八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十八話 祭りの前その五
「そうしようか」
「どうせならな」
軍事マニアでもある仲間がここでこう言って来た。
「アフリカ軍団でどうだ?」
「ドイツ軍の?」
「イタリア軍でもイギリス軍でもいいけれどな」
「どっちにしてもアフリカなんだ」
「ああ、それでいくか?」
その服装でというのだ。
「暑い時にあれだろ」
「白っぽい服で膝までの半ズボンで半袖で」
「暑い時はあれだよ、帽子だって生地が薄くてな」
帽子の話もしてきた。
「暑い時はあれだよ」
「熱気にはいいよね」
「日差しにもな」
「どっちにもいいね」
「ああ、昼でも夜でもいいぜ」
アフリカ軍団の服はというのだ。
「快適だぜ、実は俺イタリア軍団の服持ってるんだよ」
「イタリアって」
「おい、そこで何で止まるんだよ」
僕が実際に言葉を止めたのを察してだ、さらに言って来た。
「イタリア駄目ってのか?」
「そうじゃないけれど」
「どうせあれだろ、弱いからだろ」
自分で言って来た、少なくともイタリア軍が弱いというのはそれこそ歴史をちょっと知っていると誰もわかっていることだ。
「イタリア軍だと」
「まあそれは」
「実際弱いさ、イタリア軍」
言葉は現在形だった、過去形じゃなくて。
「戦争したら一目散に逃げて捕虜になったら泣いて命乞いしてな」
「そうらしいな、確か」
「イタリア軍ってちょっとこづいたら命乞いしてな」
「ピーピー泣いてな」
「いいイタリア人とか言ってな」
「パスタとかワインばかり食っててな」
「映画だと現地の女の子と恋愛やって」
皆もそれぞれイタリア軍について言う。
「兵器も変なのばかりで」
「戦うより逃げる」
「逃げ足は速くてな」
「戦死者より捕虜がずっと多いってな」
「全部そうらしいけれどな」
イタリア軍マニアの彼もだ、そうした話を全部認めた。
「洒落にならない位弱いさ、けれどな?」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「何かあるんかよ」
「あの国は常に戦勝国なんだよ」
今語る衝撃の事実だった、僕も他の皆もその言葉を聞いた時に雷に打たれた様になった。商店街のアーケードの中で。
「実はな」
「えっ、そうなの!?」
「あそこ戦勝国か!?」
「前の戦争で枢軸にいたぞ」
「日本とドイツと一緒に戦っただろ」
「早々と降伏しただろ」
彼は僕達にこの歴史的事実から話した。
「もうな」
「ああ、本当に早々にな」
「アフリカでも負けまくってな」
「シチリアから攻め上がられて」
「壮絶に負けた結果な」
「そこで負けて全部ムッソリーニのせいにしてな」
一人だけやる気のあった独裁者にだ。
「自分達は連合国に入ったんだよ」
「それで戦勝国かよ」
「そういえば一次大戦でも戦争前に連合国に寝返ってたな」
「ドイツにもオーストリアにも負けまくってたらしいけれどな」
「あの戦争でもだったな」
「そうだね」
僕もここで頷いた。
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