八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その十一
「着付け出来るわ」
「あっ、留美さんも」
「ええ、私も剣道部でね」
「袴をはいて」
「実家着物多いし」
「そういえば留美さん京都生まれだから」
「着物には縁があるの」
それで、というのだ。
「お家にも結構あってね」
「着ているんだ」
「そうなの」
まさにとだ、僕に答えた。
「浴衣も。だから自分でも着られて」
「着付けも」
「出来るから」
「私も」
円香さんもだった、円香さんは西瓜が置かれる予定のテーブルをまだかまだかといった目で見つつ言って来た。
「着付けでしたら」
「あれっ、案外ネ」
「多いあるな」
ジューンさんと水蓮さんは二人の名乗りを受けて言った。
「うちのアパートで着付け出来る人ハ」
「これなら頼もしいある」
「なら浴衣を着テ」
「それで楽しむあるよ」
こう二人で話すのだった、そしてだった。
浴衣の話から皆また食べた、そのお素麺を。
そのお素麺がだ、なくなったと思った時にだった。小野さんが僕達に言って来た。
「では」
「あっ、お素麺はですか」
「はい、これで」
「終わりですね」
「何でしたらまた作りますが」
こう僕達に言って来た。
「お湯はありますので」
「茹でてですね」
「すぐにです」
出来るというのだ。
「如何でしょうか」
「じゃあ」
「もう少し」
「何かあっさりしてて」
「幾らでも食べられそうなので」
「お願いします」
皆で小野さんに答えた。
「相当食べたつもりなのに」
「けれど」
「これなら」
「まだ食べられます」
「それがお素麺です」
夏の、というのだ。
「魔力の様に食べられます」
「ですよね、僕も相当食べたのに」
お箸とお椀を手にしたままだ、僕は小野さんに応えた。
「まだいけます」
「そう思いまして茹でる用意はそのままにしておきました」
「もう終わるつもりだったんですか」
「一応は。ただ」
「それでもですか」
「はい、皆さんがよりと言われると思いまして」
それで、というのだ。
「そうしておきました」
「先読みですね」
「お料理の基本の一つで」
「食べる量はですね」
「どの方がどれだけ召し上がられるか」
そうしたことをというのだ。
「見ることも大事なのです」
「そんなのわかるんですか」
「その人の体格で」
それを見て、というのだ。
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