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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十四話 型その十一

「あの方がいてくれたら」
「今の状況も」
「間違いなくだ」
「打ってくれましたね」
「そうなっている、実に口惜しい」
 井上さんは歯噛みしてこうも言った。
「ダイナマイト打線は常にはない」
「滅多にないものですか?」
「実はそうだと思う」
 阪神というチームの代名詞ではあってもだ。
「実際阪神は打たないことも伝統だ」
「バッターも有名な人多かったですけれどね」
「ミスタータイガース藤村富美男からだな」
「はい、その方もバース様も」
「田渕さん、掛布さん、岡田さんにな」
「吉田義男さんも」
「あの方は三振が少なかった」
 守備と走塁で有名な人だったけれどとにかく三振が少なかった。素晴らしいアベレージヒッターでもあった。
「それに兄貴だ」
「金本さんですね」
「あの方もおられた」
「けれど何か」
「打線はだ」
「弱いですよね」
「基本な」
 井上さんは苦々しく言った。
「いつもそうだ」
「不思議なことに」
「嫌な伝統だ、丁渡今だ」
 井上さんはフォアボールでランナーが出たけれどそれでも喜んでいなかった。八回表ノーアウトランナーなしだ。
「チャンスと言えるがだ」
「このチャンスにこそですね」
「打たない」
「次の人は三振でしょうか」
「三振ならまだいい」
 それならましだというのだ。
「ここで最悪なのはだ」
「ゴロを打って」
「併殺打だ」
 そうなることがというのだ。
「最悪だ」
「それでその最悪の事態になることが」
「阪神には多い」
「」そうですよね、こうした時にこそですよね」
「しくじる」
 打つそのことをだ。
「それも最悪の形でな」
「その通りですね」
「さて、打って欲しいが」
「どうでしょうか」
「せめて三振してくれ」
 井上さんはかなりネガティブに言った。
「そうであればまだ救われる」
「そうですよね、三振はアウト一つですから」
 留美さんも言う。
「まだましです」
「併殺打は最悪だ」
「ランナーまで殺して」
「ここはな」
「せめて三振ですね」
「バントもだ」
 この場合の最も安全な采配もだ。
「阪神だ」
「はい、失敗する可能性がありますね」
「バントも難しい」
 一見何でもない技でも技術が必要だ、バントが下手な選手はそれだけで使い方が限られるのも野球だ。 
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