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真似と開閉と世界旅行

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大切なもの〜

 
前書き
一話一話が長い・・・かといって切ると話数が多くなりそう・・・あと、最近バイオ6だのエクシリア2だののプレイするゲームの大体に鬱エンドが存在してて困る。・・・それでは! 

 
・・・夢を見た。あれは俺が八歳位のころ・・・


『すぐはー、危ないからいいよ・・・』

『だめ!あたしが怪我させたんだもん。えっ、と・・・ここかな・・・』

妹が転び、それを庇ったら膝を怪我してしまった。妹は自分が消毒すると言って家にある棚の上にある筈の救急箱を、椅子に登って探していた。

『あっ、あった!・・・んぅ・・・!』

妹は色々な荷物が置かれている中から救急箱を引っ張り出そうとしている。

『危ないよ!俺はへいきだから・・・』

『やだ。あたし、りょうが痛そうにしてるのやだもん』

『すぐは・・・』

だが、妹が力を籠めて引っ張った時、すこしつっかかってから救急箱が抜けた。

『きゃ・・・』

『すぐは!』

当然勢い余って妹は体制を崩し、椅子から落ちそうになる。・・・しかも、支えを失った荷物もそのまま落下してくる。

『あぶない!』

妹を庇うように飛び込み・・・


ガタタタン!!









