八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十二話 暑い夏だからその八
「もう中にいるわよ」
「それで用意をしてくれてるんだ」
「そうよ」
「メールの返事で言ってきてたんだ」
「そうなの、それでわかったけれど」
それでというのだ。
「もう小夜子スタンバっているわよ」
「そうなんだ、じゃあね」
「中に入りましょう」
「うん、じゃあね」
「それとね」
「それと?」
「いえ、お抹茶もいいわよね」
中に入ろうとする時にだ、テレサさんは僕に微笑んでこうも言った。僕もテレサさんも今から入るところだった。
「夏にね」
「熱いのも?」
「だから私朝から言ってるでしょ」
「暑い時に熱いものを飲むのもいい」
「かえって涼しくなるから」
「それでなんだね」
「それもいいから」
だからというのだ。
「今から入ってね」
「小夜子さんに淹れてもらうんだね」
「そうよ。それと羊羹もね」
「僕そっちの方が楽しみだよ」
「義和本当に羊羹好きなのね」
「うん、ういろうも好きだけれど」
そうした少し硬いというか独特の食感のある系統のお菓子自体がだ。
「羊羹も好きだからね」
「それで楽しみなのね」
「そうなんだ、じゃあ入ろう」
「ええ、それじゃあね」
こう二人で話してだった。
僕達は茶室に入った、その趣のあるお庭も見ながら。
中に入るとだ、そこにだった。
もう小夜子さんがいた、今は夏服だったけれど涼しげな微笑みを浮かべてそのうえで入って来た僕達に挨拶をしてくれた。
「ようこそ」
「うん、じゃあ」
「これからよね」
「今からお淹れします」
お茶をというのだ。
「羊羹も用意してますので」
「栗羊羹だよね」
「はい」
僕に笑顔で答えてくれた。
「そちらです」
「それじゃあね」
「今からですね」
「うん、お茶頼むよ」
「今から淹れさせてもらいます」
もう茶器の用意は出来ている、お茶の葉もある。後はだった。
お茶を淹れるだけだ、それで僕とテレサさんはそれぞれ用意されていた座布団の上に座った。僕は正座だったけれど。
テレサさんは女の子座りだ、その座り方で僕に言って来た。
「この座り方クラスで教えてもらったのよ」
「テレサさんのクラスで」
「そうなの、これならね」
「大丈夫なんだね」
「前に教えてもらってその時は何も思わなかったけれど」
それでも今は、という口調での言葉だった。
「今役に立ってるわ」
「それは何よりだね」
「私正座は出来ないから」
このことはどうしてもとだ、テレサさんは僕に話した。
「だからこの座り方は有り難いわ」
「はい、正座でなくともです」
小夜子さんも言って来た。
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