八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十六話 午後の紅茶その十二
「諦めることだ」
「諦めるしかないのね」
「冷水シャワーを浴びクーラーの効いた部屋で休むことだ」
「そうすればいいのね」
「今はどちらもある」
その冷水も冷房もというのだ。
「昔より遥かにいい筈だ。それにだ」
「それに?」
「氷を入れた麦茶や飲みものもある」
ここで話は日本風になった。
「よりいい筈だ」
「昔はそういうの全部なかったから」
「夏はひたすら暑くだ」
それに、とだ。井上さんはさらに話を続けた。
「涼む手段も少なかった」
「こんなに暑いのに」
「それでもだ」
「それは難儀なことね」
「そうだな、しかし今は大丈夫だ」
そういったものが揃っているからだというのだ。
「八条荘に帰りだ」
「冷たいシャワーを浴びて」
「クーラーの入った部屋で休みだ」
「そしてなのね」
「後はだ」
それにというのだ。
「麦茶と西瓜だ」
「ジュースとアイスクリームじゃなくて」
「その二つだ」
麦茶と西瓜だというのだ、この組み合わせもだった。井上さんは引かなかった。
「これは引けない」
「何でそこで引かないのよ」
「西瓜は好きか」
「大好きよ」
このことは同じだった、モンセラさんも。夏のよく冷えた西瓜程度美味しいものはない。それでこう言ったのだった。
「西瓜程美味しいお野菜はないわよ」
「そうだな、ではそれも食してだ」
「アイスじゃなくて」
「西瓜だ」
そして麦茶だというのだ。
「この組み合わせが一番いい」
「日本の夏は」
「そして素麺だ」
井上さんはさらに言った、日本の夏はとだ。
「これもまたいい」
「お素麺ってそんなにいいの」
「日本の夏はこれだ」
何といってもという口調での言葉だった。
「素麺もまた、だ」
「いいのね、じゃあそこまで言うのなら」
「食するな」
「西瓜と麦茶にね」
それにだった。
「お素麺もだ」
それもというのだ。
「いいものだ」
「ううん、じゃあね」
「食べてみるな」
「今度小野さんにリクエストしてみるわ」
「いいことだ、あとお素麺の時にはだ」
井上さんはこだわりも見せた。
「梅酒かビールがいい」
「ああ、飲むお酒ね」
「実は西瓜にはお酒はあまり合わないのだ」
「ビールも?」
「うむ、甘いからな」
そういえばそうだ、僕も話を聞いて思った。西瓜は甘いうえに水気が多いのでどうしてもお酒には合わjない。
「あまり勧められない」
「けれどお素麺は」
「水の中に入れて冷やすがな」
「それでもなのね」
「こちらはまだいける」
一緒にお酒を飲んでもというのだ。
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