『・・・いたた・・・りょう、大丈・・・っ!?』

妹が息を呑む。何故なら・・・

『ああああ!!目・・・目が・・・!うああああ!!』

耐え難い痛み。俺は右目を押さえながら叫ぶ。

『りょ、りょう!?ねぇ、りょう!だいじょうぶ!?りょう・・・!』

妹が必死に呼び掛けてくるが・・・

『いたい・・・!!目がいたいよぉ!!うああああ!!』


『スグ!どうし・・・りょう!?』

声からして多分兄だと思われる。

『りょうが・・・りょうがぁ・・・』

『ま、まってろ!すぐ母さんをよんでくるから!』



『りょう・・・りょう・・・!』

妹が泣きながら呼ぶ。・・・呼ぶ・・・


















「・・・さん、コウハさん、朝ですよー」

「へあ・・・?」

目を開くと目の前には妹・・・ではなくシリカがいた。

「あ・・・ああ、ごめん。随分気持ち良さそうに寝てたから、つい起こせなくて・・・変なことはしてないから安心してよ」

「ふふ、コウハさんはそんなことをする人じゃないですよ。・・・でもごめんなさい。ベッド占領しちゃって・・・」

「あはは、平気平気。ここじゃ寝違えも筋肉痛もないし」

とは言うものの癖で首を捻ったり体を曲げたりする。

「あ・・・言い忘れてた・・・おはよう、シリカ」

「あ、おはようございます」


俺達は朝食を取り、転移門まで移動する。

「あ・・・あたし、四十七層の街の名前、知らないや・・・」

それを聞いて俺はシリカに手を伸ばす。

「大丈夫。俺が指定するから」

シリカはゆっくりと俺の手を握る。

「転移!フローリア!」

一瞬、体の感覚が消え、視界がぶれる。・・・次の瞬間には転移は完了した。

「うわあ・・・!」

シリカが歓声を上げる。何故なら、四十七層の広場は無数の花々で溢れかえっていたから。

「ここは通称《フラワーガーデン》って呼ばれてるんだ。街だけじゃなくてフロアまで花だらけ・・・今度時間があったら色々案内するよ」

・・・本当はここら辺りをホームタウンにしたかったが・・・物価はそこそこ・・・しかし部屋が空いてなかったのだ。
「はい。また今度のお楽しみにします」

ふと気付いた。俺はまたシリカに会う気でいることに。・・・本当はこの件が終わったら会うつもりはなかったのに・・・

「・・・なんでだろう」


考えていると、花を見ていたシリカが近付いてきた。

「さ・・・さあ、フィールドに行きましょう!」


「あ、ああ」

シリカは勢いよく歩き出す。・・・俺は苦笑しながら着いていく。シリカと足並みを合わせて歩くと、シリカが聞いてきた。

「あの・・・コウハさん、すぐは・・・って誰ですか?」

「え・・・!?な、なんで・・・」

「す、すみません。その・・・寝言を聞いてしまって・・・気になっちゃって。コウハさんの恋人・・・ですか?」

一応、アインクラッドでは現実世界の話を持ち込むのはタブーだ。色々理由はあれど、一番はこの世界も現実だという事実を認められなくなる為・・・ただ、シリカが悪意を持って聞いたのではない位、簡単に分かったので答える。

「ううん、妹だよ」

「妹・・・もしかして、あたしに似ている知り合いって・・・」

「ああ・・・確かに妹にも似ているよ。・・・ただ、仲は良くなかったけど」

「・・・」

「俺ん家、祖父が厳しくてね。俺と兄貴、そして妹は俺と兄貴が八歳の時にほぼ強制的に剣道場に通わされたんだよ。・・・俺や妹は剣道にハマったよ。俺は自分が強くなって、相手を倒して家族に褒められるのが嬉しかったんだ。・・・けど」


「けど・・・?」

「剣道始めて一年半くらいの時だったかな。妹を庇って右目をやっちゃってね。リアルじゃ右目が殆ど見えないんだ」

「・・・!」

「薬品が目に入ったか何かの荷物が目を潰したか・・・今となってはどうでもいいこと。・・・だけど、たがが九歳の子供が距離感を乱されて対応できる筈がない。俺は右目の視力を失ったことで一度も試合に勝てなくなった」

眼鏡やコンタクトを使っても大した改善にはならなかった。

「だけど俺が悲しかったのは勝てなくなったことじゃなくて、勝てなくなった俺を見て苦しむ妹だった。これ以上妹が苦しむのを見かねて、俺は剣道に馴染めないで辞めたがってた兄貴と一緒に剣道を辞めるって祖父に言ったんだ。・・・兄貴は即効殴られたけど、俺は理由を聞かれた。・・・俺はただ、勝てないから辞めると言ったんだ。・・・直後にグーが飛んでさ、ぶっ飛ばされた。・・・今考えれば爺さんは俺が嘘をついたのを見抜いたのかもしれないな」


俺は溜め息を吐く。

「妹は大泣きして、お兄ちゃん達の分頑張るから殴らないで・・・って爺さんにずっと言ってた。・・・俺は妹を傷つけたくないと思ってやった行動が更に妹を苦しめているなんて想像もしたくなかった。・・・それから、俺は妹を避け出した。妹も今までは名前を呼んでくれたけど、今じゃよそよそしく“お兄さん”って呼ぶようになった。きっと妹は・・・直葉は俺を怨んでると思う。本当は直葉だってやりたい事があるんじゃないかって、俺のせいで剣道を辞められなくなったんじゃないかって・・・本当はこのゲームの話を持ち掛けて、時間をかけてでもまた昔みたいに戻したいと思ってたんだ。けど・・・」

