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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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月詠編 暗雲

 
前書き
この話には原作キャラが好きな人には注意しておくべき内容がありますので、読む際は気を付けてください。

決戦準備中の回 

 
~~Side of フェイト~~

「こんな配置、納得できるか! もっとまともな案を出せ!!」

「上層部はこのように配置すると決めた。地上は大人しく我々本局に従って行動すれば良いのだ。そうすれば被害は最小限に食い止められるのに、お前達はこれが最善の案だとなぜ理解しない?」

「最善だと!? 地上を守ってきた大事な部下達をみすみす囮にするような作戦を、貴様ら本局は最善と言うのか!? 貴様らにとって地上の人材は、自分達の華を飾るための道具だというのか!!?」

「そこまでは申していない。だがあの化け物を倒すには、地上の局員では力不足だ。なら我々本局がトドメを刺すまで、時間稼ぎに身を張るのがせめてもの役目だろう?」

「時間稼ぎが必要ならそっちからも人材を寄越せ! たらふく高ランク魔導師を抱えているなら、数人ぐらいこちらに回しても良いだろう! Aランク魔導師がたった一人でも部隊にいるだけで、現場の生存率は48パーセントも上昇する! だというのに一人も寄越さないのは、貴様らが自分達の所有する力を手放したくないからだろうが!!」

「レジアス・ゲイズ中将、少し口が過ぎるのではないか? 我々は事態の収束に全力を注いでいるというのに、それで出した案を受け入れられないという事は、お前達は被害を拡張させようとしていると思われても仕方ないぞ?」

「拡張させようとしているのはむしろ貴様らだろう! 自分達の面子ばかり気にして、現場で戦う者達の事情には一切意識を向けない! そんな姿勢のままでは、管理局は近いうちに身を滅ぼす!!」

「言わせておけば……! 戦力を分散してしまえば、火力不足で敵を倒せなくなる可能性もあるのだぞ! 最優先で達成しなければならない事案を無視して、地上の局員の生存率を上げている場合ではない! ファーヴニルを倒さなくては、全ての世界が崩壊すると理解しているのか!」

「人なくして世界が成り立つか! 部下に犠牲を強いる作戦を、私は絶対認めんからな!」

うわぁ……これは何というか、色んな意味でひどいね。どちらの意見にも筋が通っているのが、更に口論をややこしくしている。心情的には部下を大事に思ってるレジアス中将の意見を支持したいんだけど、本局の指揮官らしい人が言う通り、ファーヴニルを倒せなければ世界が崩壊してしまう。だけど守るべき人がいなくなれば戦う意味もなくなってしまう。だからこの口論になかなか決着がつかないみたいだ。

地上本部の傍で本局の人と地上の人が言い争っているのを遠目に聞きながら、私達はこのままでは戦う以前の問題だと思って頭を抱えていた。なまじ根が深い問題だから、うかつに口出しできる話でもない……でも一致団結して立ち向かわなければ、ラタトスクとファーヴニルによって全てが終わる。今こそ、次元世界の人間の資質が試されているに違いない。

「第5から第12部隊までは沿岸部、第32から第48部隊は都市部の防衛。第64から第99部隊は犯罪者の警戒、第108部隊及び残りの部隊は市民の避難に尽力せよ」

『了解!』

一方で武人肌の男の人が的確に指示を下し、行動を起こしている地上の局員達もいた。彼らからはどこかお兄ちゃんと似た雰囲気を感じるが、もしかしたらお兄ちゃんと会ったことがあるのかもしれない。忙しそうだから話す暇はなさそうだけど。

「レティから現状について話を聞いてきたけど……本局と地上の垣根は私達が思う以上に厄介なようね。次元世界全体の治安維持のために、地上から優秀な人間を集めていたつもりだったけど、それが地上を守ってきた人達にとっては腹の立つ行いだったみたい」

「やり過ぎちゃった、という事なんですね。リンディさん、これって解決法があるんですか?」

「多分、なのはさんが思うような明確な答えはないと思うわ。これはどっちが間違っていて、どっちが正しいという話じゃないから……」

リンディさんに答えがないと言われても、なのはは納得がいかないらしく、皆が納得できる良い方法が何かないかと思案していた。でも……きっと私達が一生懸命考えても答えは出ないと思う。なにせ私達より長く生きている人達がずっと悩んできたのに、結局変えられていないのだから。

さて……現在、本局を中心に防衛陣を組んでいたら次元空間全体に及ぶファーヴニルの吸収の影響を受けてしまうため、第1管理世界ミッドチルダを中心にして再展開している。そのため本局所属の次元航行艦の大多数もミッドに集結しており、アースラもこの中に駐留、部隊の編成を待っていた。大量の戦艦が横並びになって浮かんでいるのは壮観でもあったけど、本局は本局、地上は地上とでしか向きを合わせていないから、真に轡を並べている訳ではなかった。

