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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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別離

 
前書き
遅れてすみません。
パソコン画面が壊れてしばらくの間、執筆できませんでした。
こんな大事な時期に壊れるとかなり焦りますよね……。


配置移動の回 

 
Private Military Company、略してPMC。意味は民間軍事会社で、過去に存在した傭兵とは異なり、軍事をサービスとして提供する“企業”としての面が強い組織だ。管理局とは思想や理念が根本から異なるため、下手したら真っ向から対立しかねないが、そもそもこの地球は管理外世界。本来、彼らが介入できる場所では無い。そのため、連中から追われる身となった俺達が身を隠すには、まさに絶好の隠れ蓑である。

ウェアウルフ本社の近くまで行くと、誘導用ライトがヘリポートに照らされ、そこにラプラスを着陸させる。タッチダウンを確認してエンジンを止めてから降りた俺達は、リキッドの連絡を受けて待機していた女性に社内へと招かれた。

「お話は伺っております。こちらの部屋をご自由にお使いください」

案内を終えた事で彼女は本来の業務に戻るべく立ち去って行った。俺達は扉を開けて、高級マンションに近い様式の部屋へと足を踏み入れた。するとレヴィが部屋に置いてあったソファに頭からダイブして、はしゃぎ出した。

「わ~い! ふっかふかだぁ~♪」

『おぉ……ちょっと力を加えるだけで手が沈むよ。触ってるだけですっごく気持ち良いや』

「クッションも、とてももふもふしてる。しばらくこうしていたいかも……」

「とりあえず、ここが俺達がしばらく暮らす部屋だ。会社に住むというのは珍しい体験だが、住めば都、じきに慣れるだろう」

むしろ彼女達は慣れるどころか、もう思いっきり堪能している気がする。これが若さか……。

カーテンを開けると窓の向こうにはアメリカの大都市が広がり、海鳴市やミッドとはまた異なる文化の大地を目に出来る。だが、この光景が仮初めの平和である事を俺達はよく知っている。静寂の獣ファーヴニル、人形使いラタトスク、今この世界の外ではその二体の怪物が破壊の限りを尽くそうとしているのだから。もちろん、すぐにでも奴らを葬りたい気持ちはあるが、今の俺では全力を出せず、死力を尽くせない。それでは奴らを倒す事は出来ない、焦って向かう事はただの自殺行為なのだ。

「やれやれ、世の中はどこまでもままならんものだな……。……ん?」

リビングの片隅に目を向けた俺は、鞘に納められた二振りの刀が置かれているのを見つける。何故こんな所に刀が……?
近寄って手に取り、刃を抜いてみると刀身に青い稲妻が走る。これはかなりの業物を高周波ブレードに改造した見事な代物で、まさに戦うため、敵を倒すための武器であった。傍に置いてあった便箋を読むと、この刀はリキッドからの餞別で、銘を“民主刀”と“共和刀”と言い、元大統領が使っていたのを回収したモノらしい。元大統領の所有物という貴重な業物をどうして、と一瞬思ったが便箋の続きには、回収したはいいが誰も使わないから有効活用できそうな俺に託す、と書いてあった。
リキッド……あいつ、いらない在庫を押し付けてきたな。しかし俺には暗黒剣があるから、別の剣を手にする気はない。マキナは“レックス”のハンドガン形態で十分近接戦は対応できるし、レヴィの“バルニフィカス”は元から近接武器だ。となれば、ここにいる面子の中で唯一武器を持っていないシャロンに渡すべきだろう。と言っても自衛のために一応持たせはするが、彼女に使わせる気はさらさら無い。血で汚れるのは俺一人で十分だ。

「シャロン、少し話がある」

「話? どんな内容なの?」

「内容自体は単純だが、おまえにとって重要な話だ。……シャロン、この刀を身に付けておいてくれないか?」

「か、刀……!? なんでそんなものを…………もしかして、私も戦えと言いたいの?」

「そうじゃない。単にもしもの時に備えて、自分の身を守れるように持っていてほしいだけだ。別にシャロンが自ら戦う必要は無いし、戦わせるつもりもない。それは俺の役目だからな」

「サバタさん……でも……」

「確かに普通は武器を持つ事に抵抗を抱いて当然だ。しかし万が一という事もあるし、追い詰められた状況で抵抗する力が無ければ、敵に良い様にされてしまう。今の俺達は管理局に追われる身だから、もし捕まればどうなるかわからない……いや、“裏”の事も考えると間違いなく殺される。そんな事にならない様に、せめて護身用に持っておくだけで良いんだ」

「そっか………そう……だよね。次元世界のどこにも私達の居場所は無い……この避難所(ヘイブン)しか身の拠り所が無い。だから身を守る力が必要なんだよね……」

目を閉じて今の自分達の状況を改めて理解したシャロンは、しばらく俯いてから一つの決意を固めた表情で刀に手を伸ばし、しかと受け取ってくれた。だが心優しい彼女に武器を渡す事に、俺も少なからず罪悪感を抱き、シャロンの身を守ってくれる何かを渡しておかないと気が済まなかった。何かそういう代物を持ってなかったかな…………、……あった。

