八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十四話 型その七
「動きがだ」
「少し固いか」
「そうだ」
その通りだというのだ。
「後は慣れることだ」
「それが大事ですか」
「慣れればだ」
「それで、ですね」
「変わる」
そうだというのだ。
「よくなる」
「じゃあ型も数多くしていくと」
「慣れてだ」
「動きも普通になりますね」
「その通りだ、毎日少しでもいいからやっていけばだ」
慣れてというのだ。
「よくなるからな」
「わかりました、型もですね」
「練習だ」
それに尽きるというのだ。
「そうしてくれるな」
「わかりました、それじゃあ」
留美さんは井上さんの言葉に頷いた、それで僕にも言った。
「自分でやっていきますので」
「頑張ってね」
「はい、そうします」
「型も相手がいることが一番いいが」
それでもというのだ。
「一人でも出来る」
「そうですね」
「ただしな」
「ただ?」
「私も出来る限りはだ、時間があればだ」
その時はというのだ。
「相手をさせてもらう」
「お願い出来ますか」
「喜んでな」
「すいません、先輩」
「礼は及ばない、私自身の型の鍛錬になる」
そうだというのだ。
「だからいいのだ、喜んでだ」
「お相手してくれますか」
「そうさせてもらう、では宜しくな」
「お願いします」
井上さんの面倒見のよさもあらためてわかった、そしてだった。
僕はこのやり取りを見てからだった、部活に戻った。バスケ部の方に。途中野球部のグラウンドを見てから部活で皆にふと尋ねた。
「今年阪神どうかな」
「今一位だからな」
「今年も優勝したいな」
「目指せ十連覇」
「巨人なんかの記録超えたいな」
「そうだよね、やっぱりね」
僕もこう皆に言う。
「去年も優勝出来たし」
「だったら今年もな」
「今ダントツの一位だし」
「このまま胴上げやってクライマックスも勝って」
「シリーズも勝って」
「日本一」
「そうなりたいよな」
皆かなり切実に話した、そして。
僕もだ、かなり切実に言った。
「阪神はずっと日本一になってなかったから」
「あの昭和六十年以降な」
「去年までそうだったからな」
「ロッテとの二〇〇五年のシリーズとかな」
「悪夢だったな」
「俺今も夢に見るぜ」
こんなことを言う人もいた。
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