八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十五話 高校野球その十二
「何しろ下半身に人格がないとか言われてる位だから」
「じゃあ美和も」
「親父は親父、僕は僕だから」
このことをだ、僕は断った。それも強く。
「また違うよ」
「積極的じゃないの」
「興味がないと言えば嘘になるよ」
僕も男だ、ない筈がない。けれど親父みたいに何処をどうやったらそんな人生が歩めるのかと思う位にはだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「そこまでいかないから」
親父の域にはだ。
「あの親父は特別じゃない。ブラジルにもそういないと思うよ」
「そういえば聞いた限りだと」
「そうだよね、あの親父は別格なんだ」
そうした道についてはだ、外科医の腕もそうらしいけれど。
「だから一緒にしないでね。親子でも」
「美和は美和だね」
「そうだよ。そもそもね」
「そもそも?」
「ニキータさんちょっと今日おかしいよ」
あまりにも話があからさまだからだ、僕もここで言った。
「そんな話して。どうしたの?」
「おかしい?」
「おかしいよ。そういえば」
僕はここで気付いた、ニキータさんの息の匂いから。
お酒の匂いだ、しかもその匂いは。
「焼酎飲んだ?」
「瓶で二本ね」
「それだよ、今わかったよ」
酔っていたのだ、ニキータさんのお肌の色でお顔が赤くなっているかどうかがわからなかったのだ。残念なことに。
「焼酎を二本も飲んだんだ」
「いや、鹿児島のね」
「鹿児島は焼酎が名産だから」
「ついつい美味しくて」
飲んでいて、というのだ。
「それで二本開けたよ、ダオと一緒にね」
「ダオさんと飲んだんだ」
「ダオも二本開けて寝てるよ」
「それ酔い潰れてるから」
焼酎は強い、それだけ飲んだらそうなるのも当然だ。
「それでダオさん自分のお部屋で寝てるの」
「そうしてるよ、けれど僕は平気だよ」
「平気じゃないよ、それだけ飲んでたら」
それこそとだ、僕はニキータさんに言った。
「もう休んだ方がいいよ」
「僕平気だよ」
「平気じゃないよ、どう見ても飲み過ぎだよ」
そんな話もするからだ、下着とかの。ニキータさんは確かに明るい人だけれどそうした話はしない人だからだ。
「だからもう寝た方がいいよ」
「そうかな」
「そうだよ」
僕はこの言葉は強く言った。
「もうね」
「そうなの」
「僕ももう寝るし」
実際にそのつもりだ、この夜は。
「そろそろね」
「そうなの、じゃあ」
「ニキータさんも寝た方がいいよ」
「じゃあもう一回お風呂に入って」
「いや、もう入ってるよね」
「何か入りたくなったから」
「もう入らない方がいいから」
酔ってるからだ、お酒がかなり入っている状態で飲むと危ないからだ。
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