「シャロン、これをやる」

「これは……お守り?」

「とある巫女から貰った、渾身の一品だ。かなり強力な神力が込められていて、悪運の強い俺も随分世話になった。きっとシャロンの身を守ってくれる」

「そんな大事な物を……ありがとう。絶対、大切にする……!」

両手でお守りを包むように握り、シャロンはニダヴェリールを出てから初めての笑顔を見せてくれた。少しでも彼女の心を落ち着かせる事が出来たか……。

さて……今後もここに身を匿うためにも、通信で話したリキッドとの契約を果たさなければならない。と言っても次元世界や魔法の情報を送るだけなのだが、どうせなら後でこれらも送っておこう。ニダヴェリールのヴェルザンディ遺跡最深部で見つけた太陽結晶……DARPAの高い技術力なら、この世界の太陽銃を作れるかもしれない。それともう一つ、かつてアレクトロ社に潜入する時に使ったスニーキングスーツもついでに送っておく。なんか擬態とかが出来るスーツのような面白い物が出来るかもな。……さて、いい加減情報をまとめよう。

「……ミッドチルダ……ベルカ……次元世界……時空管理局……魔導師……魔法……デバイス……。それぞれに詳細な説明を加えて……あと管理局の政治体制について考察も含めて、と」

まぁ、暗黒物質に管理局が恐れを抱くのは想定し得たから、指名手配された事は大して予想外でもない。それに俺の寿命はもう風前の灯火、手配されなくともすぐ終わりを迎える運命だ。だが今はマキナとシャロンの立場が危ういままだから、ラタトスクとファーヴニルの件は別として、少なくともそれを放置したまま逝く訳にはいかない。いざとなったら、先が無い人間にしか出来ない奥の手を使わせてもらうさ。

「ああ、それと太陽結晶を送った理由を捕捉するために、俺達の世界についても書いておこう。世紀末世界……暗黒物質……イモータル……エナジー……絶対存在……そして太陽銃。…………ふぅ、情報の整理って結構面倒くさいな」

こういう事務作業は少し苦手なんだよ……どうせなら身体を動かしていたい。そうして昼過ぎまで時間をかけて情報をまとめ、リキッドにようやく送信し終わった事で、肩を回してコリをほぐす。一息つくべくコーヒーを淹れようとしたら、ふと周りが静かな事に気が付いた。

「すぅ………すぅ……」

「すぴー……すぴー……」

「あぁ、そういえばヴェルザンディ遺跡探索から夜通し動き続けて休む暇も無かったな。そりゃあ眠くもなるか」

リビングで寝息を立ててシャロンとマキナは互いに寄り添うようにベッドで寝ており、レヴィはソファの上でだらぁ~っと全身を伸ばして眠っていた。そのありふれた穏やかな空気は、俺の精神に安らぎと癒しを与えてくれた。……用事も済んだし、俺も疲れが溜まってるからコーヒーを飲んで休憩しよう。

インスタントコーヒーを一口飲み、テーブルに置いてある閲覧用の資料の中に、VR訓練の内容が書かれている物があり、ちょっとした興味本位で読んでみる。“スニーキングミッション60”、“ウェポンミッション80”、アドバンスド……なるほど、この辺は基礎とある程度の応用範囲で訓練を行うらしい。他の資料を手に取ると、そこにはとある兵器の操縦系統の訓練内容が書かれていた。……最初はわからなかったが、この資料はアレの操作をVR訓練で学ぶ奴か。役に立つかわからんが、とりあえず覚えておこう。

今日はもう疲れてるから休むが、明日辺りマキナ達と気晴らしに出かけでもするか。命を管理局に狙われてはいるが、この世界でも追われている訳では無い。ここは自由の国アメリカ、世界は異なるが俺やジャンゴ達が住んでいた土地でもある。こちら側の世界が暗黒物質に汚染されていないと知ってから常々、一度は来てみたいと思っていたんだ。マンハッタンのフェデラルホールやエンパイアステートビルのように、アメリカには多くの見所がある。それと、アメリカの通貨は円じゃなくてドルだが、暗黒カードから両替で引き出せるから全く問題ない。

「むにゃむにゃ……おかわりぃ~……」

「…………はぁ」

レヴィの寝言を聞いて、一気に力が抜けてしまう。が、それでいいのかもしれない。本当なら次元世界全体が危機的状況なのだが、俺達の間には世界の危機を感じさせない、至極和やかな空気が流れていた。今は……今だけは、この小さな平和を噛み締めておきたい。これが俺に与えられた……最後の平穏なひと時となるかもしれないのだから……。

・・・・・・・・・・・・・・・・

~~Side of フェイト~~

今朝、リンディさんからいきなり重要な報告があるって言われて、私の他にアルフ、なのは、はやてとヴォルケンリッターといった魔法関係者全員がアースラの艦長室に集められた。なお、恭也さんや士郎さんは管理局の関係者じゃないという事で呼ばれず、母さんは勤務先の技術室からモニター越しで会話が届くようになっている。それで姉さんもそこにいるんだけど……昨日の夜から何かを感じているのか、ずっとそわそわしてて落ち着かない様子でいた。

