八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十四話 型その四
「あまりしない方がいい」
「どうしてですか?」
「木刀で突いたり斬ったりという動作を実際にして若し強く当たればだ」
その木刀がというのだ。
「下手をすれば命にも関わる」
「だからですか」
「木刀、竹刀もだが止めておくべきだ」
「竹刀もですか」
「どちらも突きどころ、当たりどころによれば命に関わる」
それで、とだ。井上さんは千歳さんに真面目に話した。、
「止めておくべきだ」
「そうですか」
「寸止めにはするな」
「はい、それは」
「しかしそれでも止めておくべきだ」
「じゃあどうすれば」
「防具を着けていれば竹刀ならいいが」
しかしという口調だった。
「いいものがある」
「いいもの?」
「模造刀だが」
「模造刀って」
「本来は鉄だが」
その模造刀はというのだ。
「それはビニールになっている、刀身がな」
「おもちゃであるみたいなのですね」
「それがいいのだが」
「殺陣なら先生が教えてくれます」
「むっ、そうなのか」
「はい、顧問の先生が殺陣もご存知で」
こう井上さんに話すのだった。
「刀のそうしたことも
「そうなのか、ではだ」
「大丈夫でしょうか」
「その先生は何という先生か」
井上さんは千歳さんにさらに問うた。
「どなたか」
「はい、高辻先生です」
「高辻?高辻勇先生か」
「あっ、ご存知ですか」
「うむ、スタントマンとして有名だった方だな」
「はい、特撮とか刑事ものにも多く出られていて」
「その方なら私も知っている」
井上さんは千歳さんに強い声で答えた。
「スタントマンとして凄いだけでなく指導にも定評がある、この学園に来られているとはな」
「体育科の先生でしかも」
「演劇部の顧問でもあられるか」
「はい、特撮研究会の顧問でもあられて」
「わかった、では木刀でも大丈夫だ」
「私達も強く振らなくて」
この辺りは高校の演劇部だとだ、僕は聞いていて思った。流石に高校生の演劇で本格的な殺陣まではしない。
「リハーサルや本番でも」
「それならいい」
「それじゃあ」
「木刀、軽いものを持って行くといい」
「軽いものですか」
「わざと軽く振りやすいものもある」
そうした木刀もというのだ。
「それを持って行くのだ」
「わかりました」
「ではな、何なら木刀は私が選ぶ」
井上さんは千歳さんにこうも申し出た。
「そうしていいか」
「軽い木刀をですか」
「そうだ、剣の心得がなくとも振れるものをな」
殺陣のそれの時にというのだ。
「選ぼう」
「じゃあお願いします」
「それではな」
井上さんは千歳さんを道場の倉庫の方に案内して何本かの木刀を渡していた、それが終わって木刀達を受け取ってからだ。
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