八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十四話 型その三
「そんなことお話してました」
「あの娘実際に神社の娘さんだから」
「よく巫女さんにもなっているらしいから」
その実家ではだ。
「おトイレはいつも袴を脱いでからとのことです」
「面倒なことだね」
「そうですから」
「だから普段から袴は」
「遠慮します、というか」
「あまり着たくはない」
「そう思っています」
僕にこう話してくれた。
「やっぱり普段は」
「洋服がいいね」
「一番好きなのはズボンです」
「ズボンが好きなんだ」
「夏は膝までの半ズボンです」
それが一番好きだというのだ。
「冬は長いズボンで」
「そういえば千歳さんの私服ってズボン多いね」
「動きやすいですし、それに」
「それに?」
「冬は暖かいですから。下にストッキングやスパッツも穿けますし」
「実用的な面から言ってもなんだ」
「ズボンが好きです」
僕に少し真剣な顔で話してくれた。
「スカートよりも、ただ学校ではスカートです」
「制服がそうだからね」
「スカートも嫌いじゃないですけれど」
それでもという口調と表情だった。
「やっぱり一番はズボンです」
「動きやすくて重ね着もしやすくて」
「スカートでも下にストッキングとか穿けますけれどどうしても下から風が入ってズボンより寒いんですよ」
「ひょっとして千歳さんって冷え性?」
「はい、そうです」
その通りだとだ、千歳さんは僕に答えた。
「実は」
「そうなんだ、冷え性だから」
「はい、ズボンが好きです」
僕に真面目な顔で話してくれた。
「冬はいつも穿いていたいです」
「そこまで好きなんだね」
「そうです、じゃあ今から」
ここで僕達は道場の入口に来た、そしてだった。
会話を中断というかきりのいいところで終わってだった、それで。
僕達はまずは玄関に入って靴を収めてからだった、道場の中に入った。道場の床と壁の下のところ木造りで。
人の太腿の真ん中辺りの高さから壁は白くなっていた、天井は和風のもので。
掛け軸や神棚もある立派な広い道場だった、中に人はいなかった。だが。
僕達が道場に入って一礼するとだ、すぐに声が来た。
「よく来てくれた、早いな」
「あっ、井上さんですか」
「そうだ」
この声と共に井上さんが僕達の前に出て来た、髪型はいつもと変わらないけれど着ている服は上下共白の剣道着だった。汗をかいた跡が顔にあり髪の毛も少し乱れが残っている。
その井上さんがだ、僕達の前に来てだった。千歳さんも見て言った。
「君も来ていたのか」
「はい」
そうだとだ、千歳さんは井上さんに答えた。
「私は部活で木刀をお借りしたくて」
「立ち回りにでも使うか」
「はい、稽古で」
「わかった、木刀ならだ」
井上さんは千歳さんにすぐに答えた。
「何本でも持って行け」
「有り難うございます、それじゃあ」
「うむ、しかしだ」
「しかし?」
「木刀での立ち回りはだ」
このことについてだ、井上さんは千歳さんに話した。
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