「……こんなんで、本当に平和を取り戻せるの? 管理局って、世界中の危機が訪れたら何の役にも立たないの? 人間って……本当に大事なものをちゃんと理解しているの?」

「姐さん……」

「アリシア……あなたはまだ色んな事を知らないわ。本当ならまだ学校に入れるかどうかという年齢だったから、人生経験がほとんど無くて当然なのよ。太陽の使者の代弁者となった以上、あなたの決定は太陽意思の決定とも言い換えれる。だからこそ、あなたは純粋な気持ちで私達人類を見定めてほしい」

「ママ……?」

「人は基本的に愚かな生き物よ。それはかつて死者蘇生を試みた私自身や、SEEDの件で暴走した管理局上層部が証明しているわ。だけど……世界にはそういう人ばかりじゃない事も、あなた達はよく知っているでしょう? そう、彼に救われた私達は、それを心から理解している……」

「母さん……」

「アリシア、フェイト……もうわかってると思うけど、いずれあなた達は自らの力で生きていかなくてはならなくなる。私も出来る限り病に負けないように生きるつもりだけど、流石に限界がある事ぐらいは理解している。だからそれまでの間に、母親としてあなた達に伝えられるものを全て伝えて見せるわ」

「ママ……何をするつもりなの?」

私達姉妹が懸念する中、母さんは未だに収まらない言い争いの場に、まるで散歩にでも行くかのような軽い足取りで向かっていき……。

「あんたら、いい加減にしなさい!! うだうだうだうだ……いい歳こいた大人のくせに、いつまでもみっともない姿見せてるんじゃないッッ!!!!!」

『は、はいぃ!!?』

管理局の偉い人達に鬼気迫る表情で一喝した。あまりの喧騒で言い争ってた両者が思わず気を付けをするほどで、瞬く間に口論の場の空気は母さんの威圧感に支配されていた。気のせいか母さんの背後に紫色の雷が見える……。

「本局と地上、お互いに譲れない一線があるのはわかるわ。だけどこの緊急事態を前にして理屈ばっかごねてる場合!? 相手は魔法の通じない化け物で、管理局としては面子に関わる問題かもしれない。高ランク魔導師の戦力を集中させて、これまでのように魔法で敵をねじ伏せることで、魔法の絶対性を保持したいのかもしれない。だけどこんな状況ではそんなプライドを守っていても何の価値もない。そもそもあなた達は無辜の市民の命を守るために管理局に入ったはずよ。それならこんな所で言い争ってないで、さっさと本来の役目を果たしなさい!!」

「わ、わかった……! そ、それなら本局から地上へ、魔導師を数人派遣してもらいたいと上層部に進言しよう。それで犠牲が減るのなら、渋る者もいるだろうが納得してくれるはずだ。……ど、どうだ……これで満足か?」

「ふ、ふん……最初からそうしていれば良かったのだ。贖罪中とはいえ犯罪者に言い包められたのは癪だが、部下や市民の人命には変えられん。……少しは感謝してやる」

母さんが説得したことで彼らの言い争いが収まって、やっと意識がまとまりつつあった。母さんが怒鳴った姿を見たのはジュエルシードの時以来だけど、この光景を見て私達はよく実感した。

母は強し、と。

「はぁ~、結果オーライだけど何とかなったようね。どう? 私もやるときはやるでしょう?」

一仕事終えたドヤ顔で母さんが戻ってきた。地上と本局の垣根を一時的とはいえ取っ払える程の剣幕があまりに印象的で、私達の母さんは本当に凄いんだと改めて理解したよ。
リンディさん達は唖然としていたけどね。でもなのはは尊敬の眼差しで母さんを見るようになって、はやては「あれがオカンの力か……」としみじみ納得していた。

「近いうちに、私のママ最強伝説が打ち立てられるかも」

「どちらかといえば武勇伝じゃないかな、姐さん?」

「プレシアの武勇伝……なんか結構ありそうな気がするのはあたしだけかい?」

「武勇伝ねぇ……確か昔、まだアレクトロ社に勤めていて新型魔導炉の開発に入ってない頃、研究所に何処かのスパイが忍び込んだ事があったわね。ちょうどその時徹夜で作業していたせいで意識が朦朧としていて、なんか変なのがいるなぁと思って適当にサンダーレイジをぶっ放して眠りについた後、起きたらそいつがスパイだったという事であれよあれよと訳も分からず賞賛された事があったわ」

「ええっと……寝ぼけてスパイをやっつけたのはある意味凄いとは思うけど、それって武勇伝なの?」

「さ、さあ……?」

そればっかりは判断のしようがない。武勇伝かどうか判断できる人たちに聞かないと、流石にわからないから。しかしそんな人達がいるのかな…………あ。

「高町家に聞けばわかるんじゃない?」

『それだっ!』

「それだ、じゃないよ!? フェイトちゃん達は私の家族をどう思ってるの!?」

『戦闘民族TAKAMATI』

「答えにくい回答しないで! 私の家は普通だよ!」

『あれが普通……だと!?』

「そんなに驚くことなの!? それとなんではやてちゃん達も混ざってるの!?」

『面白そうだから』

「えぇ~……」

がっくりと疲れた様子で肩を落とすなのは。そもそも魔法もエナジーも無しで魔導師に勝てたり、浄化でヴァンパイアから人間に戻れたり、暗黒物質に順応しているんだから、彼女の家が普通じゃない事ぐらい既に自覚してると思ってたよ。だからなのはが驚いている事が、むしろ私達にとっては予想外であった。

