八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十四話 夜の出来事その八
「団体でフード被った人達が道を歩いているとか」
「怪しいわよね」
「若しその人達に近寄ったら」
「血を吸われてたかもね」
「うん、本当に吸血鬼なら」
こう言ったところで内心かなり怪しいと思った、そんな不気味な人達がまともな人達とは到底思えなかったからだ。
そしてだ、裕子さんもこう言って来た。
「それは怪しいです」
「裕子さんもそう思います?」
「私の知り合いにルーマニアの方がいますが」
「ああ、あの吸血鬼の」
「やはり吸血鬼に詳しいです」
ルーマニアといえば吸血鬼だ、ドラキュラ伯爵の影響が大きいだけじゃなく東欧自体に吸血鬼の話が多いからだ。
「その方に世界の吸血鬼のことをお聞きしましたが」
「メキシコの吸血鬼についても」
「そうした吸血鬼もいました」
「実際にですか」
「はい、名前は聞いていませんが」
「じゃあモンセラさんが見たのも」
「そうだと思います、本当に吸血鬼は世界中に話があります」
このことは裕子さんも言った、そして。
裕子さんは皆を見回してだ、僕にこうも言った。
「ここにおられる皆さんの国全てに」
「吸血鬼がいるんだ」
「そうです、中国のキョンシーもそうです」
水蓮さんの国のあまりにも有名な妖怪だ。
「吸血鬼です」
「あっ、そういえば」
「キョンシーも血を吸いますね」
「はい、人を襲って食べたりもしますけれど」
「吸血鬼なんですね」
「そうです、本当に吸血鬼は世界中にいます」
「アメリカでもいるヨ」
そのアメリカ人のジューンさんが言うには。
「チュパカブラネ」
「あれ吸血鬼あるか」
「そうなノ、メキシコにも出るって聞いてるけれド」
さっきお国の名前が出た水蓮さんにも話す。
「あれも吸血鬼ヨ」
「人の血を吸うあるか」
「モスマンなんてのもいたシ」
「アメリカも吸血鬼多いあるな」
「そうよネ」
「何でもです」
また裕子さんが話してくれた。
「吸血鬼はルーマニアでは実在すると思っている方が多いそうです」
「ドラキュラ伯爵?」
モンセラさんは裕子さんにこの名前を出した。
「あの人のせいで?」
「いえ、実際にあの辺りでは吸血鬼事件の報告があり」
「事件の」
「神聖ローマ帝国領土内で起こったそうです」
「それ本当のお話なの」
「軍の士官達、そして皇帝のサインが報告書にあるとのことです」
「皇帝って」
つまり国家元首だ、そのサインまであるならだった。モンセラさんも。
「まずね」
「事実ですね」
「そう思っていいわね」
「はい、そして二十世紀後半にもです」
「吸血鬼いたの」
「事件を起こして逃亡中の吸血鬼がいたとか」
「ルーマニアに?」
モンセラさんは半ば身を乗り出して裕子さんに問うた。
「やっぱり」
「何でもハンガリーに逃げたとか」
「ああ、お隣の」
ハンガリーはルーマニアの隣国だ、そこに逃げたというのだ。
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