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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十四話 夜の出来事その七

「吸血鬼とか」
「吸血鬼?」
「そう、夜にとなるとね」
「吸血鬼っていうんだ」
「違うかしら」
「まさか。それに」
 僕は吸血鬼と聞いてだ、正直意外に思った。それでモンセラさんに怪訝な顔になってこう尋ね返した。
「メキシコにもいるの?吸血鬼」
「いるよ」
 あっさりとだ、モンセラさんは僕に答えた。
「吸血鬼でしょ。いるわよ」
「そうなんだ」
「というか吸血鬼って世界中にいるでしょ」
「そうなんだ」
「日本にもいるじゃない」
「いや、日本にはいないよ」
「いるわよ」
 僕にまたはっきりと返してきた。
「吸血鬼なら」
「いたかな」
「ほら、ろくろ首とかね」
「ろくろ首?」
「首が飛ぶろくろ首とかね」
「ああ、飛頭蛮だね」
 首が飛ぶろくろ首と聞いてだ、僕は小泉八雲の小説を思い出した。あの人が書いた作品の中に出ていた妖怪の一つだ。
「あれだね」
「あれ人の血を吸うし。他にもいるわよ」
「日本にもいたんだ、そういえば僕も前言ってたかな」
 ついつい蝙蝠に変身するドラキュラ伯爵みたいなのだけを想像してしまっていた、それでこう言ってしまった。
「日本に」
「そうでしょ、だからね」
「首が飛んで?」
「私達はそれ見たんじゃないかしら」
「だとすれば怖いね」80
 まさかと思いながらだ、僕は答えた。
「首だとすると」
「人のね」
「まあそれはないと思うけれど」
「そうでしょうね、幾ら何でもね」
「吸血鬼が近くにいるとか」
「そうそうないわよ」 
 モンセラさんも笑って言う。
「飛頭蛮だったかしら。そんな妖怪ね」
「滅多にいないね」
「そう思うわ、けれどね」
「けれど?」
「多分吸血鬼はいるわよ」
 モンセラさんは存在自体は否定しなかった、吸血鬼のそれを。
「見たから、私も」
「何処で?」
「メキシコでね。道を団体で通ってたのよ」
「それ見たんだ」
「真夜中お家の二階の窓からね」
「それ只の行列じゃなくて」
「いやいや、真夜中よ」
 普通人の出歩かない時間にというのだ。
「道をぞろぞろフード被って歩いてたのよ」
「それは確かにおかしいけれど」
「それお祖父ちゃんに教えてもらった吸血鬼だったけれど」
「モンセラさんも見たんだ」
「それで私いるって思ってるのよ」
 吸血鬼をというのだ。
「見たから」
「それ本当に吸血鬼だったのかな」
「確証はないけれど」
 それでもというのだ。
「如何にもって感じだったから」
「確かに怪しいね」
「そうでしょ」
「真夜中に。コンビニがあっても」
 それでもだ。 
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