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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十二話 決勝戦その十三

「沖縄のものです」
「そうですね、美味しいです」
「はい、ですから日菜子様も満足出来ますね」
「とても、けれど」
「けれどですか」
「この豚は」
「沖縄の豚とのことです」
 畑中さんは足てびちやミミガーのその豚についても答えた。
「小野さんが仰っています」
「それはそうですが」
「何か違いますか」
「私が沖縄で食べていた豚よりも」
「質がいいですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「それもかなり」
「はい、実は」
 ここでその作ってくれた小野さんが日菜子さんに話した。
「いい豚が手に入りまして」
「それでその豚を使われて」
「そうなのです」
「そうだったんですか」
「ですから」
 小野さんはまたお話してくれた。
「本場の味を再現出来ているかと」
「豚は大事ですよね」
「沖縄料理では特に、ですね」
「はい、豚は声以外全て食べられる」
 日菜子さんはそーきそばのおつゆも飲んでいた、そのうえでの言葉だった。
「そう言いますから」
「骨もですね」
「豚骨も使います」
「そして内蔵も」
「全て使いますので」
「だからこそ沖縄料理では豚肉は大事です」
 もっと言えば内蔵や皮もだ、とにかく豚肉は捨てるところがない。沖縄料理ではとりわけそう言われている。小野さんは力説していた。
「ですから」
「その通りです、よく豚まで仕入れて下さいました」
 日菜子さんは心から喜んでいた、そのことが言葉にも出ていた。
「有り難うございます」
「いえ、お礼には及びません」
「どうしてですか?」
「料理人として当然ですから」
 当然のことだというのだ。
「よい素材を手に入れてよい料理を作ることは」
「小野さんいつもそう仰言いますね」
「もっと言えばお給料の分は働く」
 小野さんは笑ってこうも言った。
「このことは当然です」
「お給料の分もですか」
「高いお給料を頂いていますし」
 八条家からというのだ。
「それに衣食住も保障してもらっています」
「あっ、小野さんもここに住んでおられますしね」
「よいお風呂まで頂いています」
 小野さんは僕にも笑って答えてくれた。
「ですから」
「それでお礼とかはですか」
「私は望みません、ですが」
「ですが?」
「美味しいと言って頂けると」
 作ったお料理をというのだ。
「嬉しいです」
「私共もです」
 ここで畑中さんも言って来た。
「お礼はいりませんが」
「笑顔はですね」
「嬉しいです」
「ううん、笑顔は確かに」
 僕もだった、人の明るい笑顔を見ていると。 
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