| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十話 緊張の続く試合その六

「一本!」
「えっ!?」
「一本って」
 ここでだ、僕も池田さんも。
 驚いて思わず声を挙げた、けれどだった。 
 本当に一本入っていた、合わせて二本で。
「勝ったね、日菜子さん」
「そうね」 
 池田さんも唖然となって僕に応えた。
「嘘みたい」
「攻めてそうしてね」
「勝たれるなんて」
「これはね」
「予想してなかったわ」
 二人で唖然となったまま話した。
「この展開はね」
「しかも一本取ってからすぐに終わったね」
「かえってね」
「試合早く終わったわね」
 二人で話す、そしてだった。
 僕は驚きを隠せない顔のままでだ、試合の後の礼を終えて控えの場に戻って来た日菜子さんにだ、こう問うた。
「あの、さっきの試合は」
「一本取ってからも攻めたことね」
「はい、あの時どうして守られなかったんですか?」
 日菜子さんに実際に問うた。
「普通あそこは」
「そう思うわよね」
「はい、僕はそうしていました」
「私もです」
 池田さんも日菜子さんの前に来た、そのうえで僕と一緒に日菜子さんに問うたのだ。
「さっきの試合はどうして」
「一本取ったわね」
「はい、そうですけれど」 
 問題はそこからだった、僕達が注意しているのは。
「あそこで守って試合終了を迎えるのは」
「そのことも考えたわ」
「実際にそうですか」
「ええ、けれどね」
「どうしてそこで攻撃だったんでしょうか」
「相手の娘が攻めてくるのがわかっていたからなのよ」
 だからだとだ、日菜子さんは僕達に話した。
「あの鉄壁の守りが崩れるから」
「その隙をですか」
「衝いたのよ」
「そうだったんですか」
「そう、確かにあの娘の守りは凄いわ」
「あそこから最初に一本取ることが大変でしたね」
「ええ、本当に苦労したわ」
 日菜子さんもこのことは認めた、それが大変だったことを。
「どうしたものかってね。けれどね」
「一本取って、ですか」
「そこでガードを破れて一本取れたから」
「そこで、なんですね」
「相手も守りを破られて動揺していると思って」
「実際攻めないと駄目になりましたね」
「こうした場合は精神的に追い詰められてその攻撃もね」
 相手の娘のそれもというのだ。
「普段より荒いものになって隙も出来るから」
「だからですか」
「そこを衝いたのよ」
「それで一気にですか」
「もう一本狙って。読み通りになったわね」
「攻めてよかったんですね」
「そうみたいね」
 日菜子さんは僕に確かな顔で答えてくれた。
「迷ったけれど」
「攻撃を選ばれて」
「よかったわ、試合も早く済んで」
「じゃあ早く済んだ分は」
「休むわ」
 そうするとだ、日菜子さんは池田さんに答えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