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インフィニット・ストラトス~黒衣の創造神~

作者:黒鐡
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第4巻後編
  夏休み最後での過ごし方

夏祭りも終えてから、夏休みももうそろそろ終わりだと言う事だったので、たまには部下達を休めるようにして一日休暇を俺の部隊のみに出した。一日休暇という命令だったのか、他の部隊からはクレームがありがちだったが俺の指示だと伝えるといいな~という視線を出して来た。

セシリアとシャルも最近ここで缶詰状態となっていたので、どこで過ごそうか?と聞いたら俺の家で過ごしたいと言ってきたので承諾。軍服から私服に着替えた俺らは、いつものフェラーリに乗ってから、織斑家に到着するまでの間に箒達にも情報をリークしといた。

『今日一日、織斑一夏は実家で過ごしている』

という情報を箒・鈴・ラウラに横流しをした。それと簪は既に知っていたかのように、俺の家の前にいた。到着してから車庫に入れてから、俺らは家へと上がるが最近はハウスキーパーが仕事をしているので埃一つない感じとなっていた。

「とりあえず上がれよ。特に簪は外で待っていたのだからな」

「一夏から情報が来てから、私はすぐに着いたからね~」

「ですが私とシャルロットさんは軍にいましたが、簪さんはどちらにいましたの?」

「私は実家に戻っていたから、それに軍属になったからと言ってもまだ公表してない」

そう言いながら、冷房を付けてから冷蔵庫にキンキンと冷やした麦茶を持ってくる。飲んでから、改めてセシリア達は家を見回るが男性の家に上がる事がほとんど無かったので緊張していたがすぐに落ち着いた。

俺の家は一見すると中古物件に見えるが、この家には最新機器を何個か付けている。家電や台所やリビングなどは、リフォームしたかのような部屋であった。それと総合管理をしているのは、自立支援型AIゼロだからだ。

「にしても、夏休みの間に色々とイベント有りすぎだろうな」

「そうですわね。一夏さんが軍属でありながら、私とシャルロットさんが国連軍所属となってからは色々とありましたの」

「そうだね。あとまさか更識家丸ごと記憶共有者だとは思わなかったよ」

「私も最近になって驚いているからね。覚醒前から過ごしていたけど、まさかISをエヴォルトシステム搭載機を貰えるとは思わなかった」

夏休みの間に起きたイベントは、ヨーロッパに行ってからだった。国連軍所属となったが為に、各国の説明に改造してきたISの説明、イギリスで起きた暴行事件にイギリス軍内で起きたクーデターみたいなのが起きたりだがそれはドイツ軍も同じだった。

飛行機ハイジャックを早急に解決し、エンジン全て分離したにも関わらず無事に着陸させた事、そして最大のイベントがエヴォルトシステム搭載型ISだった。

「あ、そうだ。ちょうど空間の中に試作品のケーキを入れていたんだが、お前ら試食してもらえるか?」

「一夏さんの手作りケーキもそうですが、料理に関しては一級品でしてよ」

「僕も久々に食べたいなー」

「私もよ。たまに作ると女のプライドを粉々に砕く程の威力だと聞いているから」

そんな大げさな威力だったか?と思いながら、空間から冷蔵庫に冷やしたケーキを取り出してから皿に乗せた。イチゴのショートケーキにチーズケーキとチョコレートケーキの三つを取り出して、台所に立たなくともここに来る前に準備していたアイスティーを空間から取り出した。空間からモノを取り出す事については、既に知っているので誰も疑問を持たなかった。

「準備も出来た事だし、早速試作品のモニターをしてくれ」

机に置いたそれぞれのケーキとアイスティーを置いてから、ソファに座る三人はそれぞれ選んだケーキが乗った皿を選び出す。そして一口食べてからは、やはりというか予想通りのリアクションとして落ち込んでいた三人。腕を更に磨いていたのか、俺は料理だと何でも作れてしまうという印象を持たせてしまう。国際大会で受賞経験は無いが、それに勝る菓子職人だと思う俺である。

