八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第五十二話 暑い夏だからその四
「中国の食べものよネ、羊羹」
「そうだと思うあるが、元々は」
「じゃあ水蓮は知ってる?」
「いや、だから思うと言ったある」
これが水蓮さんの返事だった。
「詳しいことは私も知らないある」
「羊羹のこと自体モ」
「そうある、どういったお料理あるか」
水蓮さんも知らないというのだった。
「不思議な名前あるな」
「羊羹は実際に中国のお料理です」
ここで答えてくれたのはシェフの小野さんだった。
「中国の北魏かその辺りに羊のあつものを作ったのですが」
「あつものですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「あつものは羹と書きます」
「羊の羹、つまり」
「羊羹です」
「そういうことですか」
「それがお肉や骨の中でゼラチン質で固まれば」
「確かに羊羹みたいになりますね」
所謂煮凝りだ、僕も好きだ。
「それですか」
「それがはじまりなのです」
「だから羊羹なんですね」
「そうです」
こう僕達に説明してくれた。
「それが羊羹の由来なのです」
「羊が小豆になって」
「ああしたものになったのです」
「お菓子に変わったと」
「そうなのです」
「そういえば羊羹ってお家でも作られましたね」
僕はふとこのことも思い出した。
「そうでしたよね」
「はい、作ろうと思えば」
「そうでしたね」
「私の知り合いに凄い方がおられて」
「菓子職人の方ですか」
「和菓子の。その方の羊羹は凄いです」
このことも僕達に話してくれた。
「作られる中で特に羊羹が」
「美味しいんですね」
「絶品です」
まさにという口調での返事だった。
「今度こちらにも持って来ますので」
「それでその羊羹をですね」
「皆さんで召し上がられて下さい」
「わかりました」
僕は管理人として小野さんに答えた。
「ではその時は」
「はい、その様に」
「お願いします」
「では今度こちらに持って来ます」
「おやつに」
「左様です」
これはこれで楽しみなことだった、やっぱり羊羹は大好きだ。そしてその大好きな羊羹をというのである。
昼に茶道部の部室で頂くことになった、僕は小夜子さんテレサさんとそのことを約束してだった。この日は部活に出てだった。
午前中汗を流してからだ、お昼休みの時に。
体育館の脇で部活の皆と一緒にお弁当を食べてからだ、その皆に言った。
「午後の部活までには戻って来るよ」
「あれっ、どうしたんだ?」
「何処か行くのか?」
「うん、茶道部の部室に行って来るよ」
もっと言えば学園の中の茶室にだ。
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