八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十四話 夜の出来事その十二
「私の住んでいた長崎にもです」
「そうした話があるの」
「そうです、その対策も色々とあります」
「磯女っていう吸血鬼に対して」
「少なくとも夜の海はです」
「危ないっていうのね」
「あまり近寄る場所ではないです」
夜の海それ自体がというのだ、裕子さんは眉を曇らせてモンセラさんに話した。
「鮫も出ますし」
「ああ、鮫もなのね」
「鮫は夜にこそ動きます」
鮫が夜行性だからだ、映画のジョーズではお昼に動き回っていたけれど鮫は基本的に夜行性の生きものなのだ。
「それに毒を持っている魚もいるので」
「あっ、ゴンズイとかエイとか」
僕は毒を持っている魚と聞いて言った。エイはアカエイだ。
「いるからね」
「ゴンズイも危ないですがエイもです」
「エイは毒針も大きいですし」
「毒も強いので下手に触るとです」
尻尾の奥にあるその毒針にだ。
「死ぬ恐れもあります」
「そのこともあるからですね」
「あと落ちて溺れる危険もありますので」
「お昼の時以上に」
「同じ場所でも昼と夜で違う世界になります」
「それで夜は」
「暗がりのせいで見えないので」
「危ないですね」
「ですから」
それで、というのだ。
「夜の海は最初から行かない方がいいです」
「磯女がいなくても」
「そうです」
「それってひょっとして」
ここまで裕子さんの話を聞いてだ、詩織さんが話に入ってこう言った。
「磯女って夜の海に近寄るなっていう戒め?」
「それで創り出された妖怪ではというのですね」
「そうじゃないんですか?」
「いえ、それがです」
「違うんですか」
「それならただ夜の海に近寄らないだけですね」
「対策としては」
「他の対策もありまして」
その磯女という妖怪に対して、というのだ。
「船を停める時に錨だけ下ろし縄を下ろさなかったり」
「縄もですか」
「磯女は縄を伝って上ってきて船の中に入ると言われているので」
「それで船の中の人を襲うのですね」
「そうも言われていますし苔を三本寝ている布団の上に置いたり」
「苔?」
「そうです、どうも磯女が嫌うらしく」
それでというのだ。
「置きます」
「苔を三本、ですか」
「お布団の上に置いて寝る方法もあります」
「それはもう戒めじゃないですね」
「全く違いますね」
「夜の海に近寄るなとかじゃなくて」
「本当にあった方法です」
磯女から難を逃れる為にだ。
「九州で」
「じゃあいる可能性はかなり」
「高いと思われますね」
「はい、九州に行った時は注意します」
「私も吸血鬼はいると思います」
かなり真剣にだ、裕子さんは詩織さんに話した。
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