「このショートケーキは、一見すると普通に見えますが食べてしまうと最早高級レストランの菓子職人が作ったかのような味わい」

「僕が選んだチーズケーキは、少し固めだけど味はしっかりと出しているから僕はたまに食べたいかも」

「私はチョコ独特の味がしていて、大人向けの感じがする」

「なるほどな。ありがとう・・・・ついでに三人で分けながら食べてくれないか?三人一緒の感想ではないと思うしな」

そして食べさせ合いっこみたいな感じになったが、それぞれの感想を端末に打ち込みながら俺もそれぞれのケーキを食べていた。三人が俺にあーんをしてくるので、一口ずつが三人にとってはある意味でいい事なので俺としては了承をした。間接キスになったフォークで食べたが、別に嫌がらないし俺が一日休暇だと聞いてそろそろやって来るであろう箒達を待っていた。

「三人共俺の家に来たのはいいが、情報をリークさせたからそろそろ来るはずなんだが」

「箒さん達に情報をわざとリークさせたのですね」

「まあ僕達だけで過ごしたら、また何か言われるもんね」

「覚醒前からセシリアとシャルロットは、一夏さんと常にいた印象が強かった」

IS学園の生徒は夏休みを過ごしているが、それは俺らにとっては長期休暇を一度返上してから仕事一本で過ごしているようなもんだ。あと簪が国連軍ブラック・シャーク隊に入った事については、まだ一部の者しか知らない情報であり千冬でさえまだISが打鉄弐型だと思っているだろうよ。男性の家に行きたがる女子は、余り良い印象は無いとされているが今日偶然一日暇になったというのは俺らぐらいだろう。

「さてと。これからどうする?ウチには色々とゲームがあるが、それだと飽きちゃうだろうから外に出るか・・・・それだと箒達を待つ意味が無いな」

「外は暑いですから、家で一日いる方に一票」

「僕と簪もそれぞれ二票。それに箒達には悪いしね、だったらこの家の内部を知りたいな。例えば一夏の部屋とか」

「俺の部屋か。最近は国連軍の方で色々と揃えているからか、あんまり面白くないと思うがな」

ここにいる女子達は、ISを扱える以外は普通の女の子のはずが軍属なので色々と問題は無いはずだ。上司の部屋を見てみたいというのも興味が沸いたと思うし、これまで一緒に生活してきたからか興味ぐらいはあるだろう。なので俺の部屋へと案内する事となったので、立ち上がると同時に使った食器を全て台所にある食洗機に入れてから俺の後を付いて来る。

普通の住宅に見えるが、ちょっとした豪邸みたいな感じになっているからなのか。ここは三階建てとなっていて、屋上はいつでも鍛錬出来るように改造した。今頃俺の部屋では、武装神姫であるアン達が色々と仕事をしていると思う。

移動も階段ではなく、エレベーターで二階に移動してからセシリアとシャルはそれぞれの実家を思い出していた。セシリアの実家よりも狭いし、シャルのだとマンションだから移動は歩きだけで済む。

「ここが俺の部屋だが、あっちには行くなよ?千冬の部屋なので、基本的に勝手に入る事を許されているのはハウスキーパーと俺だけだからな」

「ああ・・・・だから一夏がいなくとも綺麗に掃除されているのですね。それにしてもハウスキーパーを雇っているという事は初耳でしてよ」

「織斑先生もここで暮らしているとはいえ、一夏は弟から兄に格上げされたから呼び捨てなんだね」

「二人共、臨海学校の時に織斑先生と箒・鈴・ラウラと一緒に話していたけど、結局何だったの?」

「あの時俺は席を外していたが、俺の事をどう思うかを聞いてきたそうだ。箒らは自分の想いを言ったらしいが、セシリアとシャルが俺には妻がいると言うのを暴露したらしい。だから三人共ポカーンとしていて、その後絶叫していたそうな」