「このゲームが始まった・・・」

「ああ。・・・はぁ・・・俺はもしかしたら、シリカを直葉に見立ててるのかもしれない。罪滅ぼしのつもりで助けてるのかもしれないね・・・ごめんな」


シリカは首を振ってから言った。

「・・・妹さん、コウハさんを恨んでいなかったと思います。何でも好きじゃないのに頑張れることなんかありませんよ。きっと」

「・・・はは、慰められてばっかだね。ありがとう、シリカ。・・・後で兄貴にも言ってあげてくれる?兄貴も妹と色々あって・・・」

「・・・はい!」


そうこうしてる内にフィールドの手前まで来た。

「・・・いよいよ開始だけど・・・」

「はい」

俺はコートの内側にあるポーチの中から水色の結晶・・・転移結晶を取り出す。

「その装備とレベルなら平気だと思うけど、何が起こるか解らない。だから、俺が逃げろって言ったらすぐにこの転移結晶でどこかに跳んで。いい?」

「で、でも・・・」

「これだけは譲れない。・・・俺は一度パーティーを・・・ギルドを壊滅させてしまった事があるんだ。・・・もう二度と誰かが死ぬのを見たくない」

シリカはゆっくりと頷く。・・・それを見て俺は笑顔を作る。

「よし、行こう!」

「はい!」


頼もしい返事。きっとこれなら問題はないと思った。ーーーこの時までは。





































ーーーー数分後。

「ぎゃ、ぎゃああああ!?なにこれーーー!?き、気持ちワルーーー!!」

シリカが悲鳴を上げる。フィールドを出て初のモンスターだが・・・

「や、やあああ!!こないでーーー!」

ようは歩く花のモンスターだが・・・まあ、少々、いやかなり女性には受け入れられない姿をしていた。口あるし触手生えてるし。

「やだってば!」

シリカが半ば錯乱しながら短剣を振り回す。

「お、落ち着いて。そいつはかなり弱いから、あの花の下にある白っぽい部分を狙えば・・・」

「だ、だって、気持ち悪いんですうううーーー!」

「いや・・・このあと見た目的によろしくない奴は沢山いるよ?ラフレシアっぽいのが大量についた奴とか食虫植物とかもっと触手がうねうねしてる奴とか・・・」

「キエーーーー!!」

シリカが悲鳴(ほぼ奇声)を発しながらソードスキルを発動するが、見事に絡まり・・・触手に捕らえられて・・・

「わ!?」

逆さまに持ち上げられる。

「わわわ!?」

重力に従い落ちるスカートを抑え、触手を切ろうとするが体制が悪いので上手く切れない。・・・あー、ズボン型の装備渡しておけばよかったなー・・・

「こっ、コウハさん助けて!見てないで助けて!!」


まあ、そうだよね。俺は懐から手裏剣を取り出す。

「合図するよ!イチにの・・・サン!」

シリカを避けるように飛んだ手裏剣が触手を切り裂く。シリカは上手く体制を整え・・・落下しながらソードスキルをモンスターに叩き込み、爆散させた。

「・・・見ました?」

シリカがスカートの裾を抑えながら聞いてくる。

「大丈夫、見えてないよ」

というか見えたとして、だからなんだと言う話だ。

「(呉は色々目に毒だったからなあ・・・)」

慣れてしまったので気にしなかったが、あれって普通に逮捕物ではなかろうか。裾短いわ露出高いわそもそも本人達(主に雪蓮と穏)が見せつけて来るわ・・・

「コウハさん?どうしたんですか?」

「まともな服装っていいよね」

「は?」

「・・・何でもない」

その後もしばらく戦闘を重ねていく。・・・事あるごとにシリカは精神的ダメージを負ったが、とりあえず無事だ。小さな橋を渡り、しばらくすれば目的地が見えてきた。

「あれが思い出の丘だよ」

「見たとこ、分かれ道はないみたいですね」

「だけどモンスターの量が多い。・・・もう一踏ん張りしようか」

「はい!」

目に見えてシリカのテンションが上がっているのが分かる。・・・とりあえずモンスターを片付けながら丘を上り・・・

「うわあ・・・!」

頂上にある花畑を見てシリカは歓声を上げる。

「到着・・・だね」

「ここに・・・その、花が・・・?」

「ああ。真ん中辺りの岩に・・・」

シリカは俺が言葉を言い切る前に走り出す。