「あ、そうだ。魔法が効かなくても、戦力は出来るだけ多い方がええよね? ちょっと聖王教会と話つけに行ってくるわぁ」

「そうね……お願いしてもいいかしら?」

「ええですよ。それに少し相談しておきたい事もあるんで、こっちの事は後で教えてください」

そう言ってはやて達は私達の一団から一旦離れ、ミッド北区にある聖王教会領地へと向かう。流石に徒歩じゃ遠すぎるから地上の局員……老け顔の男性に協力を取り付けて、車で送ってもらっていた。気のせいか、彼とはやては仕事上で長い付き合いになると、理屈ではないが何となくそう思った。

とりあえず管理局の意識が何とかまとまった事で、私達がここで出来ることはあまりなくなった。指名手配の件で追及したい気持ちはあるけど、今それをしたらせっかくまとまってきた意識がまた分裂しかねない。それならしばらく管理局が変な行動を起こさないように、様子を見ておこう。

敵が動くまでまだ時間はある。それまで自由行動をしてもいいと言われた事で、皆がそれぞれの時間を過ごす中、私達テスタロッサ家はミッドチルダ南部へと足を運んだ。そこはかつて……母さんと姐さん、そしてリニスが暮らしていた家があったからだ。私達の家……今は崩壊した時の庭園がまだ地上にあった頃、そこは草花が咲き誇る美しい場所だった。だけど長い時を経て再び訪れたとき、そこは何の整備もされておらず、人の手が入っていた建造物を草木が覆い尽くしている光景しか残っていなかった。

「何十年ぶりかに来てみたけど、ここにはもう何もないのね……」

「改めてここに来てよくわかったよ。お兄ちゃんのおかげで転生できた私だけど、それまで流れた時は決して戻らない……それが自然の摂理だって。リニスももういなくて、精霊となった私は、皆とは違う時を生きていくんだって実感したよ」

「私達は地球で新しい生活を始められた。色んな出会いの下、家族でやり直す機会をもらえた。変な言い方だけど、この場所も私達の事を心配してくれていたかもしれないから、こうして私達は元気にしているって伝えておこうよ」

「……そうね。彼曰く、この大地にも意思があるみたいだから、見守ってくれてありがとうとお礼を言いましょう」

科学が支配する世界では廃れて久しい“祈る”という行為を、私達は静かに目を閉じて行った。大地や太陽に超常的な意思が存在していて、人類や無数の命を見守り、育んできた事を私達はついこの前まで知らなかった。これまでのように、これからも変わらないものだと思い込んで……それを当たり前だと思い込んでいた。だけどお兄ちゃんと出会い、エナジーの力を……太陽の力を身に着けてから、私達は彼らが常に見守っていた事を心から理解した。
世界から恩恵を与えられる事を、今の人間は当たり前だと受け止め、感謝することを忘れてしまっている。世界を自分達の物だと思っている。次元世界の人間がエナジーを使えないのは、実はこれが大きな原因である。大地、世界、太陽へ感謝する気持ちを忘れてしまったから、彼らの力を認識できない……だから引き出せないんだ。魔法や科学に心酔し過ぎた結果、人間は世界のエネルギーを見る事が出来なくなってしまった。

「……魔法や科学は人類が自ら築き上げてきた力だから、多くの人間は無意識に絶大な信頼と自信を持っていた。だけどその力に頼っていては絶対存在に勝てない……世界と力を合わせないと立ち向かう事すら出来ない。私は元々研究者だから、その事実を受け入れるのは正直に言うと辛いわ。でもね……そのおかげで本当に大切なことを思い出すことができた。全ての命は尊い……早いか遅いかが違うだけで、死は避けられない運命。あの時の私はそれが受け入れられず、科学の力を使って死者蘇生に挑むという禁忌の域に手を出した。命の流れを否定する行為を行ったのだから、本当なら私は管理局などよりも先に、世界から罰を受けるべきだった……」

「母さん……だけど母さんは、ずっと姐さんのために頑張ってきたんだよね。何もかもを投げ捨てて、姐さんを取り戻そうと運命に抗ったんだよね。今の私や姐さんがあるのは、世界が母さんの努力を無にしないでくれたからだと思う。……いや、きっとそうなんだ。だから……その分ありがとうって、ちゃんと言わなきゃ」

「そうだよ、ママ。世界がママを許してくれたんだから、その恩を忘れませんって今度は世界に示さなきゃ。ママが真剣に言えば想いは私を通じて太陽意思にもちゃんと届くから、精いっぱいの言葉にして伝えようよ」

