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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十五話 吸血鬼の話その三

「ワインなの」
「そうかも知れない」
「何かイメージ違うわね。じゃあ酒呑童子というか鬼は」
「山にいる人達なりな」
「アイヌの人なり」
「当時は蝦夷と言われていたが」
「そうした人達だったのね」
 鬼の実態についてもだ、モンセラさんは井上さんに話された。それで今度は井上さんにこんなことを話した。
「なまはげは」
「秋田のか」
「あれは何なの?」
「あれも鬼だな」
「冬に暴れるのよね」
「大晦日にな」
「あれもやっぱりアイヌ人なの?」
 井上さんにお顔を向けて尋ねていた、僕の横で。
「なまはげも」
「あれは妙な伝説があってだ」
「妙な?」
「有り得ないと思うが漢の武帝が秋田まで来た時に連れていた働き者の鬼達だ」
「それがなまはげなの」
「働き者で悪さもしたが随分とその土地の人達の役に立ったらしい」
 今は秋田のそこに住んでいる人達のだ。
「それでその人達がだ」
「今はああしてなの」
「なまはげとして人々の間に残っているのだ」
「そうなのね」
「その話って」
 僕はここまで聞いて井上さんに尋ねた。
「本当にあったお話とは」
「思えないな」
「そうですよね、ちょっと」
「私もそう思う、言い伝えだが」
 それでもというのだ。
「荒唐無稽だ」
「そうですよね」
「言い伝えにしてもな」
 どうにもという口調でのやり取りだった。
「有り得ない」
「武帝はずっと中国にいましたよね」
「当時の漢にな」 
 まさにその国にだ、五十七年間君臨して統治していた。教科書では凄い人の様に言われているけれど実際はどうだろうか。
「それで日本にまで来たか」
「それは」
「有り得ない」
 こう僕にも言った。
「どうして日本まで来たのか」
「当時は船ですけれど」
「日本に行くだけで至難の業だった、まして日本まで行き来していて統治が出来るのか」
「そのことも問題ですね」
「神仙好きな皇帝だったので仙術を使ったことになっているがな」
 それでもというのだ。
「まず有り得ない」
「そうですよね」
「伝説だ、他にも説があるからな」
「そちらの方が信憑性がありますか」
「なまはげについてはな」
「ですか」
「あれ凄く怖いわよね」
 なまはげ自体についてもだ、モンセラさんは言った。
「迫力あって」
「うむ、確かにな」
「いきなり出て来たら気絶する位に」
「ああしたものは他にもいるがな」
「なまはげ以外にも?」
「鹿児島のトシドン等がいる」
「トシドン?」
 その名前を聞いてだ、モンセラさんは目を瞬かせてすぐに問い返した。
「それも鬼なの?」
「鬼ではないがだ」
「違うの」
「鬼にも似ているし鬼の一種とも言えるか」
「じゃあ鬼なの」
「そう思ってもいい、なまはげと同じく年神だ」
「神様なの?」
「とはいってもキリスト教の神とは違う」
 井上さんはこのことは断った、それもはっきりと。
「ああした絶対者ではなく日本の神だ」
「ああ、ああした」
「そうだ、大勢の中の一神だ」
「精霊みたいなものね」
「違うところもあるがそう思ってくれていい」
 井上さんは日本の神と精霊の違いについては深く踏み込まなかった。そこから先を言うと話が複雑になるからだろうか。 
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