八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十五話 高校野球その十三
「もう寝た方がいいよ。お風呂は朝にでもね」
「じゃあね」
「うん、また明日ね」
「まあお風呂飲む前に入ったしね」
ニキータさんは自分で自分に言い聞かせる様にして言った。
「これでいいわね、じゃあね」
「明日朝速く起きてだよね」
「お風呂入るわ」
「それがいいよ、飲んですぐに入るのはよくないから」
僕はとにかくだ、ニキータさんにこのことを強く言ってだった。
ニキータさんを彼女の部屋まで送った、それから。
そのまま寝た、そして朝起きると。
丁渡お風呂から出てすっきりとなっている上下共に白のジャージ姿のニキータさんにだ、笑顔でこう言われた。
「新聞届いてるよ」
「何かあったの?」
僕はニキータさんに尋ね返した。ちなみに八条荘の新聞は八条新聞だ。全国紙で英語訳の新聞も出している。
「それで」
「うん、高校野球でね」
昨日話したことについてだった。
「うちの高校勝ったよ」
「あっ、そうなんだ」
「いけるかもね、甲子園」
「行って欲しいね、是非」
僕はニキータさんに心からこう返した。
「もう準決勝だったかな」
「準々決勝よ」
「それに勝ったんだ」
「それで今日が準決勝って書いてあるよ」
「そうなんだね、じゃあね」
「準決勝と決勝、あと二つね」
「そう、その二つに勝ったらね」
それでだった、二つだけと言うべきか二つもと言うべきかはその人それぞれだろうけれど。
「甲子園よね」
「あそこに行くよ」
「そうよね、お願いするわ」
しみじみとした口調でだ、また言ったニキータさんだった。
「神様にね」
「キリスト教の神様に」
「そう、僕カトリックだし」
「あっ、そうだったんだ」
「ブラジルというか中南米の人は大抵そうよ」
カトリックだというのだ。
「皆ね」
「そういえばそうだね」
「そうよ、だからね」
「キリスト教の神様にだね」
「お願いするから」
「じゃあ僕も神社に行こうかな」
我が校の甲子園出場、まさにそのことをだ。
「こちらの神様にお願いしにね」
「そうするのね」
「八条神社には神様が多くて」
大きな神社でだ、祭られている神様も多いのだ。あの神社は。
「勝利祈願というかね」
「戦争に勝つ?」
「そうした神様もいるから」
「何か日本って色々な神様がいるね」
「うん、八百万の神様っていうけれど」
実際にはだ、僕が思うところだけれど。
「八百万以上いるね」
「そんなに多いの」
「何しろありとあらゆるものに神様が宿ってるし」
それにだ。
「人も神様になるから」
「聖人みたいに?」
「ああ、キリスト教は聖人がいたね」
「凄くいいことをした人とか立派な人がなるのよ」
このことは僕も学園のカトリックの教会にいる神父さんから聞いた、よく神主さんやお坊さん達と一緒にお酒を飲んでいることでも有名な人だ。
「けれど日本ではなの」
「うん、神様になるんだ」
「そういえば太閤神社とかって」
「上杉謙信さんもね」
「あの人お坊さんよね」
「それでも神社で神様として祭られているんだ」
何しろ神道のご本家と言っていい皇室の方々、帝までもが仏教に帰依されていてだ、しかも出家して法皇になられている。そうした歴史があるからだ。
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