八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その九
「着るわ」
「そうするんだね」
「絶対にね」
強い言葉での返事だった。
「そうするわ」
「では」
ここでまた畑中さんが言った。
「その時はお話して下さい」
「この八条荘にあるの」
「レンタルですが」
あくまでこの形は変わらないけれどだ、それでもというのだ。
「既に用意してあります」
「その百着を」
「左様です」
「じゃあ着たいってその時に言えば」
「出せます」
それこそすぐに、というのだ。
「着付けも出来ます」
「その浴衣の」
「着物には着物の着方があります」
「あれっ、着るだけじゃないノ」
「違うあるか」
ジューンさんと水蓮さんは畑中さんの話を聞いて少し驚いて言った。
「あの浴衣というか着物っテ」
「着て帯を締めるだけではないあるか」
「違うよ」
僕が二人に答えた。
「それはまたね」
「っていうと一体どんな着方なノ?」
「複雑あるか」
「慣れないで着るとね」
どうなるかをだ、僕は話した。
「もう崩れて」
「花魁さン?」
「あれあるか?」
「うん、そうなるよ」
冗談抜きでそうなると答えた。もっと言えば花魁さんはあえてああした着方をしている。首の後ろを出して。
「というかもっと凄い格好になるから」
「そうなるノ」
「想像出来ないあるが」
「どんな格好になるカ」
「とにかく素人は着ない方がいいあるな」
「止めた方がいいよ」
僕は二人に注意して述べた。
「着付け出来る人に頼んだ方がね」
「私出来ます」
小夜子さんが名乗りを挙げて来た、お素麺を食べる手を止めて。
「着物のことなら任せて下さい」
「そういえば小夜子ってネ」
「普段から着物あるな」
見れば今もだ、小夜子さんは着物だ。とはいっても浴衣ではなくて何か生地の薄い涼しそうな青い着物だ。
「今もだシ」
「その着付けも出来るあるか」
「はい、自分でも着られます」
実際にというのだ。
「この服にしましても」
「自分一人で着たのネ」
「そうあるな」
「そうしました」
「ううン、凄いネ」
「言われてみればどう着るか不思議ある」
二人もここでわかった、着物を着ることの難しさが。
「魔法みたいなもノ?」
「着物を着ることはそうあるか」
「魔法ではないですが」
小夜子さんはこのことは違うと断った。
「しかしコツというか技術が必要でして」
「服を着るのに技術っていうのが」
どうかとだ、モンセラさんが言った。
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