「フェイト……アリシア……確かに、あなた達の言う通りね。……ありがとう。私の光を……ありがとう……!」

想いが込められた母さんの感謝に応えるべく、太陽の光と大地の風が私達を包んでくれた。それはまるで私達の気持ちを空へ届けて、同時に地上へ注いでいるようだった……。

その時、ふと何処かで紙のめくれる音がする。興味を抱いて音のした方に行ってみると、ボロボロの小屋にあった机の上に小さな手記が置かれてあるのを見つけた。なぜか懐かしい気持ちが湧き上がってくる手記を手に取り、母さんと姐さんの所へ戻っていく。それからしばらくの間、私達3人はその手記を読みふけるのだった。私達の幸せを願いながら消滅していった、山猫の家庭教師の深い愛情が込められた大切な手記を…………。

・・・・・・・・・・・・・・・・

~~Side of はやて~~

ゲンヤさんという男性局員に車で送ってもらい、聖王教会へ到着した私達は早速騎士カリムと騎士シャッハの所へと向かった。事情は既に伝わっていた彼女達は今回の事態を重く受け止めており、私達からより詳しい話を聞く姿勢をとっていた。

「全く、管理局は困った選択をとってしまったわね……彼の存在はこの世界の未来に大きく関わるというのに……」

「せやね……でも混乱を招く可能性があったとはいえ、相当大事な内容が含まれているはずの預言の事は伝えへんかったんですか?」

「地上本部には一応伝えたのですが、『このような預言に意識をとられていては、守れるものも守れなくなる』と言われて一蹴されてしまいました。地上が駄目なら本局を、と思って今度は本局でも同様に申したのですけど、やはり聞き入れてくれませんでした。返事として例えば『我々の威信である魔法の力を消し去る者の存在を認めるわけにはいかん』などと……」

「やはり……管理局は魔法至上主義に思想が凝り固まってしまっているようだ。それゆえ魔法を消す効果がある暗黒の力を受け入れられないのだろう」

「でも気持ちはわからなくもねぇんだよ、あたしらだって魔法を使ってきたわけだし。そりゃあ自分達がこれまで使ってきた力が否定されたら、誰だって嫌な気分になるさ」

「しかし管理局がそれを受け入れなくては、兄上殿の命運に陰りが生じる。そうなれば銀河意思ダークの本格介入により、世界の未来が失われてしまう」

「リインフォースも一緒だし、彼の事だから多少の危機は自力で切り抜けるでしょうけど、一度でも管理局と明確に敵対してしまえば取り返しがつかなくなるわ。まだそうなっていない内に対処しないと……」

「確かにシャマルの言う通りなんやけど……私達の立場は公ではまだ元犯罪者で罪を償う最中やから、ぶっちゃけるとそこまで盤石やない。むしろ身を守りながらやないと、これからもやっていけへん程やからなぁ……」

まあ要するに、私達はエレンさんやリンディさん達のように周囲に対して威厳を発揮できる資格や立場を持っていない。ベルカの技術を持っているという点では重宝されとるけど、それ以外ではまだ庇護されるだけの……自分の事だけで精いっぱいな弱い存在。
闇の書の禍根が相当深いと覚悟はしておった。でもラジエルと聖王教会の協力がなければ、償うどころかそれ以前に処刑されててもおかしくない程やった。あの時、意を決して過去の罪と戦うと決めたつもりやったのに、今も結局守られている。
これじゃあ覚悟を決めてこっちに来た意味がないやん。……まぁ、わかっとったよ。想いだけでは駄目だってことも、私がまだ世間知らずの甘い小娘だってことも。それなら皆が納得できる力を身につければええんやろ? 誰もが認める場所にたどり着けばええんやろ? ……ならやってやる。私の大事なものを守るために、管理局を内側から変えられる立場にまで上り詰めたる……!

「……はやてさん、一つ良い方法があるんだけど、聞いてみないかしら?」

「良い方法?」

「こんな時に伝えるべき事ではないかもしれないけど……あなたの魔力量は次元世界トップクラスだし、訓練もある程度こなしてきた。それでもやっぱり……目立った実戦経験が無いから、まだ本格的な戦闘が始まっていない今の内に戦いの雰囲気を覚えるべきだと思うわ」

「確かに……これまで魔力の制御訓練を中心にしてきたけど、私は一度も現場に行ったことがありません。この“クルセイダー”もまだ戦いで使った事があらへんから、本番でも訓練同様に使いこなせるかと言われると不安が残っとります。せめて一度くらいは現場の空気に触れた方がええですよね……」

「はい。そこでカリムと相談したのですが……はやてさん、これからちょっとした任務を果たしてみませんか?」

「へ? 任務ですか?」

「とある管理世界で発見されたロストロギアが、ミッドチルダ北東部にある聖王教会所有の次元空港を経由し、現在タンカーによってこちらへと搬送されています。聖王教会としては絶対に確保しておきたいものなんですけど、ファーヴニルとラタトスクの脅威に対抗すべく管理局も聖王教会も戦いの準備を進めている今の状況では、こちらからタンカーの護衛に回せる人間がいないのです」