立ち話もいいが俺の部屋を見せる事だったので、ドアを開けてからセシリア達を部屋に入れた。そしたらちょうど部屋の掃除やら俺の服を畳んでいたアン達を見てから、邪魔しない様にして見ていた。広い部屋ではないが、普通に住んでいる自室については男性独特の匂いがしていた。

「セシリアさんにシャルロットさんと簪さんですか。マスターの部屋を見てどう思いましたか?」

アンが代表として言ってきて三人共同時にこう答えた。

『綺麗に整頓されているし、汚れとか一切ないのが一夏らしい』

椅子が一個しかないので、しばらく三人は俺が使っているベッドへと座っていた。その間、アン達は仕事をしていたが不意にインターホンが聞こえた。あと弟の時のベッドは廃棄してから、大人用ベッドへと買い換えた事でよく眠れる。

「このインターホンと外からの気配は・・・・箒達が来た訳だから、移動するぞ」

そうして移動後、インターホンを何度も鳴らしたので俺は空間からハリセンで叩いてからドアを開けた。

「やかしいぞ!誰だ・・・・何だお前らか」

「お前らか、という事は一夏は最初から私らが来る事を予見していたのか」

ラウラがそう言った後に、玄関にいたセシリア達を見て固まった。二人だけならともかくとして、簪までもが俺の家に居た事に驚いていた。そしてハリセンのダメージが無くなった事で、家に上がった六人の少女達だった。

「というかセシリアとシャルならまだ分かると思うが、簪も国連軍所属となったから自動的にここにいんだよ。それに俺が一日休暇という情報をリークしたのはわざとだ」

「通りで情報があった訳ですか。それにしてもまさか簪までもが、国連軍所属とは。驚きです」

昼食のそばを作ってから、六人共そばをすすりながらラウラだけは簡単な敬語となっていた。箒と鈴はいくら今はプライベートでも、相手は国連軍少将という偉い人物だと知らされたのか。まあ俺としては来るのを予知していたから、別に驚く必要性は無い。午後の予定を聞くと、家の中で過ごすと言う事で何らかのゲームでもあるかなと思い自室へと戻ったのだが、三人の心中は乱れていた。

「(わざわざ一夏が帰省している日を狙って来たのだ)」

「(それなのにそれは罠だったなんて・・・・それよりまさか簪までもが一夏と同じ軍属になっちゃうなんて)」

「(織斑教官が暮らしていた家としても、興味があるが今は一夏の知らない情報を知る事が第一優先事項なのかもしれん)」

この三人はそう心の声を発していたが、セシリアとシャルに簪は箒達の心の声を念話のようにして響かせたので三人は納得したような面持ちだった。そして戻ってくる俺だったが、武装神姫の一人であるマイを肩に乗せていた。マイは主に戦闘が好きな武装神姫なので、マスターの警護という形で乗せていた。

「さてと、お茶でも入れるとするか。セシリアにシャルと簪、食べ終わったのなら手伝ってくれないか?」

『了解』

そう告げたらさらりと立ち上がってから、俺とシャルで食べ終わった蕎麦や皿を持ってきて皿洗いをする。セシリアと簪は、指示通りに動いてお茶の用意をする動きを見たのか、危機感を覚えた箒と鈴だったが既に遅しの状態となっていた。ラウラは逆に流石は同じ部隊同士の連携に関心していたが、俺としては連携ではなくただただ記憶共有者同士なのでやる事を覚えている。

「さっきの皿は食洗機で洗ってしまったが、たまに手洗いでやるのも悪くない。シャルは洗った食器を水ですすいでくれ」

「分かったよ一夏」

「一夏さん。これはどういう風に使いますの?」

「それはだな『私に任せて』じゃあ簪に任せる」

真剣な顔をしていたが、異性と共に行動をしている時点で嬉しい限りだった三人だった。だがそれをその他三人は眺めていた。

「(なぜいつもアイツらに指示が出せるのだ)」

「(あーうー、完全に出遅れたけど・・・・セシリア達からじゃなくて一夏からだとは)」

「(流石はブラック・シャークの精鋭隊員だな・・・・それにしてもセシリアとシャルロットは中佐だが、簪は私と同少佐なのだろうか?)」

セシリア達が手伝ったお陰で、後片付けからお茶の用意までを全て連携しつつ進んでいた。そんで十五分後には全員がテーブルでくつろいでいたが、マイは相変わらず俺の肩上に座っていた。例え洗い物や料理をしていても、マイは肩から落ちないで済む程なバランス能力を持っているので心配はしていない。

