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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第五十二話 暑い夏だからその七

「熱いお茶も飲むから」
「ああ、茶道の」
「それも飲むんだな」
「この暑い時に熱いお茶か」
「それはな」
「小夜子さんが言うにはそれもいいらしいから」
 このことをだ、僕は強く話した。
「僕は茶道部の部室に行くんだよ」
「別に疚しいことはない」
「そう言うんだな」
「そうだよ、本当にただお茶を飲むだけだから」
 自分でもわかる位に今の僕は必死だった、自分でもどうしてここまで必死になるのかわからなかったけれどとにかくそうなっていた。
 そのうえでだ、僕は皆にこうも言った。
「飲んだらすぐに戻るから」
「お茶を飲んでか」
「それで羊羹も食って」
「すぐに帰って来る」
「そうするんだな」
「そうだよ、午後の部活までにはね」
 それこそとも言った。
「戻るからね」
「何だよ、面白くないな」
「そこで女の子二人と、とはならないんだな」
「真面目なんだな」
「だから僕は僕で」
 またこうしたことを言った。
「親父は親父だから」
「違うってか」
「女の子とそこまで遊んだりはしない」
「そういうことか」
「そうだよ、というか親父はまた特別だから」
 特別というか桁外れというか常識がないというか度が過ぎているというかとにかく破天荒な親父だからだ。
「あんなこと出来ないから」
「息子でもか」
「そうした遺伝子は受け継いでないか」
「俺達結構憧れてんだけれどな、御前の親父さんに」
「ある意味凄いからな」
「あんな親父憧れたら駄目だよ」
 僕は口を尖らせてこうも言った。
「とんでもない親父だから」
「そのとんでもなさがいいんだよ」
「滅茶苦茶さがな」
「そこでそう言うんだな、息子は」
「駄目だって」
「そうだよ、息子だから言うんだよ」
 口を尖らせて言っているのが自分でもわかった。
「あんな親父は参考にしたら駄目だよ」
「真面目か」
「真面目であるべきなのね」
「そうだよ、人間は真面目でないとね」
 僕は強く言った。
「あんな遊び人じゃなくて」
「そこで派手に遊ぶべきとか言わないか」
「それこそ絶対に」
「僕は言わないよ」
 間違いなくと話してだった、僕は話を終えてだった。
 茶室に向かった、何とか誤解は解けたのかなとか思いながら。そうして茶道部の部室である茶室の前に来たところで。
 そこにいたテレサさんにだ、こう言われた。
「今来たところ?」
「そうだよ」
 僕はテレサさんにすぐに答えた。
「遅かったかな」
「遅くないんじゃない?私も今来たところよ」
「あっ、そうなんだ」
「部活のお昼休みにね」
「同じだね、そこは」
「さっき小夜子にメールしたけれど」
 テレサさんは茶室の方を見ながら僕に話した。 
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