「なるほど、言いたいことは読めました。要するに私にタンカーの護衛任務をこなさせることで、経験を積ませようという話ですね」

「その通りです。こんな状況だからこそ犯罪者や火事場泥棒が活動する可能性もありますが、流石に海上を進む聖王教会のタンカーをわざわざ襲おうとする者はいないでしょう。しかし万が一という事もあるので、タンカーが無事に陸地へたどり着くまで見張っておいてほしいのです。あとヴォルケンリッターの皆さんはここで騎士達の指導や指揮を執ってもらいたいので、はやてさんは一人で任務をこなさなくてはなりません」

「待ってくれ! 主はやてをお一人で向かわせるつもりなのか? 流石にそれは賛同しかねる!」

「いくら危険度が低いとはいえ、いきなりはやて一人に任せるのは危ないんじゃねぇか?」

「そうだ。せめて我らの内の一人でも同行させてほしい。俺達にも騎士としての誇りがある、主の危機は出来るだけ避けたいのだ」

「騎士としてだけではありません、私達はサバタさんから直々にはやてちゃんを頼むと言われています。その約束を違えてしまえば、指名手配の件と相まってサバタさんからの信頼を完全に失いかねません。そんなことは誰も望んでいないでしょう?」

「皆さんの仰る事はよくわかります。しかし――――」

「待って! まだ話は終わっとらん……最後まで聞いてから、私が判断するよ」

皆の反論を抑えると、渋々ながらも引き下がってくれた。皆が私を大事に想ってくれているのは今のやり取りで十分伝わってきたけど、それでは私自身が先に進めへんのや。

「ありがとうございます。……実はこの任務を達成すれば、はやてさんに聖王教会から正式に“准騎士”の階級が与えられるように騎士カリムと手を回しています。今のはやてさん達は俗に言うゲスト……古代ベルカの技術を持っていることで重要人物扱いにはなっていますが、それ以外では何の権限も持っていない状態です。しかし公的な立場を手に入れれば、管理局に対する発言権を小さいながらも得られるのです」

「ッ! つまり私から管理局に、サバタ兄ちゃんの指名手配撤回を意見することができるっちゅうことですか!」

「そういう事よ。だけど、いくらなんでも実戦経験皆無の人間に騎士の階級を与えるのは早計じゃないかって内部からの反発も多いから、それを黙らせて正式に認めさせるには、一度でもはやてさんが単独で任務をこなす必要があるの。もちろん、この場で任務を放棄しても構いませんし、ヴォルケンリッターの方々と一緒に任務を果たしても構いません。しかしそれだと反発の意見を抑える事が出来ず、准騎士の階級を授けられません。これは、私達からあなたに与えられるせめてもの選択肢……。だからやるかどうか選ぶのははやてさん、あなた自身よ」

「…………」

カリムとシャッハが私達のために密かに努力していた事を知ったことで、ヴォルケンリッターの皆から何も知らずに文句を言ってしまって申し訳ない気持ちと、私一人を行かせるしかない事に対する複雑な感情がリンクを通じて伝わってきた。しかし……ここまで手筈を整えるために二人も多くの危ない橋を渡ってきたに違いない。ならその期待に、私は……。

「受けるよ。私、タンカー護衛任務をやるよ」

「はやてさん……!」

「カリム達のおかげで総合的に見てローリスクハイリターンといううまい話やし、これほど実戦経験を積むのにちょうどいい任務はあらへん。皆心配なのはわかるけど、私なら大丈夫や」

「主……わかりました。主はやてがそうおっしゃるのであれば、私達は主の覚悟を見守りましょう」

「やるならちゃんと無事に帰って来いよな! 怪我とかしたら、はやてでも承知しねぇぞ!」

「もし怪我しても私が治療するから大丈夫よ。そのためにも、危なくなったらはやてちゃん自身の命を優先してね」

「ふむ……我らの主は兄上殿の背中に追いつこうとしているのだな。それなら俺も、その小さな背中を支えるとしよう」

皆の承諾も得られたことで、カリム達も安堵の息を吐いた。ともあれタンカーが今も移動しているというなら、意欲を示すためにもすぐ向かった方がええよね。

「では……ただいまより、管理局嘱託魔導師、及び聖王教会騎士見習い八神はやて、出動します!!」








突然やけど私が単独任務をすると聞いて、何か忘れている要素があるとは思わへんか? ……そう、動かなかった私の足や。いくらリハビリを多くこなしてきたとしても、4か月では微妙でまだ完治とは言い難いらしい。一応、車イスなしで日常生活を過ごせる程度には回復しとるけど、走るなどといった激しい動きはまだマキナちゃん譲りの身体強化魔法無しでは出来へん。マキナちゃんは腕に魔力を集中させて腕力を強化してきたから、そのノウハウを以前教わってから私の足に応用している。おかげで魔法が使える場所なら負担をかけず、普通の人のように走る事も出来るようになった。何年ぶりに走れた……あの時の感動は今もはっきりと覚えている。サバタ兄ちゃんに足を動かせるようにしてもらった時と同じく、自分の意思で自由に足を動かせていると実感したのは、それが二度目だった。

