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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十四話 夜の出来事その六

「殴られる痛みを知るだけでもです」
「暴力を振るう人はそれを知らないんですね」
「殴られたら身体だけでなく心も傷つきます」
「実際にPTSDとかありますしね」
「そうです、トラウマにもなります」
「親父はそのことだけでも」
 僕も言った。
「ずっといいですか」
「私の思うところですが」
「わかりました、それで何か日本に来るって言ってます」
「帰国ですね」
「一時みたいですけれど」
「それで神戸には来られますか」
「来るなって言っておきました」
 僕は小野さんにこのことも話した。
「正直に」
「そういえば言っておられましたね」
「またトラブル起こすので」
 というかトラブルを引き連れて来る、親父の場合は。
「ですから」
「お断りされましたか」
「はい、そう」
「では来られないのですね」
「そう思います」
「ではお父様の為のご馳走は宜しいですね」
「ああ、別に来ても」
 その場合にしてもとだ、僕は小野さんに答えた。
「いいです、まあインスタントラーメン位で」
「それで、ですか」
「はい、適当に作らせてやって下さい」
「私が作りますが」
「いやいや、いいです」
 それともとだ、僕は笑って返した。
「とても」
「そうですか」
「どうせ自分で好きに食材を選んで自分で作りますから」
「そういえばお料理お得意でしたね」
「特にイタリア料理が」 
 それと和食だ、海の幸を使ったものが大好きでイタリア料理にしても和食にしてもとかくシーフードをよく出して来る。
「得意なんで」
「私が作ることも」
「いいです、というか来たら放ったらかしでいいです」
 無視しないまでもだ。
「そういうことで」
「ううむ、では」
「まあ来るかどうかわからないですから」
 本音はもちろん来て欲しくない、偽らざる気持ちだ。
「気まぐれですしね、親父」
「まあ来られた時は」
「それでお願いします」
 僕はあっさりと話してだ、そしてだった。
 小野さんにお休みの挨拶をしてその場を後にしてだった。そうして歯を磨いて自分の部屋に入って寝た、もっと言えば寝ようと思った。
 けれど不意にだ、部屋の窓の方を見ると。
 何かが飛んだ様に見えた、それでだった。
 気になってベッドから出て窓のところに来て見るとだ、そこには。
 誰もいなかった、それで気のせいと思って今度こそ寝た。
 その次の日の朝だ、食堂に来た僕にだ。
 モンセラさんがだ、僕に言って来た。
「昨日の夜何か見た?」
「窓の方に?」
「うん、見た?」
「寝る前に何か窓のところを通ったかな」
 このことを思い出しながらモンセラさんに答えた。
「そういえば」
「あっ、やっぱりそうなの」
「まさかモンセラさんも」
「何か見たの。ひょっとして」
 モンセラさんは少し怖い顔になってこう言った。 
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