八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十七話 流し素麺その七
「ソーダやお湯割りよりもな」
「ふうん、そうした飲み方もあるのネ」
「ソーダやお湯割りもあるあるか」
「個人的にはだ、これが一番美味く飲みやすい」
「確かにいいね」
モンセラさんもそのロックの梅酒を飲みつつ言う。
「これなら幾らでも飲めるよ」
「それは何よりだ、ではだ」
「今日はこのお素麺とね」
「梅酒、それにだ」
「西瓜もよね」
「どれも楽しむといい」
言いつつだ、井上さんはお素麺を食べた、今度は。
「日本の夏らしくな」
「これでね」
今度は日菜子さんが出て来て言った。
「後は花火があればね」
「あっ、花火」
「そう、それもあれば最高ね」
「どっちの花火なの?」
モンセラさんは日菜子さんから花火と聞いて日菜子さん本人に問い返した。
「一体」
「あっ、お空に打つ方か持つ方か」
「どっちなの?」
「そうね、ここはね」
日菜子さんは少し考えてからモンセラさんの質問に答えた。
「お空に打つ方ね」
「そっちの方なのね」
「やっぱり日本の夏にはね」
「そっちの花火なのね」
「日本の夏はそれもあるのよ」
花火もというのだ。
「打ち上げる花火ね」
「そう、打ち上げ花火もね」
「日本だと夏にしか上げないの?」
その打ち上げ花火はとだ、モンセラさんは日菜子さんにさらに尋ねた。そういえば僕も外国からの留学生の人によくこう尋ねられて答えている。
「花火は」
「最近まではそうだったけれど」
「そうなの」
「最近は違うわ」
「夏以外もなのね」
「冬のスキー場とかでね」
いつもこう答えている、八条グループが経営しているスキー場でもそうなのでこのことは僕も知っている。
「打ち上げるのよ」
「スキー場でなのね」
「夜にね」
「そうなの」
「冬の花火っていうけれど」
太宰治の小説だ、この作品ではマイナスのイメージで書かれていた。
「最近は日本でもね」
「夏以外でのなのね」
「花火打ち上げるから」
実際に、とだ。日菜子さんも話した。
「そうしてるうの」
「そうなのね」
「まあ日本は花火は基本夏ね」
「決まってるのね」
「誰が決めたか知らないけれど」
そういえば僕も知らない、どうして花火は夏のものなのか。
「そうなってるのよ」
「そうなの」
「それで服は浴衣」
「日本の着物ね」
「それになってるの」
「浴衣でしたら」
お素麺を食べる手を止めてだ、畑中さんがお話してくれた。右手のお箸と左手のお椀の持ち方が何故か凄く粋な感じだ。
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