八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十五話 吸血鬼の話その九
「それじゃあ」
「じゃあ三人で行こうね」
「この時間伯爵は出るかな」
「出ないだろう」
井上さんが僕に答えた。
「まだ」
「朝は出ないですか」
「うむ、まだな」
今度は井上さんが僕に話した。
「出ないだろう」
「朝は、ですか」
「確かに本来の伯爵は日光を浴びても死なないが」
「それでも苦手ですよね」
「このことは事実だからな」
「もう結構日差しが強いですから」
「冬ならともかくだ」
日光が弱いこの季節ならというのだ。
「有り得るかも知れないがだ」
「夏は、ですか」
「流石に辛いだろう」
吸血鬼にとっては、というのだ。
「だから出ないと思う」
「今はまだ」
「ルーマニアの日差しは知らないが」
井上さんはこうも言った。
「日本の夏の日差しは強い」
「確かにね」
モンセラさんも井上さんのその言葉に頷く。
「メキシコの日差しも強いけれどね」
「それでもだな」
「強いことは確かね」
「その強い日差しを受ければだ」
「吸血鬼はね」
「辛い筈だ」
例えそれで死ななくても、というのだ。
「やはりな」
「そうよね、じゃあ今はね」
「出ないだろう」
「夕方位に出て来るかしら」
「出て来るとしたらな」
その時にというのだ。
「そうなるだろう」
「そうなのね、じゃあ夕方もう一度ここに来てみるわね」
「そうするか」
「実際にこの学園にも吸血鬼いるかどうか確認したいから」
そのドラキュラ伯爵をというのだ。
「是非ね」
「そうなればいいな、では私はここでだ」
道場が見えたところでだ、井上さんはモンセラさんと僕に言った。
「部活に行ってくる」
「じゃあまたね」
「うむ、またな」
「義和もね」
モンセラさんは今度は僕に言って来た。
「そろそろよね」
「うん、体育館だよ」
その部活が行われるだ。
「もうすぐね」
「じゃあ義和ともそろそろね」
「お別れしてね」
「またね」
「うん、またね」
少し早いけれど僕達はこれでお別れとなった。そうしてそれぞれ離れてからだった。僕はバスケ部の部活に入った。
そしてだ、その部活をしている時にだ、僕は部活仲間に薔薇園のことを尋ねた。
「薔薇園って出るよね」
「ああ、あっちの妖怪がな」
「席に座ってお茶飲んでるんだよな」
「通称遅い午後の紅茶を楽しむハリウッドモンスター達」
「それのことだよな」
「うん、時々出るんだよね」
僕は井上さんとモンセラさんが話していたことを皆にも話した。
「そうだよね」
「見た人結構多いらしいな」
「昔からいてな」
「夕方になるとな」
「出て来てな」
「四人でお茶を飲んでてな」
「お菓子も食っててな」
何でもティーセットを楽しんでいるという、何か随分とイギリス風だと思う。その妖怪達の中にイギリスの妖怪はいない筈なのに。
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