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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十六話 午後の紅茶その十三

「ビールや梅酒がいい」
「わかったわ、じゃあ小野さんにお願いしてみるわね」
「いいことだ、ではな」
「今度ね、じゃあ今は」 
 ここまで話してだ、モンセラさんはまたテーブルと椅子を見て言った。
「今度ね」
「今度だな」
「ええ、伯爵さん達観るのはね」
「映画そのままの姿でいるとのことだ」
 ドラキュラ伯爵達はというのだ。
「だから目立つそうだ」
「タキシードにマントね」
「そうだ、その姿でだ」
「いるのね」
「だからすぐにわかるとのことだが」
「まあ今は七時にならないと出ないみたいだし」
 逢魔ヶ刻がだ、その時になるからだ。井上さんが言うには最も妖怪が出るというその昼と夜のはざかいの時間だ。
「じゃあ帰ってね」
「休むな」
「そうするわ」
 こう言ってだ、そしてだった。
 モンセラさんは僕にもだ、こう言った。
「じゃあね」
「これでね」
「帰ろう」
 言う言葉はこうしたものだった。
「今日はもうね」
「うん、じゃあね」
「それじゃあね」
 こうしたことを話してだ、そのうえでだった。
 僕達三人はアパートに帰った、そして実際に家に帰るとだった。モンセラさんはすぐに小野さんにお願いをした。
「一ついい?」
「何でしょうか」
「お願いがあるけれど」
 こう言うのだった。
「今度お素麺作って」
「お素麺ですか、それでしたら」
「でしたら?」
「実は今から作るつもりです」
 早速、という言葉だった。
「外で流し素麺を作るつもりでして」
「流し素麺」
「はい、それを作ってです」
 小野さんは自分から話した。
「デザートは西瓜を考えていました」
「私西瓜もお願いするつもりだったのよ」
「そうだったのですか」
「丁度いいわね」
「飲みものは麦茶を考えています」
 このこともだ、小野さんはモンセラさんに言った。
「よく冷えた」
「麦茶もなのよ」
「考えておられたのですか」
「小野さん人の心読めるの?」
 かなり真剣にだ、モンセラさんは小野さんに問い返した。
「それで私の考えを全部」
「いえ、それはありません」
「テレパシーの能力ないの」
「私はただのシェフです」
 小野さんは笑ってモンセラさんに答えた。
「ですから」
「そうなのね」
「日本の夏の定番なのね」
「お素麺と西瓜は」
「そして麦茶は」
 その通りだ、夏はこの三つがないと日本の夏じゃない。この中のうち一つが欠けても本当に何にもなりはしない。
「日本の夏の象徴です」
「そんなに重要なものなのね」
「花火と浴衣、夜店に団扇と同じ位です」
 小野さんは笑ってこうも言った。
「日本の夏には欠かせません」
「それで自然となの」
「この三つは欠かせないので」
「今晩はこれなのね」
「そうです」 
 まさにという口調でだ、小野さんはモンセラさんにお話した。そして。 
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