「とりあえず……これで全員集まったわね?」

「一昨日の置き手紙でリインフォースとサバタ兄ちゃんが出かけとるから、二人はおらんけど。でもわざわざこの面子で集まるなんて、通信や念話を介してる場合じゃない程の事なんですか、リンディさん?」

「ええ……それも超重大の報告よ。私達のよく知る彼が……サバタさんが……」

「サバタさんが……どうかしたんですか?」

「なのはさん……皆も落ち着いて聞いて。……本日未明、時空管理局が暗黒少年サバタを、SSS級討伐対象として指名手配しました」

「え……!? ちょっとリンディさん、性質の悪い冗談を言わないで下さい! お兄ちゃんが討伐対象だなんて、おかしいじゃないですか!!」

「そうだよ! サバタはこれまで何度もフェイトや皆を守ってきたじゃないか! それが一体どうしてそんな事になってるんだい!?」

突然知らされた意味不明な報告に、私とアルフはたまらず非難の声を上げ、はやて達も同様に怒りを示していた。私達に道を示し、愛を注ぎ、前に進むために背中を押してくれたお兄ちゃんが殺される筋合いなんて全くない! それなのに管理局がお兄ちゃんを殺そうとするなんて……! どうして……! 私達が進もうとした道は、お兄ちゃんと決別するために選んだんじゃないのに!

『リンディ……原因は暗黒物質ね?』

「恐らくは。プレシアさんが今仰ったように、管理局が彼の命を狙うとしたら、魔法を消し去る性質のダークマターを上層部が危険視したからに違いないでしょう。そしてそれを操れる彼の力は、魔法の力を最上位に置く管理局の体制において“あってはならないもの”。故に彼を抹殺し、魔法の絶対性を保持しようとしているのです」

『そんなのおかしいよ! 力に絶対なんて無い、使う側次第で善にも悪にもなるってのに! ……だってさ、これまでの事を思い返してみて? “太陽の使者の代弁者”となっても、私はお兄ちゃんが暗黒の力を使う事を止めなかった。人を滅ぼし、魔を喰らい、太陽とは相反する力なのに、それを使うお兄ちゃんを敵だとは一切思わなかった。同じく暗黒物質を操るイエガー社長……イモータル・ロキは敵だとはっきり感じたのに。同じ力を使っている両者に対する、この感じ方の違いはどうして生まれたのか、それは皆もとっくに気づいているでしょ?』

「その通りだ。僕達が使う魔法とは違って非殺傷設定が存在せず、人を殺す事に特化している暗黒の力を、サバタは皆が生きる未来のために振るってきた。対してイモータル・ロキは人類を破滅に導こうと策を講じてきた。魔法でも同じだ、強盗などの犯罪に使う人もいれば、僕達のように治安維持のために使う人もいる。だから僕達はサバタを脅威とは思えず、P・T事件の時は敵の力を使える暗黒の戦士で僕達の協力者だと報告した。そう、僕達は彼の事を敵じゃないと報告した……そのはずだった。けど残念ながら、上層部は違ったらしい。だからこの件は、彼の事を管理局に知らせた僕達にも少なからず責任がある……」

『つまり今のサバタは以前の私と似たような境遇に陥っている訳だけど、彼の事だからかつての私のようにはならないでしょう。それに本人と接した事のある人は、間違いなく全員この話がおかしいと気づいてるはず。と言っても流石に彼がどんな人達と会ってきたのか、全ては把握できないわ。ただ……私達以外で彼を信じている者がいれば、その人は本人と会っている可能性が限りなく高い。少しでも彼と接した事があれば、彼が指名手配されるような事をするはずが無いと分かるもの』

母さんの説明に私達はすごく納得できた。何が起きてもお兄ちゃんは決して自分の意思を曲げる事が無い。ヴァナルガンドの時も、SEEDの時も、最後まで諦める気は微塵も起こさなかった。それほど強い信念を持って人らしく生きているお兄ちゃんの背中に、私達を始めとした多くの人が惹きつけられた。だから管理局に指名手配された所で、お兄ちゃんの有り方に影響はあまり無いと考えられる。

じゃあ……お兄ちゃんを敵と認識してしまった管理局にいる私達は、これからどう選択するべきなのだろう? 母さんと親子の関係をやり直して、私が幸せを掴めるように……ヴォルケンリッターが闇の書としてしてきた過去の行いを、はやてと共にケジメを付けられるように……。そうやって私達に選択を促してきたのは、お兄ちゃんだった。私達が私達の心のままに生きられる道を選べるようにしてくれた。

それなのに彼を倒すだなんて、そんな恩を仇で返すような真似は出来る訳が無い。だけど今の私達の立場が、それを受け入れてくれない。平穏な生活を営むために、これから悲劇に苛まれる多くの人を救うために、私達が選んだはずの道が今、どういう訳か彼と敵対する事を強いてきている。