要するに何が言いたいかというと、私は身体強化魔法を足に常時使用する代わり、自由に動けるってこと。単独でも護衛任務ぐらいお手の物や。

「そのつもりやったんやけど……なんかえらくヤバ気な感じやなぁ……」

ミッドチルダ北東部の海上……雨が降る天候の中を飛行し、護衛するタンカーを発見した私は甲板に降りた直後、どうも船内の異様な気配に違和感を抱いた。カリム曰く、私が来るとの連絡を入れてあるから、タンカーに降りたら迎えを寄越してくれると言われてたのに、その迎えが来る気配が微塵も感じられない。そもそも雨天だろうと甲板上に人がいない事自体、異常だ。

「……なんだろ、嫌な予感がする……」

雨の滴が頬を濡らす中、ぽつりと呟く。今の内に様子がおかしいとカリムに連絡を取るべきかもしれへんけど、先に情報を集めてからの方がまとめて話せると思い、タンカーの内部を探ってみる事にした。実はこの時、私はサバタ兄ちゃんがこなしてきた潜入任務っぽい空気に対してドキドキしていた。それが危険であると、頭からすっぽり抜け落ちて……。

早速、すぐそばにあった船橋一階のバルブ式水密ドアの前に立ち、ハンドルに手をかけて回…………まわ……す……!

「ふんぬぬぬぬぬぬ!! うにゅにゅにゅ~~!! むぎむぎむぎむぎ!! フンガァー!! ……だ、だめや……力が足りなくて開かない……」

依然として閉まったままの扉から、まだまだ修行が足りぬな、と仙人じみた声が聞こえた気がした。……冗談や。

身体強化魔法を自在に使いこなせるマキナちゃんなら多分開けられると思うけど、コントロールが下手な私はまだ足にしか強化が施せないから腕力を強化出来ず、普通の9歳児の力しか引き出せへん。おかげでこの鋼鉄製の扉の前で、私は敗北に打ちのめされてorzな格好になる。夜天の書の主が、なに扉に負けとんねんって呆れられそうやな……。でも事実やもん。

「しゃあない……どっか開いてる扉を見つけなあかんな……」

気を取り直して扉の前から移動、高いところからなら見つけやすいと思って階段を上っていき、タンカーの側面を進んでいく。すると見た事の無い卵形とも円柱型とも言える奇妙な機械が複数、見回りのように浮遊しながらライトで照らして動き回っているのを発見した。ミッドチルダでは基本的に質量兵器は禁止されとるはずやから、アレは十中八九ろくでもない連中の所有物やろう。どこの誰の物か知らんが、犯罪者の物なら壊しても大丈夫やな。

クルセイダーの銃口から魔力ショットを放ち、例の機械の一つを背後から撃ち抜く。何の防御も出来なかった機械は穴を開けられて沈黙、しばらくしてから爆発する。その音を聞きつけて他の機械もやってくるが、見つけ次第こちらの位置がバレないように片っ端から倒す。結局、外を巡回していたのはたった数機だったようで、あっという間に機械を全滅させる事に成功した。

「ま、こんなもんやろ。私の溢れる才能の前じゃ、この程度の敵は楽勝や!」

そうやって勝ちどきを上げる私やけど、傍から見るとこの時の私は浮かれ過ぎていた。今なら何でもできると調子に乗っていたせいで、カリムへの連絡を怠ってしまったのだ。後にそれが命取りになるとも知らず……。
そんなこんなで意気揚々と開いてる扉の捜索を再開するも、無情にも開いてる扉は一つもなく、結局最初の地点に戻ってきてしまった。

「むむむ……こうなったら……! ……開け、ゴマ! 48273! エクメトテロエス! バルス!!」

ドゴォンッ!!

タンカーの操舵室が爆発した。思わず呆然とした私は、誰も追及していないのに冷や汗をかきながら弁護を始める。

「い、いや……ほんの出来心やったんよ? 私だって例の自爆呪文を唱えて、まさか本当に爆発するなんて思わんかったんや……。ほ、ほんとやよ?」

って何をしてるんや私は! 爆発が起きたっちゅう事は中で何かが起きとるって事や。頭を振って気持ちを切り替えた私は、飛行魔法を使って炎と煙に包まれている操舵室から中へ入る。操舵室を覆う炎は凍結魔法を使って消火していき、少し手間取ったが何とか鎮火させる事は出来た。しかし被害は楽観視できるものではなかった。

