八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十六話 午後の紅茶その一
第五十六話 午後の紅茶
部活が終わって夕方になってだ、僕はまた薔薇園に行った。夕方になって流石に薔薇園はかなり涼しくなっていた。
その中でだ、僕は井上さんに会った。井上さんはすぐに僕に言って来た。
「少しいいか」
「いいかっていいますと」
「どうも気配を感じるのだ」
「気配を?」
「私の気のせいかも知れないがだ」
怪訝な顔で僕に言って来た。
「何かがいるな」
「僕達以外にも」
「モンセラはまだだな」
井上さんは僕にこのことも確認してきた。
「そうだな」
「はい、もうすぐ来ると思いますけれど」
「まだなのは確かだな」
「来ていないですね」
それはその通りだとだ、僕も答えた。
「それじゃあ」
「うむ、モンセラ以外の誰かがいる」
「それってひょっとして」
「まだ日差しが強いがだ」
夕方になってもだ、そこそこあった。
「若しかするとだ」
「いるんですか」
「そうかも知れない」
こう鋭い目で僕に言って来た、周囲を探りつつ。
「既にな」
「まさか、いや」
「この噂は否定出来ないな」
「はい、僕もこの学園にいて長いですから」
僕はこう井上さんに答えた。
「どうしても」
「そうだな、この学園は不思議な場所だ」
「そうした話が物凄く多くて」
「しかもどの話も嘘とは思えない」
「というか全部本当みたいですよ」
その怪談話の全部がだ。
「実際に」
「そうだろうな、私もそう思う」
「妖怪とかの話なんて荒唐無稽ですけれど」
そう言って否定する人もいるので僕もあえてこう言った。
「ですが」
「科学が全てではない」
井上さんはく言い切った。
「妖怪や幽霊も然りだ」
「科学で否定しても」
「今の科学で、あってだ」
「これからの科学じゃわからないですね」
「それにだ」
井上さんは僕にさらに言った。
「さっきも言ったが科学は万能ではない」
「限られてますね、力は」
「科学も人が作ったものだ、人が作ったものならだ」
「万能じゃないんですね」
「人間が万能でないのに何故科学が万能か」
人が作り出したそれは、というのだ。
「そんなことは有り得ない」
「そういうことなんですね」
「私はそう考えている」
「そうですか。ただ」
「ただ。何だ」
「いえ、井上さんが妖怪とかのお話を信じていることが」
ここで僕は前から井上さんについて思っていたことを井上さんご本人に話した。その思っていることをそのまま。
「ちょっと不思議ですね」
「私が幽霊や妖怪を存在すると思っていることがか」
「はい、そのことが」
「それは何故だ」
「いえ、井上さん生真面目で現実的ですから」
そうした人だからだ、本当に。
「ですから」
「そう言うのか、しかしだ」
「それでもですか」
「私は現実主義だからだ」
「幽霊や妖怪を信じておられるんですか」
「そして吸血鬼もだ」
この妖怪もというのだ。
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