…………ふざけるな。お兄ちゃんが私達を救ったのに、救われた私達がお兄ちゃんと敵対する? そんな理不尽、あっちゃいけないんだよ。お兄ちゃんは自分に何があろうと、選んだ道を進むように言ってくるかもしれない。でもね……望んだ道を進むには、その根本たる信念が存在していなければならない。信念が無ければ、進む力も湧き上がって来ない。見守ってくれるお兄ちゃんがいなければ、私達は望んだ道を進もうと思わなくなるんだ。

だから……。

「私は……戦えません。私達家族を救ってくれた人と戦いたくありません! 管理局が戦えと言って来ても、私にはどうしても出来ません……! 魔法を捨てろと言うなら捨てます、だから私にお兄ちゃんと戦わせないで下さい!!」

「私も……フェイトちゃんと同じや! 例え贖罪のためと言われても私達には絶対出来へん! サバタ兄ちゃんはずっと一人だった私に光を与えてくれた、愛を与えてくれた、幸せを与えてくれた、家族を与えてくれた。そんな大事な家族と戦える訳あらへんわ!!」

「私も……ジュエルシードの被害から守るために、戦う者としての心意気を自覚させてくれた。それに偶然が重なった事もあるんだと思うけど、私達の所にお父さんが帰って来れたのはサバタさんの力があったから。フェイトちゃんやはやてちゃんと同じように、サバタさんがいなければ家族を取り戻せなかった。私だって、あの人とは戦いたくないです」

私の意思表示に、はやてとなのはも続いてくれた。二人だけでなく、姉さんやヴォルケンリッターも同様のようで、無言ながらも頷いていた。だけど問題はある……なのはは別として、テスタロッサ家は母さんの事で、八神家は闇の書の事で贖罪をしなければならないのもあって、下手に命令拒否すればせっかくお兄ちゃんが作ってくれた立場が危うくなる。それにクロノとリンディさん達アースラクルーも正規の管理局員だから、立場上命令拒否はマズいらしい。

つまり今の私達は、彼が用意してくれた自由と彼自身の命を、管理局によって天秤にかけられている訳だ。どちらかしか選べないなんて……そんなの不条理過ぎる。だけど……お兄ちゃんとは戦わない、絶対に。例え再び自由を失おうと、お兄ちゃんを失うよりはきっと良い。そう思ったからこそ、私はこの道を選択した。

「皆、彼と戦いたくない気持ちは十分伝わってるわ。私だって彼と敵対なんかしたくないもの。けど、話はこれで終わりじゃないの。第66管理世界ニダヴェリールで、絶対存在ファーヴニルが目覚めたわ」

「絶対存在!? ヴァナルガンドと同じ化け物が!?」

「ああ、しかもそれを行ったのは聞いた時点で予想が着くと思うが、ラタトスクなんだ。なのはの父親を操り、ジュエルシードの輸送船を襲い、すずかをさらい、ヴァナルガンドをこちらに呼び寄せた因縁のイモータルが、とうとう世界を破壊する程の絶大な力を手に入れてしまった。現にニダヴェリールはもう崩壊、消滅してしまったとの報告が入ってる」

「そんな……あいつの策が成就してしまったの!?」

「そうだ……しかもヤツは管理局員を始めとした次元世界の人間をアンデッド化して操り、封印を解いたらしい。更に言うなら、ラタトスクは“裏”に通じる欲深い管理局員の欲望を助長させたぐらいで、途中まではあまり自分の手を使っていないそうだ。腹立たしい事だが、要するにラタトスクが介入しなくてもファーヴニルはいずれ次元世界の人間の手で封印を解かれていた可能性が高いんだ」

『そっか、昨日から感じていた寒気はファーヴニルが目覚めたのが原因だったんだ。それにしても……人間って、どうしてここまで愚かなの? なんか私自身としても、太陽の使者の代弁者としても、人間に対して自信が無くなってきたよ……』

それは下手をしたら人間が太陽からも見捨てられる事を意味するため、背筋に冷たい汗が流れた。いくら太陽意志が寛容だからと言っても、流石に限度がある。それにあまりに愚かな振る舞いをし続けてしまえば、銀河意思ダークが本格的に介入してしまい、次元世界は世紀末世界と同じになってしまう。それを避けようとお兄ちゃんやエレンさんは戦ってきたのに……!

「命を見守る立場のアリシアちゃんがそこまで言うって事は、サバタさんが知ったら人間に対して絶望を抱きかねないわ。もしそうなってしまったら……!」

「シャマル……兄上殿はそう簡単に絶望したりしないはずだ。我らや主はやてをお救いになった兄上殿が、人間を見捨てるはずが無い!」

「うむ、シグナムの言う通りだ。兄上殿の芯の強さは、盾の守護獣としても認める程……容易く砕けはせん!」

「そうだよな……そうだよな! 今頃兄ちゃんはどこかで反撃のチャンスを伺ってるに違ぇねぇ! 兄ちゃんの知り合いがいるラジエルもきっと頑張ってるだろうし、指名手配の事も絶対存在の事も、今までのように解決出来るって!! なあ、はやて!?」

