八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その八
「ありますが」
「あるのね、八条荘に」
「百着はあります」
「えっ、多いわね」
「レンタルですが」
「ああ、借りるのね」
「ご本家の服がありますので」
八条家のだ、こうしたことでもご本家は本当に気前がいい。
「その時はです」
「借りられるのね」
「浴衣も」
「じゃあその時は」
「夏祭りの時は如何でしょうか」
その時にというのだ。
「浴衣を着られては」
「夏祭りって?」
「日本のお祭りの一つでして」
「八条神社のお祭りなんだ」
僕がモンセラさんにそのお祭りの事情を話した。
「この町の神社が全部一度にやるね」
「そうしたお祭りなの」
「そうなんだ」
「八条神社はこの町の神社の大元締めみたいなものでね」
「それで他の神社もまとめてるのね」
「うん、日本でもかなり格式の高い神社だよ」
流石に伊勢神宮や出雲大社には負けるがだ、それでも相当に格式が高くてしかもかなり大きな神社だ。
「あそこはね」
「そうなのね」
「それでそのお祭りはね」
「賑やかなのね」
「日本でも屈指のお祭りだよ」
そう言われているし実際に人も出店も多い。
「あそこはね」
「それじゃあそのお祭りの時は」
「浴衣着たらいいよ」
「そうするわね、けれどね」
「けれど?」
「浴衣はね」
この服自体についてだ、モンセラさんはこうしたことを言った。
「これまで着たことないから」
「そうだよね、そのことは」
「あれ日本だけの服だから」
それで、というのだ。
「そんなの着たことないわ」
「メキシコにある筈ないね」
「着物っていうとね」
浴衣だけでなく、だ。
「もう日本の不思議な服」
「そんな感じなんだ」
「そうだったの、実際日本でもあまりでしょ」
「うん、もう着てる人あまりいないよ」
呉服屋さんはあるけれどだ、そもそもその着物自体が晴れ着の中の晴れ着で滅多に着られるものではなくなってる。
「あまりというか殆どね」
「街でもいないわね」
「一張羅になってるから」
「日本の」
「だからね」
本当にそうだからだ、もう日本でも。
「もう滅多にいないよ、ただ浴衣はね」
「そっちの着物はなのね」
「夏のそうしたお祭りの時はね」
あくまでこの時限定だけれどだ。
「女の子で着てる人多いよ」
「その時に着る服なの」
「夏祭りだと浴衣ってね」
「そうしたイメージなのね」
「イコールになってるから」
まさにだ、夏祭りイコール浴衣だ。日本全土でそんなイメージだ。
「それでね」
「夏は浴衣着る娘多いのね」
「それでモンセラさんも」
「折角日本に着たから」
だからとだ、モンセラさんは僕に確かな声で答えた。
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