八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十四話 型その一
第四十四話 型
その日のお昼にだ、僕は。
剣道部の道場に向かおうとした、うちの学園には道場も幾つかあって剣道部はそのうちの一つを使っている。
その道場に向かう時にだ、途中で。
千歳さんに会った、千歳さんはこう僕に言って来た。
「これから何処に行くんですか?」
「いや、剣道部の部室にね」
「沙耶香さんと留美さんの」
「ああ、留美さんもいたね」
千歳さんに言われて留美さんのことも思い出した。
「剣道部には」
「そうですよ」
「いや、井上さんに気を取られて」
「沙耶香さんにですか」
「うん、実はあの人に呼ばれたんだ」
僕は千歳さんにこう答えた。
「お昼に剣道部の道場まで来てくれって」
「そうだったんですか」
「うん、だから今から剣道部の道場まで行くんだ」
「そうですか、実は私も」
「千歳さんも?」
「私も今から剣道部の道場に行くんです」
千歳さんは僕にこう言って来た。
「実は」
「千歳さんはどうして」
「はい、実は演劇部今度は幕末ものするんですけれど」
「幕末もの?」
「新選組するんです、それで立ち回りに木刀を使うので」
「だからなんだ」
「剣道部の道場でお借りしようと」
それで、というのだ。
「あちらにお伺いします。あとあの道場は居合部も使ってますね」
「うん、一緒に使ってるよ」
「そうですよね、若し剣道部で木刀が足りなかったら」
「居合部からもなんだ」
「借りてくれって言われました」
「演劇部の人に」
「顧問の先生に」
千歳さんは僕に素直に、それも包み隠さず話してくれた。
「言われまして」
「それで今から」
「道場に行きます」
「わかったよ、新選組ね」
「幕末の志士も出ます」
「それで千歳さんは」
「私の役ですか?」
千歳さんは僕が何について聞きたいのか察して答えてくれた。
「そのことですか」
「うん、出るのかな」
「出ます、志士の方で」
「新選組じゃなくて」
「はい、とはいっても志士の方でも志士の恋人役で」
「ええと、坂本龍馬の奥さんとか」
「武市半平太さんの奥さん役です」
その役で出るというのだ。
「そう決まりまして」
「ふうん、女の子だから」
「新選組や志士は皆男の人です」
「元々男だしね」
「そうなりました」
「それで今は練習中で」
「着ている服もまだ」
ここで千歳さんは自分の今の服のことも話してくれた、上下共に学校の指定する体操服の一つ上下共にマリンブルーのジャージだった。
「ジャージです」
「ジャージが動きやすいから」
「うちも練習の時はいつもこうです」
「衣装は本番の時だけだね」
「普段は着ないです」
普通の部活の時はというのだ。
「リハーサルの時からです」
「そうなんだね」
「はい、今回は着物なので」
「着物か、着物だと」
着物と聞いてだ、僕はここでこう言った。
ページ上へ戻る