「せやな! 皆の言う通り、サバタ兄ちゃんなら大丈夫。それに今はリインフォースが兄ちゃんの傍におる、もしマズい事態が起きたらすぐに連絡してくるはずや。(せやけど……やっぱり懸念が出てくるなぁ。サバタ兄ちゃんを信じとる気持ちは本物なのに、どうしても上手く行かなかった時の事を想定してしまう。……今の内にカリムの預言の事、皆に伝えとくべきやろうか? いや、これ以上物事をややこしくしたら皆混乱して動けへんようになる。黙ってるのは辛いけど預言の事は八神家で何とかしよう。私達で何としても、サバタ兄ちゃんを守るんや!)」

傍から見てると、やっぱり八神家は相変わらず団結力が凄いな。以前は私とはやて、お兄ちゃんの3人でくくられてたけど、今はそれぞれ別々のコミュニティを持っている。私はテスタロッサ家に戻り、はやてはヴォルケンリッターを受け入れ、お兄ちゃんはエレンさん達ラジエルクルーが味方になっている。でも……一時期共に暮らして培った絆は今も消えていないはずだ。

「サバタの事は今度本人を交えて対策を練るとして……現在、本局でファーヴニルへの対策が進められているわ。でも各管理世界への伝達が遅くて、上手く防衛陣を組めていないみたい。例外はニダヴェリールにほど近い座標の世界なんだけど、こちらはラジエルが主体となって素早く防衛陣を組んだそうよ」

「もう準備出来たのか!? まるで独自の情報網を持っているぐらいの速度だが、それでもラジエルの人達は本当に優秀だな……。それに比べて、相変わらず管理局の対応速度が鈍重なせいで、余計な被害が増えてしまう! 少しはラジエルを見習ってほしいものだ!」

何と言うか、組織のデメリットを今まさに目の当たりにしている気がする。対応が遅い本局に、クロノがもどかしく思って憤慨する気持ちもよくわかる。実際、私達も呆れるほどだもの。

「ラジエルはこのまま防衛陣を拡げていって、管轄内の被害を最小限どころか皆無を目指して行動しているわ。一方、本局を中心とした防衛陣は本局とミッドチルダ地上本部との連携が上手く行かず、作業が難航しているとの連絡が入っているの」

「こんな状況なのに、どうして同じ組織の人間として一丸となって立ち向かえないんだろうな……。地上本部は一体何を考えているんだ?」

『多分……地上本部がせっかく育てた局員を、本局が引き抜き過ぎた恨みのツケが回ってきたんだと思うけど……』

管理局の情勢はまだ私もよくわかってないんだけど、母さん達がぼやいた言葉から察するに、本局と地上はあんまりいい関係じゃないみたい。このままじゃ、絶対存在とイモータル相手に勝てる訳が無いよ……。

「そして今の話を知った後に伝えるのも何だけど、管理局所属の魔導師は全員ミッドチルダへ集まるように指示が出ており、私達アースラは現在、ミッドチルダへ急ぎ向かっています」

「道理でアースラが動いてたんですね。でも全員に指示が出てるって、さっきの話を聞く限り、ラジエルの方の防衛陣に参加している管理局の魔導師もいるようですけど?」

「それはまぁ、仕方がない所もあるわ。指示の伝達が遅かった事もあるし、ミッドに集合しろって言われても故郷を優先したい人もいるし、今いる世界を守りたいと思う人もいる。流石に管理局も、自分達の守りたいものを差し置いて無理やりミッドを守れとは言わないわ」

「人間、誰しも優先順位があって当然だ。今の状況は全次元世界規模の危機だから、誰もが管理局の命令を優先出来る訳でもない」

そういう意味では私達は地球に留まって防衛陣を敷いた方が良いのかもしれない。ラタトスクはミッドより先に地球を狙う可能性もあるから、今の内に守りを固めておくという方法も考えられる。だからと言って、ミッドの人達を見捨てたくない。それに戦いの場がミッドチルダなら、そこで逃がさずに決着をつけてしまえば、他の世界に危機が及ぶ事は無い。もし最初から地球で戦う事になったとしても、全速力で駆け付ければいい。

絶対存在とイモータルとの戦いにお兄ちゃんがいないのは心細いけど……これは私達が乗り越えなければならない戦いなんだ。

『……私達は有無を言わさず、こうして連れて行かれてるけどね。せめて許可ぐらいもらってからミッドに行ってもらいたいよ』

「すまない、アリシアの言う通りだ……。こんな形で連れて行ってる辺り、かなり強引で申し訳ないが……今は一人でも多くの戦力が必要なんだ。傲慢な姿勢で本当に悪いが、事態の解決に力を貸してもらいたい」

『ま、相手は絶対存在とイモータルだし、別に拒否したりはしないよ……でもね、その代わり! 管理局が発行したお兄ちゃんの指名手配の件は、ちゃんと撤回して謝ってもらうからね!!』

