八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十六話 勝利祈願その一
第四十六話 勝利祈願
僕はニキータさんと二人で夏の朝の神社に来た、八条神社に。
その神社に入るとだ、丁渡入ったところにだった。
円香さんがいた、白いブラウスと赤のミニスカート、素足に白いソックスと黒い靴といった格好だった。その円香さんが。
僕達とばったり会ってだ、すぐにこう言って来た。
「あの、どうしてこちらね」
「いや、高校野球のね」
「勝利祈願にですか」
「来たんだけれど」
「そうですのね、実はわたくしも」
いつものお嬢様の口調でだ、円香さんは僕に話してくれた。
「こちらに勝利祈願で来ました」
「そうだったんだ、じゃあ野球で」
「はい、そうです」
その通りだとだ、円香さんは微笑んで僕に答えてくれた。
「我が八条学園、そして」
「そして?」
「阪神タイガースの。もうすぐ夏ですから」
「そうだったね、夏はね」
「我等が阪神は成績が落ちますので」
円香さんはこのことを念頭に置いてだ、僕に話してくれた。
「二つのことをお願いに参りました」
「そうだったんだね」
「あれっ、阪神今一位じゃない」
円香さんと話をする僕の横でだ、ニキータさんはその僕達の話を聞いて何でという顔になって聞いてきた。
「それもダントツの。それで勝利祈願?」
「実は阪神はいつも夏に弱くなるのです」
「そうなの?」
「はい、夏に疲れが出まして」
「暑いからよね。それは何処も同じでしょ」
「それが違いますの」
円香さんは困った顔でニキータさんに答えた。
「阪神の場合は」
「どう違うの?具体的には」
「甲子園、本拠地が使えなくなりまして」
「あっ、そうね」
甲子園のことを聞いてだ、ニキータさんもすぐにわかった。
それでだ、そのはっとなった顔で円香さんにこう返した。
「甲子園は高校野球で使うから」
「八月の殆どは本拠地を離れないといけません」
「敵地を遠征しながらの戦いね」
「それで疲れてしまって後に響きもします」
「ううん、それで阪神にとって夏は怖いのね」
「鬼門ですの。地獄のロードとも呼ばれていますわ」
「大変ね」
「確かに去年は日本一になれました」
ダントツの一位で優勝してクライマックスも三連勝した、そして日本シリーズでも勝って有終の美を飾った。しかしなのだ。
「ですが阪神に絶対はありませんの」
「そう思っていてころっとね」
「はい、負けてしまいますから」
「円香もお祈りに来てるのね」
「そうなのです」
「それとうちの高校の野球部のことで」
「甲子園出場を、ですわ」
思うことは同じだった、僕も円香さんも。
「お願いする為にですね」
「この神社に来たのね」
「実はわたくしの実家は。神社ですけれど」
奈良のだ、円香さんはこのことからもニキータさんに話した。
「安産祈願でして」
「あっ、赤ちゃんがね」
「無事に産まれることを祈る神様を祭っていますの」
「じゃあ勝利祈願は」
「その神様はおられないですわ」
ニキータさんにいつもの口調で話していた。
「わたくしの実家には」
「そうなのね」
「ですから勝利祈願は別の社でしていますの」
「その辺りの事情もわかったわ」
「神様はそれぞれ司るものが違いますの」
「美和の言った通りね」
僕の方にも顔を向けてだ、ニキータさんは微笑んで言った。
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