「ない・・・ないよ、コウハさん!」

岩の上や周りを見ていたシリカが泣きそうな声で叫ぶ。

「そんなはず・・・あ、いや、見なよ」

「あ・・・」


ゆっくりと岩の上から芽が伸びてきた。どうやらプレイヤーを判別してから咲くので、ラグが発生していたのだろう。やがてそれは綺麗な花が咲かせた。

「これで・・・ピナを生き返らせられるんですね・・・」

シリカが花をそっと掴みながら言う。

「うん。心アイテムに花の雫を振りかければいいんだよ。ただ、モンスターが多いから帰ってからにしようか」

「はい!」

今までで一番の笑顔を浮かべながらシリカは歩き出す。

「・・・」


このまま済めば良かったが・・・そうは行かないようだ。

「~~~♪」

橋に差し掛かった辺りで俺はシリカを引き留める。シリカは振り返り、固まる。

「・・・そこで待ち伏せてるの、出てこい」

「え・・・!?」

索敵に引っかかった反応にそう告げると、やがて・・・昨日の女が現れた。その手には細い十字槍を持っている。

「ろ・・・ロザリアさん・・・!?なんでこんなところに・・・!?」

女・・・ロザリアは俺を見て唇の片側を吊り上げて笑った。

「アタシのハイディングを見破るなんて、中々高い索敵スキルね、剣士サン。侮ってたかしら?」

ロザリアはシリカに視線を移す。

「その様子だと、首尾よくプネウマの花をゲットできたみたいね。おめでと、シリカちゃん」

ロザリアはやっぱりと言うべきか・・・呆れる言葉を出してきた。

「じゃ、さっそくその花を渡してちょうだい」

「・・・!?な・・・なにを言ってるの・・・」

俺はシリカを後ろに押しやり、口を開く。

「そうは行かないんだよね。ロザリアさん・・・いや、犯罪者(オレンジ)ギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん?」


ロザリアの顔から笑みが消えた。・・・どうやら魚は完全に釣れたみたいだ。

「え・・・でも・・・だって・・・ロザリアさんは、グリーン・・・」

シリカが疑問を口にするが・・・俺は答える。

「別にオレンジギルドと言っても全員がオレンジじゃない場合が多いんだよ。グリーンが獲物を見つけ、パーティーに紛れ込んでギルドメンバーが待ち伏せしている場所に誘導する・・・宿で盗み聞きしてたのも仲間だろうな」

「そ・・・そんな・・・じゃ、じゃあ、この二週間、一緒のパーティーにいたのは・・・」

ロザリアは再び人を苛立たせる笑みを浮かべる。

「そうよォ。あのパーティーの戦力を評価すんのと同時に、冒険でたっぷりお金が貯まって、美味しくなるのを待ってたの。本当なら今日にもヤッちゃう予定だったんだけどー」

シリカを見ながら舌で唇を舐める。

「一番楽しみな獲物だったあんたが抜けちゃうから、どうしようかと思ってたら、なんかレアアイテム取りに行くって言うじゃない。プネウマの花って今が旬だから、とってもいい相場なのよね。やっぱり情報収集は大事よねぇ」


そこでロザリアは俺に視線を向ける。

「でもそこの剣士サン、そこまで解っていながらノコノコその子に付き合うなんて、馬鹿?それとも本当に体でたらしこまれちゃったの?」

シリカが怒りで爆発しそうなのを横から感じ、シリカの肩を掴んで落ち着かせる。

「別にそうじゃないさ・・・」

俺はスイッチを入れる。ここからは・・・遊びは抜きだ。

「俺もアンタを探してたんだよ、ロザリア」

「・・・どういうことかしら?」

「・・・十日前、三十八層で《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったよな。リーダーだけが脱出に成功し、他のメンバーは・・・」

「・・・ああ、あの貧乏な連中ね」

「そのリーダーはな、毎日ずっと朝から晩まで最前線のゲート広場で泣きながら仇討ちをしてくれる奴を探してたんだ」
俺はその場が凍り付くような声を発する。

「でもな。そいつは俺に向かって、お前らを殺せと言わなかった。黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、そう言ったんだ。ーーーーーその人の気持ちが分かるか?」