「心得た。元より僕達も事態が解決次第、そのつもりでいる。罪もない人間を罰するような事、法の守護者である管理局がしてはならないんだ」

姉さんがクロノに約束を取り付け、彼の返答を聞いた私達はひとまずの覚悟を決めた。ここで頑張ればサバタさんの指名手配を撤廃できる、そうすれば私達が彼から受けた恩を少しでも返せる。なんか……まんまと乗せられてる気もするが、目的が果たせるのならそれでも構わない。覚悟を決めた私はバルディッシュを取り出して、静かに頷いた……その時! いきなりアースラ艦内に警報が鳴りだし、艦全体が激しく揺れ始めた。

『緊急連絡! 艦長、急激に次元空間内の魔力素が消失、吸収されています! ファーヴニルの位置は第66管理世界ニダヴェリールのあった座標から移動していませんが、周辺の世界では既に魔法が使用不可能になっています!!』

「なんですって!? エイミィ、それは確かなの!?」

『マジもマジ、大マジです! 現在、アースラを始めとした全ての次元航行艦の魔導炉からもエネルギーを奪い取られているとの報告が次々と入っています! しかも本局も他の世界に墜落しないように現状維持で精一杯との事です!!』

アースラのオペレーターにして、クロノの補佐官であるエイミィにブリッジからとんでもない事を伝えられ、リンディさんが驚きの声を上げる。突然の情報に驚いたのは私達も同様で、この緊急事態に否が応でも緊張が走る。

地球から発進してそれなりに時間が経っているから、アースラの現在位置はむしろミッドに近い。逆にニダヴェリールの座標はミッドよりも地球に近いから、吸収の影響も小さいはずだった。しかし離れていても驚異の吸収速度であるため、このままエネルギーを全て吸い取られでもしたら、次元空間内で漂流する事になってしまう。そうなればいくら魔導師でもまともに戦える環境ではない。つまり戦う前に敗北が決定してしまうのだ。

「止むを得ません、予備の魔導結晶の使用を許可します! 次元空間内でエネルギー切れを起こされては、戦いにもならないわ! 急いで!!」

『とっくに面舵一杯、全速前進で向かっていますよ! この速度でいけば400秒後にミッドチルダへ到着します!!』

「400秒……予備を全て使っても厳しいわね……! 総員に通達、本艦所属の魔導師は直ちに魔導炉へ魔力を注いでください! このままでは次元空間内で身動きできなくなるわ、急いで!!」

『了解!!』

リンディさんの指示を受け、一瞬でアースラは緊張に包まれた。リンディさんとクロノは指揮官でもあるが私達と共にアースラの魔導炉の前まで行き、先に待機していた武装隊の人達と同様にデバイスを取り出す。

「吸収の影響でコントロールが難しくなっていますが、とにかくがむしゃらに魔力を注いでください。そうすればミッドチルダへ確実にたどり着けます!」

リンディさんの一言を合図に、この場に集った全員が魔導炉に自らの魔力を注ぎ始める。私も実際に送ってみてわかったのだが、確かに遠く離れた所にいる圧倒的な存在へ、アースラの分厚い装甲を通り抜けて魔力が吸収されている感じがした。それに負けじとアースラの魔導炉に私達の魔力を送り、無事に地上へたどり着けることを祈った。

ちなみにはやては魔法術式の記録と発動媒体の“夜天の書”と共に、魔力制御の補助に特化するようカスタマイズされた銃型デバイスの“クルセイダー”を同時使用している。“クルセイダー”はサルタナさんが魔法の制御がまだ上手くないはやてに、急場しのぎとして与えた少々古いデバイスだ。しかし頑丈さで言えばアームドデバイスのカートリッジを使用した攻撃もヒビ一つ入れずに受け止められる程で、確かな信頼を預けられる逸品である。と言ってもあくまで急場しのぎのため、現在製作中の専用アームドデバイス“シュベルトクロイツ”が完成するまでの間だけ使う事にしているらしい。

「しっかしこのデバイス、持ってみるとわかるけどめっちゃ重いんよ……。おかげでこう長時間同じ姿勢で構えてると腕が辛いわぁ」

「重い、か……。不便かもしれないけど、それはそれで良いデバイスなんじゃないかな?」

「え、どうしてフェイトちゃん? 普通、デバイスは軽い方が戦いやすいよね?」

「なのはの言う事は分かるよ。それが当たり前だし、実際、私のバルディッシュやなのはのレイジングハートは割と軽量型だからね。だけど……軽ければ良いのかって、ふと考えた所がある。もちろん生き残るためにデバイスを扱いやすくするのは大切だよ? でもね、使いやすくし過ぎたせいで、大事な事を忘れてしまうんじゃないかって、ちょっと危惧もしてるんだ」

「大事な事?」

「デバイスに限らず武器が軽かったら、魔法の発動時にその行動の意味をあまり考えないと思う。考えてる時間が無いからね。だけど重かったら、今この魔法を使うべきか……冷静に見ればもっと適切な方法があるんじゃないか。そうやって一つ一つの行動を大事にして、意味をしっかり考えられると思うんだ」

