八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十六話 午後の紅茶その二
「朝に話した神聖ローマ皇帝への報告だ」
「そのことからですか」
「私は妖怪も幽霊も否定しない」
「信憑性があると思われたから」
「何度も言うが軍人はああした報告では嘘は言わない」
自分の功績にはならない、ただの調査報告結果をというのだ。
「そうしたものだしだ。それに」
「それに?」
「東欧でも対処の方法が多い」
「その吸血鬼への」
「ヴァンピールもいるしな」
吸血鬼を倒す為のその人がというのだ。
「今もいると言われあまりにも生々しい」
「それで幽霊とかも」
「幽霊もいる」
井上さんはこのことについても断言した。
「確実にな」
「そうですか」
「大阪には幽霊の足跡があり、それに」
「それに?」
「私は見たのだ」
これ以上ないまでに真剣な顔でだ、井上さんは僕に言って来た。
「幽霊をな」
「何処で、ですか?」
「中学の時にな。その幽霊の足跡にだ」
何処かのお寺にあるらしい、どのお寺だったか僕は忘れた。
「そしてこの目で本物の幽霊を見た」
「あの、それでそれは何処で」
「ある踏切でだ、自殺の名所というな」
「ああ、ありますね」
何かとある、不思議踏切や無人踏切と言われている場所がだ。そういった踏切は自殺の名所と言われている。
「そこに行かれたんですか」
「家族で旅行に行った時に通ったが」
「そこにいたんですか」
「踏切の信号のところに女がいた」
「その女の人が」
「髪は短く黒かった、だが」
その女の人はというと。
「身体が透けていて青ざめた顔で立っていた」
「それはやっぱり」
「幽霊だな」
「僕もそう思います」
そうとしか思えなかった、実際に。
「幽霊ですね」
「そうだな、どう考えてもな」
「それでその幽霊を見られたんですか」
「この目でな。だから」
「幽霊も信じておられるんですか」
「仮にプラズマだとする」
何処かの教授が言う様にだ。
「私はその目で見たそれがプラズマとは思えない」
「どう考えてもそれは」
「プラズマではないな」
「プラズマは光ですから」
それでだ。
「人魂ならともかく」
「透けている人が立っているなぞな」
「プラズマじゃないですね」
「そうだ、だからだ」
「幽霊はいる、とですか」
「私は確信している、そしてだ」
井上さんは僕にさらに話した。
「吸血鬼、モンセラが見たそれもだ」
「嘘じゃないですか」
「私はモンセラは嘘を言っていないと思う」
「嘘は言わないですし。それに」
「それにだな」
「妙に信憑性がありますね」
「そうだな、夜の町を徘徊する吸血鬼達」
その彼等の話がだ。
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