「解んないわよ」

面倒臭そうにロザリアは答える。

「何よ、マジんなっちゃって、馬鹿みたいな。ここで人を殺したって、ホントにその人が死ぬ証拠ないし。そんなんで、現実に戻った時罪になるわけないわよ。だいたい戻れるかどうかも解んないのにさ、正義とか法律とか、笑っちゃうわよね。アタシそういう奴が一番嫌い。この世界に妙な理屈持ち込む奴がね」

「奇遇だなぁ。俺もアンタみたいなタイプの人間はーーーーー」

俺はかなりの殺気を宿しながら口にする。

「ーーー殺したいほど嫌いだぜ」


「ふん・・・で、その死に損ないの言うこと真に受けて、アタシらを探してた訳だ。ヒマな人だねー。ま、あんたの撒いた餌にまんまと釣られちゃったのは認めるけど・・・でもさぁ、たった二人でどうにかなるとでも思ってんの・・・?」

ロザリアが合図を出し、それで次々と木立から人が出てくる。・・・十人くらいか。

「こ、コウハさん・・・人数が多すぎます、脱出しないと・・・!」

俺はシリカの頭をポンポンと叩き、もう一歩前に出る。

「大丈夫さ。俺が逃げろと言うまでは見てればいいよ」

更にもう一歩。シリカが叫ぶ。

「コウハさん・・・!」


その言葉が聞こえたのか、賊の一人が眉を潜めた。

「コウハ・・・?」

そして目を見開く。

「深紅のコート・・・身の丈を越える太刀、鈍く光る手甲・・・そして鈴がくくりつけられた曲刀・・・こいつ、まさか“鈴の音”・・・!?」
「・・・」

この装備だ。やたら目立つし噂になるに決まってる。シリカにも一度聞かれたが、ただ見映えをよくしたいだけと誤魔化していた。

「や、やばいよロザリアさん。こいつ・・・こ、攻略組だ・・・」

その場にいた全員に緊張が走るのが分かる。

「こ、攻略組がこんなとこをウロウロしてるわけないじゃない!どうせ、名前を騙ってびびらせようってコスプレ野郎に決まってる。それに・・・もし本当に“鈴の音”だとしてもこの人数でかかればたった一人くらい余裕だわよ!!」

その言葉に賊の一人が叫ぶ。

「そ、そうだ!攻略組なら、すげえ金とかアイテムとか持ってんぜ!オイシイ獲物じゃねえかよ!!」

それを皮切りに全員が抜刀する。

「コウハさん・・・無理だよ、逃げようよ!!」

俺はそのまままっすぐ歩み続けるま。

「オラアアア!!」

「死ねやアアア!!」

半円形に取り囲んでくる賊の連続攻撃。

「いやあああ!!」

シリカの絶叫が聞こえるが・・・


ヒュン!

フォン!

・・・だが、誰の一撃も当たらない。全ての攻撃を避ける。

「は、はえぇ・・・」

「なんで当たらないんだよ・・・!」


「遅いな。手加減してるのか?」

俺は首を回して・・・笑う。

「仕方ねぇな。ほれ、全員一発当ててきな」


俺は両手を広げ、もう一度笑う。

「な、舐めんなぁぁぁぁ!!」

全員のソードスキルを炸裂し、再びシリカが悲鳴を上げるが・・・

「・・・残念だったな」

俺のHPは全く変わっていなかった。いや、少し削れたが・・・すぐに全回復する。


「アンタらの総攻撃の威力よりも、俺の戦闘時回復(バトルヒーリング)スキルの回復量の方が多いみたいだな」

戦闘時回復スキルは十秒ごとに一定のHPを回復するスキルで・・・習得する方法は簡単。・・・HPを危険域に落としまくればいい。


「・・・一回は一回・・・だよな」

俺は擬音を構え・・・ソードスキル無しで横一文字に薙ぎ払う。



ズバァァン!!