「あぁ~、フェイトちゃんの言いたい事は何となく私もわかってきたで。前にサルタナさんから、潜入任務に限らず戦場ではたった一回のミスで仲間を巻き込む大きな危機を招くって教わったし、要するに自分の行動の結果を常に予測して動けっちゅう事やね?」

「うん、大体そんな感じ。特にはやてのような広域殲滅魔法を使える人には、この考え方はかなり大事だと思ったから」

「そりゃそうやろうな。間違ってフレンドリーファイアなんて事したら、ホンマ洒落にすらならへんもんね」

「そうだね。それにしてもフェイトちゃん、結構難しい事考えてたんだね。私、今までそんなの考えた事も無かったもの」

「そ、そうかな……? サルタナさんは入局した頃は重いデバイスを用いていたと聞いてから、私なりにちょっと思った事を言ってみただけなんだけど……」

「いやいや立派な意見やったで、フェイトちゃん。実際、私も少しドキリとした程やし、周りも見てみ?」

はやてに言われるまま周りの武装隊を見てみると、彼らは自分のデバイスが軽い事に若干の不安を覚えているようだった。重い事は意外と大切なんだって、皆そう思ったらしい。現にちらほら、今度重いデバイスに変えてみようとか、実力の上達のために重いデバイスを使ってみようとか、そういった意見が飛び交っていた。

そうやって緊張をほぐす会話をしている内に400秒経ったのか、アースラが一度激しく揺れて次元転移の感覚が走る。直後、私達の身体に星からの引力、すなわち重力が感じられるようになり、何とかミッドチルダへたどり着いたのだと実感した。

「何とか間に合ったみたいね……皆、お疲れさま」

『ふぅ……こちらブリッジ、アースラは無事にミッドチルダ南部上空へ到着。通常航行に入ります』

「皆、いきなりの事態で焦っただろうし、ここで少し休憩していくといい。僕達は上でやる事がある」

エイミィからの報告も入り、ひとまず緊張状態から脱したと理解した事で私達全員、肩の力が抜けた。私達や武装隊の人達は魔力切れを起こしてその場で休んでたけど、リンディさんとクロノは今言った様に休む間もなくブリッジに戻っていった。

どうやらミッドチルダではまだ吸収の影響は少なめのようで、自然回復の速度は通常時と大して変わりが無かった。言われた通りにしばらく休んだ後、何か手伝える事は無いかと思った私達はブリッジへと足を運んだ。そこではリンディさんが吸収のせいでノイズ混じりのモニター越しに、ラジエルのエレンさんと通信をしていた。

「次元空間内の魔力素の吸収によって、アースラを始めとした次元航行艦は次元転移が不可能となってしまいました。こちらよりファーヴニルに近い位置で展開しているそちらの防衛陣は大丈夫なんですか?」

『私達は暗黒物質の事をよく理解しているので、最初から魔法に頼った陣地は用いていません。確かに魔導師の力が使えない事による多少の戦力低下は否めませんが、代わりに別の力を使っています』

「別の力? それってもしや……」

『あえて直接は言いませんが、何しろ相手が相手です。有効な武器を使って戦うのは当然の摂理でしょう?』

「……そうですね。今の状況では禁止も何もありませんし、仕方ないと言えますね」

『実際、地球を含むいくつかの世界で魔力素が枯渇した結果、魔法が使用出来なくなってしまいましたが、元々魔法を使わない世界では特に気にする必要のない事です』

「あの……管理局や魔導師にとっては死活問題なんですけど。その世界で管理局が活動できなくなってしまったということを、エレンさんは特に気にする必要のない事だと言えるんですね……」

『切り替えが早くないと、私達の戦場ではやっていけませんから。それより観測部隊から送られてきた、現在のファーヴニルの姿を映した映像をそちらにも送ります。あと本人がどうしても、と言うので私の力でそちらにある人物を転移させます』

「映像は感謝します。しかし、ある人物とは一体誰の事ですか?」

『……ユーノ・スクライアですよ』

「え、ユーノ君!?」

いきなり出て来た知り合いの名前に、なのはが驚く。まぁ、私も驚いているから人の事は言えないけど。

『(ザザ……ザ……)ノイズが激しくなってきたので、そろそろ通信を切ります。時間が無いため、後の詳しい事は本人から聞いて下さい。彼の怪我もまだ完治していないので本当は止めたいところなんですが、その件はそちらの配慮にお任せしましょう』

「ま、待って下さい! 怪我とは一体……それにエレンさんは魔力なしで転移が可能なんですか!?」

『お忘れですか? 私が世紀末世界の出身であることを。私が使える力はあなた達の知る魔法以外にもあるのですよ。それでは健闘を祈ります』

その言葉を最後にプツンッと通信が切れ、モニターが砂嵐を表示する。直後、魔法陣の展開がない転移魔法によって、アースラのブリッジに淡い金髪の少年が頭や身体中に包帯を巻いた姿で現れた。

「ッ……まさか、たった一回の転移でアースラまで送るなんて……さすがエレンさ……ん……」

ドサッ。

「ゆ、ユーノ君!」

「急いで彼を医務室へ搬送して! まだ彼は動ける状態じゃないわ!」

来た直後にユーノが倒れたことで、途端にブリッジ内が騒がしくなる。とりあえずシャマルや医療スタッフによって医務室に運ばれていった彼だけど、あんなボロボロの状態でも来ようとしたのは一体どうしてだろう?