「それで?この後はどうするんだ・・・・生憎とウチは余り皆で遊べるモノはないぞ」

「まー、そう言うだろうと思って、あたしが用意してきてあげたわよ。はい」

鈴が寄越した紙袋には、トランプから花札、モノポリーに人生ゲーム、その他様々なカードゲームとボードゲームが溢れていた。そう言えば鈴はこう言うボードゲームとかは勝てる自信があったからか、逆にテレビゲームに無茶苦茶弱いと言う裏返しでもあった。

これで遊ぶとして、何で遊ぶかを選んでいる間に俺は簪と一緒にポータブルゲームをしていた。簪はこういうゲームよりも、こちらのゲームの方がやりがいがある。

「あら、日本のゲーム以外もありますのね」

「あ、これやった事ある。材木買うゲームだったよね」

「ほう、これが日本の絵札遊びか。なかなかにミヤビだな。来年にでも帰国する時に、部隊に土産として買って行くとしよう」

「私は将棋がいいのだが、あれは二人でしか出来ないしな。・・・・ところで一夏と簪は一体何をしているのだ?」

わいわいのと色んなゲームを前に女子ズが盛り上がるが、そんな光景を興味無さげにして格ゲーをしていただが鈴は昔から盛り上げるのが得意な方だ。格ゲーと言っても武装神姫を相手にするのではなく、机があればどこでも出来る電子コントローラーで熱中していた所を箒が聞いてきたので手を止めてた。俺と簪も加わってやるゲームならと言って取り出したのは、バルバロッサと言う名のゲームだった。

「ほう、我がドイツのゲームだな」

ドイツ国旗を見つけたので、ラウラが腕組みしながら嬉しそうにしていた。

「それで?これはどういうゲームなの?」

「このカラー粘土で何かを作って当てていくゲームよ。質問とかしてもいい訳」

「要するに作る人間の技量にも左右される事ではなく、上手く作り過ぎてもすぐに正解されてしまうからな。それだとポイントが入らないんだ、適度に分かる分からない程度に作らないとな。それと質問次第で答えに当たりをつけていき、質問で埋めれば大丈夫だ。造形よりも質問形式でこのゲームの鍵ともなり得る事なのさ」

経験者である鈴と俺は説明役をする事になったので、残りの女子達でゲームが始まった。粘土をこねてから作り出すが、意外と難しい。全員が出来た事でシャルからサイコロを振り、ゲームが開始された。箒が質問者となったので、まずラウラの粘土に対して質問する事となった。

「ちなみに回答は『はい』『いいえ』『分からない』よ。『いいえ』を出されるまで質問出来るから、最初は大分類で始めるとお得ね」

鈴の説明を聞きながら、ふむふむと頷く箒だった。そして再度、ラウラの粘土を見るが静かな威圧を放っているかのような円錐状の何かであった。実際ラウラと俺以外の全員が『あれは何だ?』と気になっていた。

「それは地上にあるものなのか?」

「うむ」

「よし・・・・。では、それは人間よりも大きいか?」

「そうだ」

という事は、道具の類ではない。しかし、人間より大きいというとかなり限定されてしまいそうであるが、俺には心眼や心の声を聞く事が可能なんですぐに理解をした。

「それは都会にあるのものなのか?」

「どちらとも言えないな。あると言えばあるが、無いと言えば無い」

「では人間が作ったものか?」

「ノーだ」

「はい、質問終了。箒はこのまま回答も出来るけど、する?」

「う、うむ。そうだな。外しても失点は無いようだし、答えよう」

質問で出た答えによって、更に全員が頭を悩ませていた。特にほぼ全員が東京タワーだと思っていたのだが、最後の答えがノーだった為に更に混乱を増す事となった。正式なルールの場合だと紙に書いて製作者だけが見るんだけど、今回はあくまでお試しゲームとなっているので回答情報を共有するルール変更となった。

