| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十話 緊張の続く試合その八

「あっという間だったわ」
「いい感じですね、じゃあ」
「この後もね」
「一瞬で、短い試合で終われば」
「いいわね」
 池田さんにだ、日菜子さんは微笑んで話してだった。そのうえで控えの場所でポカリスエットを飲んでレモンの蜂蜜漬けを食べた。その二つですっきりしてからだった。
 日菜子さんは僕の横に来てだ、こう言って来た。
「どっちの試合も観ていてくれたのね」
「はい、近くからは観ていないですけれど」
「それでも観ていてくれたのね」
「はい」
「有り難う」
 僕にだ、くすりと笑ってお礼を言ってくれた。
「勝ったところ観ていてくれた」
「いえ、それは」
「負ける時でも観ていてくれたら嬉しいわ
「負ける時もですか」
「ええ、いいわ」
 その場合もというのだ。
「私としてはね」
「そうなんですか」
「私はどちらにしても試合を観て欲しいのよ」
「勝っても負けても」
「そうなの、だから三回戦もそれから勝ち進んでいってもね」
「観ていて欲しいんですね、僕に」
「観ていてくれるわよね」
 横から僕の顔をじっと見ての言葉だった。
「これからも」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね。もうすぐ三回戦だから」
「また行かれるんですね」
「そしてね。絶対に」
 自分で負けると言ってもとだ、それでというのだった。
「勝つから。その私の姿をね」
「観させてもらいます」
「それじゃあね」 
 日菜子さんは微笑んでだ、そのうえで。
 その三回戦の場所に向かった、その日菜子さんを見てだった。僕は池田さんにこう言った。
「ちょっと行っていいかな」
「日菜子先輩の試合を観に?」
「うん、行っていいかな」
「いいけれど。ただ」
「ただ?」
「私も観たいわ」
 池田さんもというのだ。
「是非ね」
「池田さんも近くでなんだ」
「行きたいわ、それでそれはね」
「私も」
「私もちょっと」
 一年の娘が二人言って来た。
「儀武先輩の試合を近くで観たいです
「先輩の空手を」
「そうしていいですか?」
「私達も」
「僕はいいけれど」
 正直空手部じゃないから部外者だ、だから一年の娘達にはこう答えるしかなかったし実際にこう答えた。
「問題は」
「いいんじゃない?」
 僕が池田さんの方に顔を向けると池田さんもこう言った。
「見学はしないとね」
「じゃあ私達も」
「是非」
「観てそしてね」
「はい、試合の運び方とか技とか」
「そういうのを勉強させてもらいます」
「先輩の試合って頭脳的だから」
 日菜子さんのそれはというのだ。
「だから是非ね」
「観て、ですね」
「勉強すべきですね」
「私も観て勉強してるし」 
 当の池田さんもだった、このことは。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