八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十話 緊張の続く試合その七
「お水飲むわ」
「あっ、お水よりも」
「アクエリアスかポカリスエットね」
「そちらの方がいいです」
池田さんはこのことはしっかりと答えた。
「ポカリスエットとかの方が」
「じゃあそれ飲むわ」
「あと。部の方で用意している」
「レモンを蜂蜜に漬けたものをね」
「召し上がって下さい」
こう日菜子さんに話した。
「是非」
「わかったわ、それじゃあそちらも食べて」
「体力回復させて下さい」
「早く終わった分だけ」
「それがいいです、けれど何か」
「何かとは」
「攻撃か防御か迷っておられたんですね」
こうだ、池田さんも言うのだった。
「日菜子先輩も」
「そうだったの、けれどね」
「それでも攻撃を選ばれたんですね」
「相手も必死に攻めてくるわね」
この辺りは読みだった、日菜子さんのそして空手ならではの。僕は横から話を聞いていてそれで今は聞くことに専念しようと思った、空手家同士の話は空手家にしかわからない、素人には踏み込めないものがあると思って。
「それに私は守りはあまり得意じゃないから」
「あれっ、そうですか」
「相手の娘と比べたらね」
「あの娘確かに守り凄かったですね」
「そうでしょ、あの娘と比べたらね」
あのお寺の娘さんと、というのだ。
「劣るって思ったのよ」
「守りが弱いからですか」
「それを見て守るよりはね」
「攻めと思ったんですか」
「その理由の一つよ」
「そうなんですか、そのこともあって」
「そうだったの、それに相手が必死に来るから」
もうこのとは読んでいたからだというのだ。
「そこを衝こうって思ったの」
「成程、そうなんですね」
「ええ、そしてそれがね」
「正解の選択だったんですね」
「そうみたいね、攻めてよかったわ」
日菜子先輩は微笑んで池田さんに話した。
「お陰で二回戦も勝ったわ」
「じゃあ後は」
「三回戦、準々決勝と進んで」
「準決勝、決勝ですね」
「あと四回ね」
四回の試合を経て、というのだ。
「四回勝ったらね」
「それで優勝ですね」
「先は長いか短いか」
四回のそれがというのだ。
「それがわからないけれど」
「そこを長いか短いかどっちかを思うかですよね」
池田さんはここで日菜子さんにこんなことを言った。
「そう言われてますね」
「そうだったわね、試合を長いと思うか短いと思うか」
「長いと思った方が負けですね」
「思えばさっきの試合も一回戦もね」
そのどちらもというのだった、僕の前で。
「あっという間だったわ」
「そうだったんですね」
「考えることは多かったわ、特に二回戦ね」
「けれど試合自体はですね」
「一瞬だったわ」
まさにだ、そうだったというのだ。
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