「ぎゃあああ!?」


全てのオレンジプレイヤーのHPが一撃で危険域に突入する。

「・・・悪い悪い。半分くらいに止めるつもりが・・・」

俺は手前の一人に擬音を突き付ける。・・・俺にとっては心地の良い鈴の音も、コイツらには死神の呼び声に聞こえるだろう。

「・・・危うく殺しちまうとこだったよ」


ちなみに既にオレンジのプレイヤーを攻撃してもこちらがオレンジになることはない。

「まあ・・・一人くらい殺しても、うっかりで済むよな」

俺は本気だ。これ以上抵抗するのなら・・・容赦はしない。

「ひ・・・ヒィィィィィ!?!?」


次々に悲鳴を上げて賊が逃げようとするが・・・

「・・・逃がすかよ」


跳躍し、賊の目の前に着地する。

「逃がすと思ったか?」

「あ・・・あぁぁ・・・」


その時、背後にいたロザリアが転移結晶を取り出したのが見えた。

「転移ーーー」

クナイを投げようとしたが・・・それよりも早く、ロザリアが持つ転移結晶を弾き飛ばした奴が現れた。

「逃げられたらどうするんだ?コウハ」

「いやあ。来ると思ってたよ、キリト」

「キリト・・・!?・・・く・・・《黒の剣士》まで・・・!」

キリトはロザリアの襟首を掴んで引き摺ってくる。

「は・・・離せよ!!どうする気だよ畜生!!」

俺はストレージから転移結晶よりずっと濃い青色の結晶を取り出す。

「これは依頼してきた人が全財産をはたいて買った回廊結晶だ」

回廊結晶とは予め設定した場所に転移できる物だ。・・・ただ、転移結晶の何倍も高い。

「これで牢屋(ジェイル)に飛べ。そうすりゃ軍の連中が面倒見てくれるさ」

ロザリアはいくらなんでも殺しはしないのだろうと思ったのか、笑みを浮かべる。

「もし、嫌だと言ったら?」

「「全員殺す」」

・・・こう言う時は兄弟の意思は合いやすいものだ。・・・ただ、キリトは溜め息を吐き、短剣を取り出す。


「と、言いたいとこだけどな・・・仕方ない、その場合はこれを使うさ」

「麻痺毒か」

「ああ。食らえば十分は動けないぞ。全員放り込むのに、そんだけあれば充分だ。自分の足で入るか、投げ込まれるか、どっちでも好きな方を選べ」

「斬り殺されるって選択肢もあるけど?」

「コウハ」

「はいはい・・・」


結晶を使用すると、目の前に青い光の渦が出現する。

「畜生・・・」

一人が諦めて入ると、他の面々は次々に渦に飛び込み・・・残るはロザリア一人になる。

「・・・やりたきゃ、やってみなよ。グリーンのアタシに傷をつけたら、今度はあんたがオレンジに・・・」

俺はそれを全部聞く前に襟首を掴み・・・喚くロザリアを無視して渦に放り込んだ。

「・・・」

そして辺りが沈黙し、俺はシリカから・・・目を逸らした。代わりにキリトが口を開く。

「ええと・・・シリカさん、かな?」

「あ・・・し、シリカで構いません。えっと・・・コウハさんのお兄さん・・・ですよね?」

「ああ、俺はキリトだーーーー」

キリトが説明しようとするが、俺はキリトを止める。

「・・・自分から話すよ」

「・・・いいのか?」

俺は頷き、口にする。

「・・・ごめん。俺達の目的はさっき言った通りで、結果的にシリカを利用したようなものだよね・・・言おうとは思ったけど、もう会わないと思ったから言えなかったんだ。・・・本当にごめん」

