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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十三話 朝のランニングその十

「やはり交際、結婚したらだ」
「その時はですよね」
「一人に尽くす、遊びも程々で借金をする程時間を無駄に潰す程でもなく」
「お酒もですね」
「それもだ」
 そちらもというのだ。
「私もかなり飲むが」
「慎むべきですね」
「そう思うからな、とはいっても毎日深酒をしているが」
 実際に井上さんは酒豪だ、とはいっても何か幾ら飲んでもという感じで様子は全く変わらない人だけれど。
「それでもだ、思う」
「うちの親父みたいにはですね」
「あるべきではない」
「けれど今は」
「確かにどうかと思う方だ」
 ここでも率直にだ、井上さんは答えてくれた。この人は嘘を言わない。真っ直ぐで生真面目な性格がそうさせる。
「しかしだ」
「僕に教えたことはですね」
「いいことだ」
 こう僕に言ってくれた。
「非常にな」
「そうですか」
「思えば君のご父君はいつもな」
「いいことを言っているとですね」
「思う」
 こう僕に話してくれた。
「そして確かに女好きで酒好きだとは思うが」
「それでもですか」
「人の道はだ」
 それはというのだ。
「踏み外しておられない」
「そうした親父ですか」
「問題の多い方だとは思うが」
「それでもですね」
「人の道を踏み外してはおられない」
「そうした人なんですね、親父は」
「私の見たところな、人の道とはだ」
 何か井上さん好みの話になったと思った、ここで。
「何でもない様で重要でだ」
「踏み外したら」
「それで終わってしまう、人間としてな」
 人間として、とまでだ。井上さんは僕に語った。
「お父上はそこまでいかれてはいない」
「じゃあいいんですね」
「まだな」
「そういうものですか」
「そう思う、私はな」
「わかりました、それじゃあ」
 僕は井上さんのその言葉に頷いた、そうしてだった。
 僕は井上さんとの話を終えて自分の部屋に戻った、それからお風呂に入って晩御飯を食べて寝ようと思った、けれど。
 夜いつも通り書斎にいると扉をノックする音が聞こえてきた、そして。
 その扉を開けるとだ、ジューンさんと水蓮さんがいて僕に微笑んで言って来た。
「明日のことだけれド」
「朝のランニングのことあるが」
「四時半に起きてネ」
「それで走るあるよ」
「四時半。早いね」
「早く起きて一杯走ってネ」
「それからシャワーを浴びて爽やかな朝食ある」
 二人は僕に笑顔でこう話した。
「これが最高だかラ」
「早起きあるよ」
「そういうことなんだね、じゃあもう寝るよ」
 今書斎の壁の時計を見たら十時二十分だった、それならだった。 
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