を」
「っていいますと」
イタリア車と聞いてだ、僕はすぐにこの車を出した。
「あれですか、フェラーリ」
「どうやら」
「そうですか、フェラーリをですか」
「買って乗られているそうです」
「親父らしいですね」
「はい、義和様は車もお好きです」
自分でサーキットの狼とか言っている位だ、随分古い漫画を読んでいるなと思いながらその話を聞いていた。
「それでなのです」
「フェラーリ買ってですね」
「楽しんでおられます」
「あとポルシェも好きなんですね」
勿論それも乗って楽しんでいる。
「日本車も」
「そういえば日本車も持っておられますね」
「そっちは八条グループのお車です」
八条自動車のスポーツカーだ、それを乗り回してもいる。
「あれで車好きなんです」
「左様ですね、それでなのです」
「イタリアで暮らしているからこそ」
「フェラーリを乗っておられるそうです」
「そうなんですね、ただ」
「ただ、とは」
「事故だけは気をつけて欲しいですね」
僕は自然とだ、この言葉を出した。
「本当に」
「そうですね、お車もいいですが」
「事故を起こしたら元も子もないですから」
「はい、親父運転は上手ですけれど」
伊達にサーキットの狼を自称したりはしない、それで飛ばせる場所では凄い運転で凄いスピードで走る。
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