「じゃ、答えをどうぞ」

「油田だ!」

物体を指して箒が答えるが、ラウラが『違う』と言ったのでがくっと項垂れていた。俺を含めた全員が『何故油田?』と箒の回答に、疑問符を浮かべていたのだった。そんなこんなでゲームは進み、中盤を過ぎてからそろそろ終盤へと入る。

「そろそろ正解しないと、当てられた人も得点入らないわよ」

ちなみにシャルが作ったのは、本来なら馬であるがここでは器用に作った黒鐵の頭部を作ったのだった。器用に作ったので、なかなか当てられなかったがセシリアが当てたので点数が入った。箒・鈴・ラウラだと何の頭部なのか理解不能だったが、俺のISの頭部はどんなのだ?と言ったら納得したんだった。進行時点での正解による得点がバルバロッサの特徴であり、ベストなのは言えば分かる造形である。

中盤で正解される事よりも正解者だけでなく製作者にも得点が入るというルールなのでセシリアとシャルにも得点が入った。箒が作ったのは井戸だったが、シャルの質問が上手かったので正解していた。簪はセシリアとシャルが分かるような武装だったのだが、問題はラウラのみとなっていた。セシリアのはシャルが答えたイギリスだった。

「それはビルよりも小さいのか?」

「いや巨大だ」

「自然的なものなの?」

「イエスだ」

残りはラウラのだけだったので、とにかく質問していったが、そろそろ時間になったのでお試しゲームが終了となった。で、答えを聞いたが呆れていたが正解は山だそうだが、エベレストに特定しないと分からない。エベレスト以外にこうした尖った山なんてあるのか?ラウラだけが減点となったので、これから鈴と俺が加わってやる事となったが、俺は大人なので逆に答える側となった。

「まあ確かに俺が大人だし、知識や情報などは多くあるからな。作り手よりも正解者としてなら、面白そうだな」

と言いつつもわいわいと賑やかにしていたら、時刻が十六時頃になっていた所で唐突な予想外な人物がやって来た事を報せたゼロだった。ただしこれに関してはプライベート・チャネルみたいなので、セシリアとシャルと簪のみ知らせたのだった。

「何だ、賑やかだと思ったらお前達か」

織斑千冬で、入学当初は弟だったはずなのに今では兄として格上げしたにも関わらず、いつも通り自然的に会話をしたのだった。ちなみに私服姿は白いワイシャツにジーパンと言う行動的な人柄をよく表しているそれで、服の下では黒いタンクトップが豊満な胸を窮屈そうに押し込めていた。

「千冬お帰り」

「ただいま。それより聞いたぞ、一夏とオルコットとデュノアに更識。一夏ら三人は一段上へと昇進したそうだな。そして更識は夏休みの間に国連軍ブラック・シャーク隊に入隊したと聞いたぞ」

『ありがとうございます千冬さん』

俺はすぐに立ち上がってから、昇進した事を思い出すかのように祝った千冬だった。セシリア達三人は素直に一礼をしてから、千冬の鞄を受け取った。兄になったとしても、いつも家でやる事は変わりなかった。