シリカは首を横に振る。・・・俺は再びシリカから目を逸らす。

「・・・とりあえず、街まで送るよ」

「あ、あの・・・」

シリカに呼ばれ、振り返ると・・・

「あ・・・足が、動かないんです」

「・・・はは」

思わず笑い、俺は手を差し出す。シリカは俺の手を掴み・・・少しだけ笑った。
「さあ、行こう」

帰り道、俺とシリカは殆ど無言だった。代わりにキリトがシリカと話し、キリトはシリカに慰められたことを笑った。・・・そして宿屋に戻ってきて・・・

「コウハさん・・・行っちゃうんですか・・・?」

俺はゆっくりと頷く。

「・・・かなり長い間前線から離れたからね・・・すぐに戻らないと」

「・・・そう、ですよね・・・」

シリカが俯く。

「・・・あ・・・あたし・・・」

・・・シリカが何を言いたいかは何となく分かった。・・・だけど、それを聞くわけにはいかない。

「シリカ、レベルの差なんてこの世界だけの話さ。・・・あのさ、シリカが教えてくれたチーズケーキ、美味しかったよ。・・・だから、今度は俺がお菓子をご馳走するよ、リアルで。だから・・・また会おうな?」

「はい。きっと・・・きっと」


更にシリカは少し確認するように言う。

「あの・・・コウハさんは初日に人助けをしていたって言ってましたよね・・・?」

「え?・・・うん」
「・・・それって、混乱した人達を宿屋に避難させたこと・・・ですか?」

「・・・!?なんでそれを・・・あっ」

そこまで言われて気付いた。シリカが知ってる理由なんて・・・


「あたし、あの時混乱してて・・・ずっと泣いてて・・・その時でした。あたしをあの人混みから・・・ある人が助け出してくれたんです。その人は言いました。『必ずこの世界から解放される。俺も頑張るから・・・君も死なないように、生き延びるんだ』・・・って」


「シリカ・・・君はあの時の・・・」

「あたし、ずっと助けてくれた人にお礼を言いたかった。あのままあそこにいたらどうなっていたか・・・想像したくもありません」

シリカは俺の目を見つめる。

「・・・ありがとうございました。あたしを・・・助けてくれて・・・」




・・・シリカは俺を慕ってくれている。ここまで来てそう思った。・・・こんな子がいてくれるなら・・・信じてくれる人がいるなら、まだ俺は頑張れる。

「さ、ピナを呼び戻そうか」

「はい!」

シリカは少々慌てながら花と羽根を取り出す。

「じゃあ、雫を羽根に振り掛けて」

「はい・・・」

雫を受けた羽根は輝きだし、やがてーーーーーー
































































・・・宿屋から出ると、キリトが待っていた。

「お疲れ様、亮」

「そっちもね、兄貴」

「・・・彼女、素直な子だったな」

「あんな子もいるんだよ。・・・このデスゲームには」

「・・・必ずクリアしないとな」

「・・・うん。・・・さ、帰ろう!亞莎も・・・サチも、待ってる」

「・・・ああ」


俺は何となくフレンドリストを見る。エギル・・・キリト・・・クライン・・・サキ・・・サチ・・・そして・・・シリカ。

「・・・」

段々と増えていくフレンドリストを見る度に、気が引き締められるのが分かる。・・・せめて、これ以上誰かが消えるのは見たくない・・・そんなこと・・・二度と・・・俺はその考えを振り払い、キリトを追い抜くように走り出す。

「競争スタート!負けたら晩飯奢りね!」

「な!?いきなりずるいぞ、亮!」

夕方で静まる街中に、兄弟の笑い声が響いた・・・ 
 

 
後書き

「シリカ編終了!」


「早ぁっ!?」


「いやまあ・・・色々とねぇ・・・」


「シリカでこれじゃ・・・アイツはどうなるんだ・・・」


「あはは・・・」


「とりあえず、次は俺が主役だ!お楽しみに!」


「出番なしかー」

 
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