八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十九話 夏祭り前日その一
第五十九話 夏祭り前日
お祭りが明日になった、その日になってだ。
僕は部活に出る時にお空を見上げてだ、見送って来てくれた畑中さんに尋ねた。
「明日晴れますよね」
「天気予報では」
畑中さんはこのことから答えてくれた。
「そうなっていますね」
「降水確率どれ位でしたっけ」
「ゼロでした」
ゼロパーセントだったというのだ。
「ですからまずです」
「雨が降ることはないですね」
「そうです、天気予報では」
「じゃあお祭り楽しめますね」
「そうですね、では私もです」
「畑中さんもですか」
「妻と一緒に」
長年連れ添っている奥さんと一緒に、というのだ。
「お祭りを楽しんできます」
「では」
「はい、お屋敷のことはです」
八条荘のことはというと。
「ボディーガードの人が守ってくれますので」
「だからですね」
「殆どの者が外出しています」
「そうですか、今日はですね」
「八条荘には殆ど誰も残らないです」
「ボティーガードの人以外は」
「あとはお祭りに行かない者が残ります」
そうした人達もいるというのだ、八条荘に。
「ですから留守はご安心下さい」
「そうですか」
「はい、ですから留守はお気兼ねなく」
「わかりました、じゃあ僕も言ってきます」
「それでどうした服を着られますか?」
ここでだ、畑中さんは僕に尋ねて来た。
「やはり浴衣ですか」
「そのことですね、実は」
「まだ、ですか」
「決めてないんです」
正直にだ、僕は答えた。
「それが」
「そうですか」
「ジーンズがいいか浴衣か」
「浴衣もありますので」
「そちらを着たいならですね」
「どうぞ」
畑中さんは僕にいつもの穏やかな声で答えてくれた。
「義和様のお好きな服を着られて下さい」
「はい、あと友達から二次大戦中のアフリカでのイタリア軍の軍服を言われました」
「軍服ですか」
「イタリア軍の」
「その軍服も紹介されました」
「あのサファリパークで着る様な服ですね」
その頃のその場のイタリア軍の軍服と聞いてだ、畑中さんはこう答えてくれた。
「あの服なら知っていますが」
「そうなんですね」
「はい、ただイタリア軍ですか」
この軍隊についてはだ、畑中さんは首を少し傾げさせてから僕に答えた。
「またマニアックですね」
「その友達イタリア軍マニアなんです」
「ドイツ軍ではなくて」
「イタリア軍です」
畑中さんにだ、僕はあらためて答えた。
「これから部活に行くんですけれどそこにいます」
「バスケットボール部の方ですね」
「そうです、変わってますよね」
「確かに。イタリア軍はです」
「人気ないですよね」
「二つの大戦はおろか他の戦争においても」
畑中さんもご存知だった、イタリア軍のそのことは。
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