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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十六話 午後の紅茶その四

「部活が終わる時間ですし」
「そうだな、もう少しだな」
「じゃあ待ちますか」
「うむ、あと少しだがな」
 こう話してだ、そしてだった。
 僕と井上さんは待つことにした、そして。
 一分位でだった、僕達が木陰で休んでいると。そこにモンセラさんが来てだった。そうして微笑んでそのうえで言って来た。
「待った?」
「いや、三分位でね」
「来た感じだった」
 僕達はこう答えた。
「だから別にね」
「待っていないよ」
「そう、よかったわ。それでね」
 モンセラさんは僕の話を聞いて笑顔で述べた。
「出た?」
「見ての通りだ」
 井上さんはモンセラさんに冷静な目で応えてだった、そうして。
 その四人用の席、如何にも外でお茶を飲む感じの白いイギリス風の椅子とテーブルを指差してそのうえで述べた。
「まだだ」
「あっ、そうなの」
「そもそも出ると言われているがだ」
「狙って出られるものじゃないのね」
「妖怪は気まぐれなものだ」
 井上さんはモンセラさんに冷静な口調で返した。
「必ず出るとは限らない」
「そういうものだからだ」
「だからだ」
「いないのね」
「待っていても出ていないしだ」
 それに、というのだ。
「待たなくても出て来たりする」
「つまり見られるかどうかは」
「運だ」
「それ次第っていうことね」
「君も吸血鬼を見たのは偶然だな」
「ええ、まあね」 
 その通りだとだ、モンセラさんも答えた。
「そこに出て来るとはね」
「思っていなかったな」
「本当にいたんだって思って少し見てね」 
「どうした、それから」
「こっちに気付かれたらって思ってね」
「隠れたか」
「そうしたわ」
 淡々とだ。モンセラさんはその時の状況を僕達に話してくれた。
「それで難を逃れられたのね」
「冷静だったのな」
「まあ厄介な時は騒ぐなってね」
 モンセラさんはにこりと笑って僕に話した。
「お祖父ちゃんに言われたから」
「だからか」
「そう、騒がずに落ち着いてね」
「隠れてだな」
「難を逃れたのよ」
「それは何よりだな」
「ええ、ただね」
 ここでだ、モンセラさんはこんなことも言った。
「やっぱり怖かったのは事実よ」
「吸血鬼をその目で見てだ」
「血を吸われて殺されるって思ったから」
 実際に、というのだ。
「怖かったわ」
「そうか、やはりな」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「この目で吸血鬼を見られて」
 そして、というのだ。 
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