八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十四話 型その二
「動きにくいね」
「どうしてもそうですね」
「うん、袴でもね」
「普段着ている服と違いますから」
「どうしても、そう思いますと」
もう僕達は道場に向けて歩きはじめていた、その中でだ。
千歳さんは僕の横でだ、こんなことを言った。
「剣道部や居合部の人って凄いですね」
「袴穿いて動き回るから」
「私も何度か袴穿いてますけれど」
「演劇部の部活で」
「はい、どうしても動きにくいです」
「それを動けるから」
「凄いです」
こうしみじみとして言うのだった。
「私にはとても」
「そうだね、僕もね」
バスケをしていることからだ、僕も言った。
「着物の上はともかくね」
「袴は、ですよね」
「幅が広いし丈も長いし」
「ロングスカートみたいですよね」
「分かれていてもね」
「それでもあれだけ広くて長いと」
千歳さんもだ、このことを問題にしていた。
「とても」
「動きにくくて」
「困ります」
こう僕に言うのだった、目の前の剣道部と居合部の道場つまり僕達が実際に目指している場所を見ながら。
「あんなの本当に」
「慣れなのかな」
「慣れたらですか」
「うん、袴を穿いていてもね」
「動けるんですか」
「そうなのかな」
僕は首を少し傾げさせて言った。
「やっぱり」
「そういうものですか」
「そうも思うけれどね」
「じゃあ私も」
千歳さんはここで自分の足を見た、見れば僕の足よりもずっと小さくて細い。
「慣れたら」
「動ける様になるかな」
「あまり想像出来ないですけれど」
「穿いてみる?よかったら」
僕はここで千歳さんに提案してみた。
「普段もね」
「袴をですか」
「どうかな」
「ううん、遠慮します」
千歳さんは眉を顰めさせて僕に答えた。
「それは」
「止めておくんだ」
「だって私服で袴ですよね」
「そうなるよ」
「動くだけでも大変で。それに」
「それに?」
「おトイレ大変ですよね」
このこともだ、千歳さんは言ってきた。
「袴は」
「そうそう、完全に脱いでからね」
「それからですから」
「だからなんだ」
「おトイレは楽な方がいいです」
かなり切実にだ、千歳さんは僕に言った。
「そんないつも完全に脱ぐとか」
「面倒だよね、確かに」
「はい、巫女さんのアルバイトの場合も」
「あっ、そういえば」
僕はここで巫女さんも袴であることについて思った。
「そうだね」
「はい、おトイレの場合は」
「いつも脱いで」
「そうしないと駄目だから」
「大変だね」
「はい、円香ちゃんも」
ここで千歳さんは彼女の名前を出した。
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