ともあれアースラが味方部隊と合流するためにミッド中央区へ飛行している内に、私達はラジエルから通信障害の中でも何とか送られてきた映像記録を見てみる。そこには私達がこれから戦おうとしている相手がどういう存在なのかを、ありのまま映し出していた。

周囲にニダヴェリールの破片……崩壊した世界の欠片が漂う虚無の空間の中で、大きく鳴動している巨大な卵。鼓動がするたびに卵は元に戻っていくかのごとく巨大化していき、戦艦ぐらい大きくなった時、卵の殻が割れて孵化し始める。中から這い出ようとしている灰色の化け物……それは人間はおろか、全ての生命がヤツの姿を見た瞬間、絶対かなわないと……倒せる相手じゃないと本能でひれ伏してしまいそうな威圧感を伴っていて、この場にいる全員、否が応でも背筋に寒気が走った。

「ちょ……まだ大きくなるって、これギガヤバくねぇか?」

ヴィータが思わず発した言葉を否定できる者はいなかった。そして私達が固唾を飲んで見守る中…………ファーヴニルが完全に卵から出て全身を私達の目に現した。

Hyuuuuuuuuuuuuuu…………!!!

ただの呼吸音とも雄叫びとも言えるような静かな唸り声、それだけで空気が無いはずの次元空間が震動してしまうほどだった。今の状態でもアースラの倍もある巨大な化け物……そんなヤツから見れば人間なんて米粒以下に感じられるだろう。目にするだけで漂う、人知を超えた存在。敵対する者には抗う事が全くの無意味だと思わせる程の体格に、背中に生えている力を内包した眩いレアメタルの角、生半可な攻撃では傷一つ付かなそうな金属質の鈍い輝きを放つ表皮、左右中央合わせて13個もある複眼、戦艦を丸ごと一飲みに出来る口、太古の翼竜を思わせる肉質の翼。私達が前に戦った絶対存在ヴァナルガンドとは何もかもが異なっていた。

「これが……完全覚醒したエターナルなのか!? なんて大きさなんだ……!」

「ラタトスクの姿が見えないのは不気味ね。すぐ傍にいるのはわかるけど、一体どこにいるの……!?」

「待って。まだファーヴニルの様子が……!」

エイミィの言う通り、映像では孵化を終えたファーヴニルが大きく口を開け、光を放つ粒子を吸い込み始めていた。魔導師なら体の感覚でわかる、吸収しているのは間違いなく魔力素。それを取り込むほどファーヴニルはさらに巨大化、本来の力を取り戻していった。

「私達の魔法が……あんな化け物の力になってしまうなんて……」

「認めたくないけど……ファーヴニルは私達魔導師の天敵だ。普通の魔法じゃあ、まともに対抗する事もできないと思う」

ヴァナルガンドと戦った経験がある私達だからこそ、絶対存在にはエナジーを使った方が通用すると理解している。エナジー無しの魔法では、本来の十分の一程度の威力しか発揮しない。だからこの戦いはエナジーを使える人間、つまり私、姐さん、なのは、エレンさん、そしてお兄ちゃんがカギとなる。
しかし次元世界のほとんどの人はエナジーを使えない。そして魔法至上主義である管理局も、自分達の魔法が通じない事を認めるとは思えない。だから管理局が……皆の意識が変わらなくては、ファーヴニルに全てを破壊され、ラタトスクが破壊の王となってしまう。まだファーヴニルが動いていない今の内に、私達で何とかしないと……。

アースラがミッドチルダ防衛陣に到着したとき、私は次元世界の人間で唯一太陽の力を使える事の責任を心から理解した。そして……地上と本局の人達の口論が繰り広げられている場所へと降り立った。
 
 

 
後書き
民主刀・共和刀:MGS2 ソリダス・スネークが使用した刀。折れた描写とかはないので、雷電との決着の後になんだかんだで回収された設定にしました。戦ったことがないシャロンには不似合いな武器かもしれませんが、お守り共々今後の彼女に必要なのでご了承ください。ちなみに今の彼女は何も訓練していないので銃弾は斬れません、雷電のように手にした直後から防げるわけがありませんので。
VR訓練:MGS2 雷電が受けたのと同じものですが、中にオセロットが受けたアレの操縦があります。お楽しみに。
クルセイダー:ボクタイ太陽銃フレーム”クルセイダー”と”Mk23ソーコム”の要素を合わせたデバイス。はやての初期デバイスを銃型にしたのは、マキナのレックスとの対比をイメージしています。

無茶振りな開発はDARPAにお任せ。太陽銃でもオクトカムでもなんでも作り上げてみせましょう。
一方、ラジエルと違って、管理局がニダヴェリール近くの世界に戦力を送らずにミッドへ集中させた件は、後に大きな影響を及ぼします。
 
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