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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十八話 祭りの前その四

「絶対になれないから」
「だからか」
「浴衣着るの止めるか」
「高倉健さんみたいにはなれないから」
「だからか」
「ああした人でないと」
 イメージとしてだ。
「着流しは似合わないね」
「織田作之助さんか?」
 仲間の一人がこの人の名前を出して来た。
「略して織田作さんな」
「あっ、大阪の」
「そう、作家さんな」
「あの人も着流しだったんだ」
「戦前の人は結構和服着ててな」
「それだったんだ」
「着流し着てな、帽子を被って」
 そしてというのだ。
「そんな格好だったらしいぜ」
「へえ、そうなんだ」
「そんな風になるか?御前だと」
「織田作之助さんみたいに」
「すらってしてるしな」
 その織田作之助さんみたいにだ、そういえば写真で見た織田作之助は痩せていて面長の感じの人だ。髪を伸ばしていて粋な感じの人だった。
「ああした感じにならないか?」
「そうなるかな」
「まあ織田作之助さんだったら」
「まだいいかな」
「やっぱり作家さんと俳優さんだとな」
「また違うから」
「着方もな」 
 その着流しのだ。
「また違うよ」
「そうなんだ、じゃあ」
「着るかい?」
「そうしようかな」
 僕はここでまた傾いた、浴衣は止めようと思っていたけれど。
「やっぱり」
「まあ考えてな」
「うん、結局どの服を着てもお祭りには出るし」
 どの服でもだ。
「それは変わらないから」
「まあ男の服はな」
「正直どうでもいいか」
「浴衣だってな」
「どの服だってな」
「うん、ジーンズでも着流しでも」
 本当にどっちでもだ、僕自身言う。
「行くことは行くし」
「格好つけても動きやすくても」
「どっちでもな」
「男はね」
「その点楽だよな」
「夏は特にね」
 それこそだ、裸とかあまりにも奇妙な格好でない限りだ。
「楽だよね」
「涼しくて動きやすくて蚊に刺されない」
「その三つが満たされていればいいから」
 ここでだ、僕は気付いた。
「じゃあ浴衣は」
「まあジーンズとティーシャツの組み合わせよりはな」
「暑いか」
「着流しだとな」
「そうだよね、見た目は涼しげでも」
 実際にだ、着てみるとだ。
「ジーンズとシャツの方が涼しいね」
「どうしてもな」
「そうなるな」
「そっちの方が」
「じゃあ止めるべきかな」
 僕はあらためて言った。 
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