八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十三話 抹茶のよさその八
「白だとな」
「白トランクスならともかくな」
「白ブリーフはな」
「ださいだろ」
「まあね、白ブリーフはね」
僕もだ、白ブリーフというと無意識のうちに顔を曇らせて言った。
「あまりね」
「もう誰もはいてないだろ」
「あんなの最近小学生でもはいてないぜ」
「やっぱりトランクスかボクサーだろ」
「色は白でもな」
「というか白の下着はな」
それ自体がというのだ。
「汚れが目立つんだよな」
「そうそう、洗っても残ってて」
「だからちょっとな」
「下着は白もな」
男組の間ではこう言うのだった。
「駄目だな」
「抵抗あるな」
「下着は柄だろ」
「濃い色じゃないとな」
「そういえば僕も」
他ならぬ僕自身もだ、下着は。
「濃い色とか柄ばかりだね」
「だろ?大家だってな」
「トランクスもボクサーも大抵そんな色だしな」
「白は汚れが出るから」
「あまりないんだよ」
僕達の下着にしてもというのだ。
「そもそもな」
「制服だってそうだろ、結局」
「制服はいつも着るからな」
「白いとな」
汚れが目立って仕方ないからだ、結局そうした話になった。僕達はそうした話をしながら練習をしてだった。
シャワーを浴びてから帰途についた、ここで。
不意にだ、空が曇っていてだった。
上を見上げるとだ、もう雲がどんよりとしていた。それで僕は皆に言った。
「まずいね」
「ああ、寄り道しないでな」
「早く帰った方がいいな」
「さもないと降るぜ」
「この天気だとな」
「ああ、そうしような」
こう言ってだ、そしてだった。
僕達は急いで家に帰った、僕が八条荘の中に入ったその瞬間にだ。
雨がぽつぽつときてだ、それから。
土砂降りになった、その土砂降りを見て中に入ると畑中さんが出て来て僕に言って来た。
「ぎりぎりでしたね」
「はい、本当に」
僕も危ういところだったとだ、畑中さんに答えた。
「あと少し遅かったら」
「雨に遭っていましたね」
「夕立です」
畑中さんは僕にこうも言った。
「丁渡その時間でした」
「天気予報では何も言ってませんでしたけれど」
「そうでしたね、しかし」
「夕立は、ですね」
「こうしたものです」
「天気予報に出なくても」
「降ります」
こうはっきりとだ、僕に答えてくれた。
「ゲリラ豪雨ともいいますが」
「それですね」
「はい、天気予報に出ずとも」
「降る雨もありますね」
「そうです、天気予報がいつも当たるとは限りません」
「全くですね」
「予報は予報です、確かに役に立ちますが」
それでもとだ、僕に言うのだった。
「予報に出ないことも起こります」
「そういうことでね。皆は」
「はい、皆さんもうお戻りです」
畑中さんは僕に確かな声で答えてくれた。
「ですから」
「安心していいですね」
「どなたも雨には遭っていません」
「使用人の人達も」
「今は誰もここにいます」
この八条荘にというのだ。
ページ上へ戻る