八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その十二
「わかります」
「けれど痩せの大食いとか」
「おられますね」
「そうした人もわかるんですか?」
「はい、おおよそ」
「そうなんですか」
「身体全体を見れば」
一部だけでなく、だ。
「それでおおよそ」
「お腹とかですか」
「そうしたところも見て」
「わかるんですね」
「私は」
「それわかるなんて凄いですね」
僕は唸ってだった、小野さんにこう返した。
「いや、ちょっと」
「何かわかるようになったのです」
「徐々にですか」
「そうなりました」
こう僕に話してくれた。
「本当に徐々に」
「お料理を作っているうちに」
「その人がどれだけ食べられるかを」
「何かそれって」
そのお話を聞いてだ、僕は言った。
「あれですね、残像っていいますか」
「野村監督のですね」
「あの人の現役時代の」
「そういえばそうですね」
小野さんも僕のその言葉に頷いて言ってくれた。
「野村さんはキャッチャーボックスで相手バッターの残像を見て相手の調子や狙っているボールを見抜かれましたが」
「そんな感じですよね」
「そうですね、相手の方を見てどれだけ食べられるか」
「それを見極めることは」
「野村さんと同じですね」
「あの方はリードに色々なものを入れておられました」
この辺りが後の智将と言われるまでになったはじまりだろうか、野村監督は経験から智将になった人だと思う。
「私はそこまでいきませんが」
「残像は、ですか」
「はい、何となくにしましても」
「身に着けてですね」
「いる様です」
「じゃあまだ」
「はい、お素麺を流し」
それからとだ、僕にさらに話してくれた。
「西瓜もです」
「切って、ですね」
「出しますので」
「わかりました、じゃあ西瓜も期待しています」
「それでは」
こう話してだった、僕達はまた流れて来たお素麺を食べた。そしてお素麺を満足するまで食べてからだった。
西瓜も食べた、三角に切った西瓜は甘くてとても冷たかった。赤い西瓜だけでなく黄色い西瓜もあったけれど。
モンセラさんはその黄色い西瓜を食べつつだ、こんなことを言った。
「この黄色い西瓜いいわね」
「クリーム西瓜好きなんだ」
「西瓜自体が好きだけれど」
「その中でもなんだ」
「黄色の方が好きなの」
「そうだったんだ」
「黄色っていう色自体が好きだし」
色自体もとだ、モンセラさんは三角に切ったその黄色ィ西瓜を先から噛じりながらそのうえで僕に話した。
「この西瓜の味もね」
「好きなんだ」
「そうなの、だからね」
「幾らでも食べられるとか」
「流石に今幾らでもは無理だけれど」
お素麺を食べたからだ、それで皆満腹している。小野さんの残像を見る能力のお陰で満足させてもらった。
「それでもね」
「結構食べられるんだ」
「そうなの、黄色も食べて」
種ごと食べていた、西瓜を。
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