「昼は食べたと聞いたが、お茶でも飲むか?熱いのと冷たいの、どっちがいい?千冬」

「そうだな。外から戻ったばかりであるから、冷たいのでも・・・・」

と、そこまで言ってから千冬はふと気付く。教え子のどうにも圧迫された雰囲気と俺がいつも通りに接している事で、羨ましそうに眺める視線だった。

「・・・・あー、一夏。冷たい飲み物を私の自室まで持ってきてくれ。そしたらすぐにまた出る予定があったんでな」

「そうか。・・・・なら俺が作ったかき氷かアイスかコーヒーゼリーを作っていたのだが、それならしょうがない」

「また今度もらうのでな、そんなに残念そうに見るな。それでは着替えてくるが、冷たいお茶を持ってきてくれよ」

「了解。それとスーツを別として出してあるから、秋物とかは千冬の部屋にバックで置いてあるんで確認してくれると助かる」

「分かった」

やれやれと言う事だったが、俺はすぐに冷蔵庫から取り出した麦茶をコップに入れてから千冬と一緒にエレベーター乗ったのだった。麦茶を持ちながら、千冬は最近の事に関してを簡単に報告していた。六人の少女らは、まるで兄妹じゃなくて夫婦みたいだと空気感があった。そして数分後に、飲み終わった空のコップを持ちながら台所に洗う予定ので置いといた。

「・・・・あんた、相変わらず千冬さんにべったりね」

「ん?お前は何を言っているんだ。兄妹なんだから、妹を心配するのは当然の務めだろう」

千冬に対する俺の態度に対して、鈴以外の者が弟から兄となったのでそれが当然だろうと思ったようだ。それに俺は千冬の事を可愛い妹としてじゃなくて、歳が二個違うだけなので普通に接していたので不自然ではない。

「ん?お前らどうしたんだ」

「ゼリーかアイス出しなさいよ!」

「やかましい!今すぐ家から放り出すぞ・・・・大人をからかっていると自動的に追い出すんでな」

脅迫したので、これでちゃんとした大人とした態度が取れたので箒達三人は静かに頷いた。そうしていると千冬が来たが、今日は帰ってこないと言っていたが玄関まで行くと夜になったら迎えに行くか俺も酒を飲みたいので場所を教えてくれと頼んだら納得して教えてくれた。それと女子は泊まるなよ?とリビングに付け足してから、玄関から外へと行ったのだった。

「さてと、俺が作ったデザートを食べたいと言ったがホントにいいのか?」

「な、何よ?『それについては一夏に同意するよ』なぜシャルロットがそこで同意するの」

「一夏の手作りは、女性のプライドを粉々に砕く程の威力がある事。それでも食べたいのか?と一夏が言っているのよ」

そう言った簪だったが、箒達はそんなに威力があるのか不明だったので食べてみる事となった。ちなみにコーヒーゼリーだったが、大人用として濃い目に作ってあるからミルクとシロップを掛けてから食えと言った。格好をつけてブラックで食べようとした箒と鈴とラウラだったが、すぐにシロップとミルクを手に取った。セシリア達は既にケーキを食ったので、アイスを食べていた。

「こ、これはなかなかのモノだ」

「あんた、男の癖にデザートも作れるなんて呆れるわね~『文句あるなら帰れ』うぅぅ・・・・」

「教官は毎日手料理を味わっていた訳だが、これが簪が言った破壊力か」

箒とラウラは落ち込んで、鈴にはハリセンで叩いてから文句を逆に言ってやった。そんで結局夕方までいたので、そろそろ帰る事となった箒達だった。セシリアとシャルと簪は国連軍日本支部へと戻るため、俺無しで帰る事となった。

まあ門番に手帳見せれば通れるからな、それか桜花を呼ぶかと思って電話をしたらすぐに来たのだった。そんで車で戻ったので、神姫達には部屋で待っているようにと言った後に空間切断で千冬がいる店まで行ってみたのだった。

「お待たせしましたっ」

駅から少し行った所にある商店街の、その地下にあるバーに息を切らしてやってきたのは山田先生こと山田真弥だった。夕方四時から翌朝八時まで開いているこのお店の名前は『バー・クレッシェンド』と言うのだが、フランス製の調度品で統一した大人社交場であり千冬の行きつけの場所であった。