「うわ……これはちょっとマズいなぁ。舵やコンパスが完全に壊れて、タンカーの操縦が出来んくなっとる。爆発に乗組員が巻き込まれていないっぽいのは不幸中の幸いやけど、それなら彼らはどこに?」

とりあえずここにいても埒が明かない。一気に高まった緊張感の中、クルセイダーを構えて慎重に内部の探索を開始。船室、居住区、機関部を探ってみたが、所々に戦闘の跡が壁や床に残っており、タンカーで何かが起きている事に怖気を感じる。周囲を探ってもさっきの機械が巡回しているだけで、人の気配は一切なかった。となると船倉ぐらいしか残っていないから、階段やハシゴを降りていって海面より下のエリアへ入り込む。そこで見た第一船倉では、このタンカーの乗組員が全員捕まっており、護衛の騎士達が意識を失って倒れていた。

「これは……一体何が!?」

彼らを応急処置して事情を聞くべく、急いで近くにあったハシゴから降りて駆け寄ろうとするが、ふと人影が見えた事ですぐさま物陰に隠れる。青っぽいスーツを着た銀髪の少女がどこかに無線で連絡を取っているのを、耳を研ぎ澄ませて聞いてみる。

「……ドクター、潜入中に接触した人間は全て確保、抵抗戦力も無力化しました。目的であるレリックの確保は完了し、現在、トーレが艦長に例の物の在りかを尋問中です」

『そうか、よくやってくれた。尋問に気を取られ過ぎて、脱出が遅れないよう注意しておくんだよ』

「ファーヴニルの襲撃前にミッドチルダから脱出する事は忘れていません。ところで例の物がミッドにあった場合、回収は可能なのでしょうか?」

『ファーヴニルによってミッドが崩壊した後にアレが無事に残るかは運次第だけど、おそらく大丈夫だろう。なにせベルカの戦乱を終わらせた程の切り札なのだから。なんにせよアレを手に入れるためなら世界の一つや二つ、安いものだよ。まぁ、出来たらこの世界には生き残ってもらいたいけどね』

「そうですか。……どうやらトーレの方も艦長が観念したようで、じきに在りかが判明するでしょう。朗報をお待ちください」

『期待しているよ、私の大事な娘たち』

通信を切った彼女は、ふぅ……と一息入れた後、憐れむような目を壁の向こうの第二船倉へと向ける。その大きな隙を見逃さず、私は背後からクルセイダーを彼女に向けてバインドをかけながら言う。

「動くなっ!」

「…………ふむ、私としたことがうっかりしていたな」

「何を言うとるんか後で聞くとして、そのままゆっくりとこっちへ向くんや」

バインドのかかった状態でも手足だけは動くため、彼女は器用にこちらへとその姿をさらした。彼女の手にあるナイフが気になるが、今の状態では振るう事も投げる事も不可能だろう。

「あんた、何者や? ここで何しとる? どこに連絡しとった? この人達を捕えたのはどうしてや?」

「……照準がブレているぞ、初陣の人間に見られる特徴だ。どうやら新米らしい」

「その初陣の人間に捕まっとるあんたは、むしろ新米以下って所やね。それよりさっきの質問に答えてもらおうか?」

「ふ……自分が優位に立っていると思い込んでいるのは、実に滑稽だ」

彼女がパチンッと指を鳴らした直後、爆発音と共にタンカー全体がいきなり激しく揺れる。咄嗟にバランスを整えようと踏ん張るが、彼女が手に持っていたナイフを翻した直後に発砲音が発生する。

仕込み銃(スカウト・ナイフ)!? うっ!」

左肩に当たった銃弾はバリアジャケットの防御で弾かれたため、傷を負う事は避けられた。しかし衝撃は伝わったせいで私の身体は後ろに軽く吹き飛び、バインドが解除されてしまう。急いで態勢を立て直し、彼女の動きに警戒しようとしたら、いつの間に接近されたのか首筋にナイフが添えられた。

マズい……捕まえたつもりが、逆に捕まえられてしまった。屈辱的や……!

「なるほど、試しに使ってみたが魔導師相手では威力不足だったか。しかし不意を突く手段としては有用だな」

「ゆ、油断した……まさかナイフから発砲するなんて……」

「前に魔法無しでトーレを投げた者との戦闘以降、個人的に地球の戦術に興味を持ってね。仕込み銃はスぺツナズのものだが、やはり一番気に入っているのは……っと!」

話している最中に形勢逆転を狙い、即座に立ち上がってクルセイダーの銃口を向けようとしたら、彼女は素早い動きで私の腕を掴んで引っ張る。前のめりによろけた私を彼女が全身をひねって腕を振るい、柔道のように私の身体が宙返りさせられ、仰向けで床に勢いよく叩き付けられてしまう。背中からの衝撃で肺の空気を無理やり吐き出させられ、酸欠で意識が飛びかける。しかし……私を再び劣勢に追い込んだ彼女の動きに、なぜか見覚えがあった。

