八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十二話 暑い夏だからその九
「構わないです」
「要は茶道を楽しめばいいのね」
「道は苦行ではありません」
「茶道のそれは?」
「あらゆる道はです」
茶道に限らずというのだ。
「苦行ではありません」
「そうなのですね」
「よく武道で生徒に苦行の様に何かと課す人がいますが」
「いるね、正座でもね」
僕はここでまたこの話を出した。
「朝も言ったけれど」
「その正座させて体育館の使い方聞かせた先生?」
「自分は立ってね」
「その先生馬鹿よね」
テレサさんはその先生のことを一言で言って捨てた。
「足痺れてじゃ話が耳に入らないでしょ」
「早く話が終わってくれって思うだけでね」
「それでしかも自分は立ってるって」
「どうしようもないよね」
「そんな奴に物事が教えられると思えないわ」
「それはどうしてかな」
「だって物事がわかってないじゃない」
だからだというのだ。
「世の中のね」
「その物事がなんだ」
「お話はそんな状態で聞いても耳に入らないし」
それにとだ、テレサさんは僕に小夜子さんがお茶を淹れるのを見ながら話した。
「しかも自分は立ってたのよね」
「そうらしいよ」
「人に何かをさせるには自分もしないと」
「その先生生徒が試合で負けて全員丸坊主にさせたけれど自分はしなかったこともあったよ」
僕はテレサさんにこの話もした。
「それで次の日丸坊主にしてきた生徒が少ないって怒って剣道では中学生には禁じられている突きも浴びせたりして女の子泣かしたりしたんだ」
「もうそれ問題外でしょ」
「けれどそうしたことしたんだ」
「それヤクザじゃないわよね」
「学校の先生だよ、公立のね」
「公立ってことは公務員よね」
「そうだよ」
僕はテレサさんに即答した。
「そうなるよ」
「公務員、しかも学校の先生でそうなの」
「フィリピンじゃそういう人いないんだ」
「いる訳ないわよ、おかしい人は多くても」
それでもというのだ。
「そんなヤクザ学校の先生やってないわよ」
「それが普通だよね」
「日本がおかしいのよ、自分は正座も丸坊主もしないって」
生徒には強要してもだ。
「もう無茶苦茶じゃない」
「だから首になったらしいけれどね」
「というか最初から採用する方がおかしいわよ」
「それでもそうした先生もいたんだ」
「ある意味凄いわね」
「そうしたこともあったんだよ」
これが本当にあったことだから怖い、本当に日本の教育はこうした先生が現場を担っていると思うだけで背筋が寒くなる。
「実際にね」
「まあそんな人に正座しろって言われたら」
「怒る?」
「その場から立ち去るわ」
「そうするんだ」
「だってそんな人から教わることないから」
何一つとして、とだ。テレサさんは言葉の中にこの言葉も淹れていた。
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