八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十五話 吸血鬼の話その十
「ドラキュラ伯爵もいて」
「狼男にフランケン」
「あとミイラ男な」
「四人で楽しそうにお茶飲んでるってな」
「血じゃなくてな」
その話を皆そのまました。
「不思議な話だよ」
「全く以てな」
「吸血鬼なのにお茶なんてな」
「狼男だって血じゃなかったか?」
「あいつは食うんだろ」
人肉をだ、人を襲って貪り喰うとされているのが西洋の狼男だ。
「それでも今はお菓子か」
「変われば変わるな」
「で、フランケンとミイラ男も飲んで食ってるけれど」
「ミイラって喰う必要ないだろ」
この突っ込みも来た、何故ならミイラ男はもう既に死んでいて亡骸から内蔵を取り出して包帯を巻いたりして防腐処理をした妖怪だからだ。
「それでお茶か」
「そういえばフランケンも喰う必要ないんだったな」
「ああ、フランケンってゴーレムだからな」
「フレッシュゴーレム」
RPGで言うとそうなる、フランケンシュタインのモンスターは実はゴーレムであり人間の身体をつなぎ合わせたものなのでこの呼び名になるというのだ。
「そうだったな」
「あの妖怪もな」
「ゴーレムだからな」
「喰う必要ないよな」
「考えてみたら」
「けれど四人でお茶飲んで菓子食ってる」
そうしているというのだ、この学園の数ある不思議の一つだ。
「そうらしいな」
「変な話だな」
「本当かどうかわからないにしても」
「あの薔薇園に出て来るってな」
「不思議だな」
こうしたことをだ、僕は話していた。
そしてだ、ここでだった。
僕は部活を続けてだ、午前中楽しんでだった。お昼御飯を食べてから半ば無意識のうちにまた薔薇園まで来た。
薔薇園はかなり暑かった日差しが普通じゃない。僕がそこに行くと。
モンセラさんも来ていてだ、僕に言って来た。
「見に来たの?」
「いや、そうじゃないけれど」
「それでも気になってなのね」
「来たんだ」
こう答えた。
「ただ何となくっていうかね」
「そうなのね」
「うん、まあいないとは思ってたよ」
「今の時間は」
「うん、日差しが強いからね」
それも半端じゃなくだ。そこにいるだけで汗が滲み出る位だ。
「吸血鬼でなくてもね」
「ここにはそうそういられないわね」
「ヨーロッパと比べると」
その夏でもだ。
「日本の日差しは強いから」
「そうよね、多分ね」
「多分?」
「日本の、この神戸の日差しはね」
「強いわね、確かに」
「それだったら人も辛いよ」
それこそ吸血鬼でなくてもだ。
「長い間いられないよ」
「帽子必要ね」
見ればモンセラさんは帽子を被っていた。阪神タイガースの昔の、白地に黒い縦縞のあの伝説の帽子だった。
「こうしてね」
「そうだね、僕もね」
「帽子被ってないとね」
それこそと言うモンセラさんだった。
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