「ぐはっ! ……な、なんで……その、動きは……!?」

「CQC……彼も使っていた近接格闘術だ。彼の近い位置にいたおまえなら、よく知っているだろう?」

「そんな……なぜ、あんたが……!」

「今の時代、探せば教本ぐらい見つけられるという事さ。まだ完全には使いこなせていないのだが、それより……おまえを連れて行けば使い道がありそうだ」

「ッ! ……やらせん、やらせはせん……! スプレッド!」

「ぬっ!?」

悪あがきに近い形でクルセイダーに溜めた魔力の塊を突き出し、危険を察知した彼女は後ろへ飛びずさる。さっきのCQCの影響で平衡感覚が乱れたままだが、彼女の拘束から解放された私はふらつきながらも立ち上がり、決死の表情で彼女を睨み付ける。

「私は……私は捕まるわけにはいかへん……! こんな所で……くたばってたまるかいな!!」

「……ほう? その歳で中々の根性……面白い。だが……齢9歳の小娘ごときの意地と覚悟だけで全てが上手く行く訳が無い。確かに魔導師としては破格の才能を持っている……しかしそれは管理局が定めた基準でのエリートなだけで、実際の戦場で生き残るための能力や資質は全く備わっていない」

「なんやと……!?」

「周囲の警戒もおろそか、仲間意識が強すぎて罠を警戒しない、近接格闘術の一つも身に付けていない、魔法頼りの本局流戦術しか出来ない。それでは本物の戦場で生き残れないぞ、夜天の主?」

「な……どうしてそれを!?」

「そもそもおまえは能力的に見て接近戦に向いていない、どちらかと言うと遠距離向きだ。騎士や仲間を動かして都合の良い状況を作り出し、敵を追い込んだ所におまえの殲滅魔法を放つ、というようにな。彼に憧れるのは勝手だが、自分の役割をまずは認識してもらわねば、おまえ達はファーヴニルに対抗することも出来ず、すぐにこの世界は崩壊する。ドクターのためにも、おまえ達にはこの世界を守り抜いてもらわねば困るのでな」

「ドクター? そいつは一体……うぐっ!?」

みぞおちに強い衝撃が伝わり、私は為すすべなく第二船倉の境にある壁に激突、床に崩れ落ちる。意識が薄弱となる中、今の攻撃をした紫の髪の女性が、ため息をついて銀髪の方に何かを伝える。

「少し話し過ぎだ、チンク。タイムリミットだ」

「トーレか、すまない。少々思う所があった故、つい手心を加えてしまった」

「そっか……この娘は彼が守ろうとした者の一人だったな。私としては彼ともう一度会えたら、今度は正々堂々戦士として再戦を挑みたい。兵器であるはずの私達がそう思う程、彼との戦いは実に有意義なひと時だった」

「ああ、だから彼が守るに相応しい人間なのか、少し試させてもらった。この先ファーヴニルと戦って生き残れるかどうかは本人次第だが、それより……例の物の在りかは訊き出せたか?」

「ああ、アレは案外近い所にある。奴らの懐に置いてあったという事さ。……ところで、殺さず捕まえておいたコイツらはどうしておく?」

「放っておいても大丈夫だろう。私のISによる爆破で一度目はタンカーの操縦系統、二度目はエンジンを破壊した。目を覚ました所で、既に脱出している私達を追っている場合ではない。まぁ、いざという時の人質にと考えてはみたものの、やはり無闇に殺すのは私達の性に合わん」

「だな。ところで監視しておくのに丁度良い魔導師がいたら、チンクが預かってるアレを刺しておけってドクターに言われてたんだっけか?」

「なら丁度良い、このドクター製試作ナノマシンは彼女に刺しておこう。念話の傍受や戦闘能力、生命反応などを知らせてくれるから、ドクターだけでなく私達にも都合が良い。それに後の戦いに生き残れば彼女は必ず大成する、管理局の作戦内容を盗聴するのにも役立つはずだ」

「まぁ、ぶっちゃけこの先ずっと盗聴される事になるこいつにはすまないと思うが……ドクターの夢のためだ。恨まないでくれよ」

その後、何か注射のようなものが首に刺さる感覚だけ脳に伝わるものの、意識を失っている私の意識には情報が届かず、紫の髪の女性が何をしたのか知る事が出来なかった。そして為すすべなく彼女達を逃がした私はそのまま闇の眠りに誘われ、深淵へと落ちて行った……。

こうして私の単独での初任務は失敗、敗北に終わった。……哀しい、悔しくて……哀しいなぁ……。

 
 

 
後書き
原作にも都合がいい内容がありますし、たまにはごちゃごちゃせず、プレシアさんの説教一発でまとまったっていいですよね。というかこれ以上、ごちゃごちゃし過ぎると物語が進まなくなります……。

MGS2 タンカー編もどきなルートを通ったはやてですが、明確な敗北を味わった人間はくじけなければ強くなるものですよ。ちなみに3番と5番はとある方法で経歴を知ってからサバタに尊敬の念を抱いています。
 
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