八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十二話 暑い夏だからその五
「そこにね」
「茶道部ってお茶かよ」
「お茶飲みに行くのかよ」
「今から」
「そうするんだな」
「うん、アパートに茶道部の人がいてね」
つまり小夜子さんのことだ。
「その人に誘われてね」
「おいおい、大家のアパートって皆女の子だろ」
「女の子からのお誘いかよ」
「御前最近そんな話ばかりだな」
「それで今日もか」
「そうなんだ、今日もね」
まさにとだ、僕はバスケ部の皆に答えた。
「誘われてるんだ、ただね」
「ただ?」
「ただって何だよ」
「別にやましいことはないから」
このことははっきりと断った。
「別にね」
「茶室で密会とかか」
「そんな話なしか」
「そうなんだな」
「そうだよ、二人だけで会うんじゃないし」
僕は皆にこのことも話した。
「お茶を飲むだけだよ」
「いや、茶道ってな」
同じバスケ部でしかも同級生の一人である日傘君がこんなことを言って来た。
「普通に妖しいものなんだよ」
「そうした話あるの?」
「お茶を回し飲みとかあるだろ」
「そんなことするんだ」
「するんだよ、男同士で回し飲みとかな」
「へえ、そんなことするんだ」
正直僕も知らなかった、この話は。
「それははじめて聞いたよ」
「実際にするんだよ、これだって男同士の」
「そういうこと?」
「それに近いんだよ、安土桃山時代からしてるけれどな」
この茶道のお茶の回し飲みをというのだ。
「武士の間で広まったことだけれどその頃って武士の人はな」
「あっ、同性愛もね」
「普通だったからな」
「そのことは僕も知ってるよ」
織田信長公にしても森蘭丸という物凄い美形のそうした相手の人がいた、このことは僕も聞いていて知っている。
「その話はね」
「それでだよ」
「ううん、そうしたことでなんだ」
「そうだよ、茶道だってな」
「そうした話fがあるんだ」
「そうだよ、それに茶道部の茶室ってな」
日傘君はこの部屋自体の話もした。
「普通に二人だけになったりするだろ」
「時と場合によっては」
「それでなんだよ」
「妖しいっていうんだ」
「二人だけじゃないんだな、本当に」
「そうだよ、本当に」
実際にだとだ、僕は答えた。
「というか嘘なんか言ってないよ」
「まあ御前そうしたことはな」
日傘君もこう僕に言って来た。
「嘘言わないな」
「そうだよ、嘘なんか言ってないよ」
「じゃあ本当にか」
「同じアパートの娘も入れて三人だよ」
「おい、両手に花か」
僕の言葉を聞いてだ、日傘君は今度は顔を顰めさせてこう返した。
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