「すまないな、急に呼び出したりして」

「いえいえ。どうせ部屋で通販カタログを眺めていただけですから」

真耶がカウンター席にかけると、すぐに千冬がノーマル&ブラック・ミックスのグラスビールをマスターに注文する。もちろん、真耶の分だ。

「千冬さんも新しいのをお出ししましょうか?」

「そうですね、頼みます」

「畏まりました」

初老のマスターが一人でやっているこのお店は、その口髭に白髪のオールバックと言う容貌もあって女性ファンも多い。千冬にとってはその外見が特別好みという訳ではないが、マスターの落ち着いた声のトーンはお気に入りである。

「どうぞ」

真耶のビールと、それに千冬の黒ビール、それからサービスのキューブチーズを出して、マスターは二人から少し距離を置く。それと黒ビールが好きになったのは、一夏がヨーロッパからの土産にあった酒類を気に入ったので、ここに来ると同じのを頼むようになった。

間近に他人がいたのでは落ち着いて話せないのが人間なので、それをよく知っている長年の経験からなる気配りだった。もちろん一夏も外見は千冬より二個上だが、中身はマスターよりも人生の先輩である事を知っているのはマスターしかいない。

「乾杯」

チン、とグラスを鳴らし、真耶はちびちびと飲み、千冬はゆっくりだったが長くグラスを傾ける。大体グラスのビールが半分程無くなる所で、真耶は質問を切り出した。

「今日はどうしたんですか?お休みだから、帰省されたんじゃ?」

「そのつもりだったんだが、一夏が家に帰っている事は知っていたが女子がいてな」

「女子と言う事は、いつもの面々ですよね?ですが一夏さんとオルコットさんとデュノアさんは、国連軍日本支部で毎日のように仕事をしていると聞いた事がありますが」

「一夏達軍属共は昇進してから忙しくなったらしいが、更識簪までもが軍属となったのは初めて聞いた。なので専用機持ちは七人だから、戦争があったとしてもすぐに沈黙出来る程の戦力だ」

「冗談にならないですね、それは」

そう言いながらも、千冬は笑いながらチーズを頬張る。

「織斑先生としては気になりますか?弟さん『一夏は今兄となった』あ、そうでしたね。お兄さんとして格上げされた一夏さんが、ガールフレンドといるのは」

「それなんだがなぁ・・・・」

そこでビールが底をついて、千冬はマスターにおかわりを頼む。四杯目になる黒ビールを一口ごくりと飲んでから、千冬は話を続けた。

「先月の臨海学校があっただろう?」

「ええ、はい。もちろん覚えていますよ。色々ありましたが、織斑大佐『昇進したんで、今は織斑少将になったそうだ』そうなんですか!少将だとIS学園では校長先生以上の偉い人ですよね?」

「まあ福音事件については、一夏が解決してしまったがそれは置いておいて。あの時オルコットとデュノアから聞いたのだが・・・・どうもまだ信じられなくてな」

「・・・・と言いますと」

興味津々の顔で真耶が尋ねる。こうも歯切れの悪い千冬を見るのは初めてで、オルコットさんから聞いた事について何が信じられないという理由が気になって仕方が無いのであった。

「例の女子の内、オルコットとデュノアがな」

「はい」

「一夏には妻がいて、更には息子もいると聞いてな」

「・・・・何時の間に結婚されていたのですか!?」

きょとんとしたが、妻子持ちだと知った事でとても驚愕していた真耶だった。そして千冬が話そうとする前に、バーに入店して来た時にマスターが俺の事を織斑オーナーと言ったので千冬と真耶は入口を見たのだった。

「やあ千冬に真耶。そしてマスター久しぶり」

「お久しぶりですなー。何にされますか?」

「千冬と同じので頼む」

「畏まりました」

そうしてから、席を移動して俺が真ん中に座っていて、左右に千冬と真耶となった。俺が妻子持ちという事実を言ってから、端末にある家族写真を二人に見せた。そしていつ結婚したのかについては秘密だったが、俺は兄として今の千冬に関してを話し合っていた。

女子連中が千冬をライバル視していたが、俺は別に気にしてないしセシリア達の事は部下として見ている。そしてここからは大人同士の話題となってしまったので、俺らは朝まで飲んでいたのだった。 
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