八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十話 緊張の続く試合その二
「お寺は昔は」
「今もね」
「そうだね、神社とかもね」
「そっちの筋ともお付き合いがあるから」
ヤクザ屋さん、その人達とだ。
「賭場は境内で開いていたし」
「お祭りになればテキ屋さんが来てね」
「どっちもヤクザ屋さんでしょ」
「そうそう、そうだったよ」
「それにお布施とかね」
お寺にも神社にも欠かせないこれもだった。
「あれもする人は普通の人とは限らないでしょ」
「ヤクザ屋さんでもするからね」
「むしろヤクザ屋さんのお布施が大きいっていうお寺が多いから」
「だからだね」
「そう、お寺の娘さんなら」
「それもありだね」
「そうした人が出入りすることが多いお寺なら」
このことは京都だとお公家さんもだった、かつて歌留多や花札の字や絵はお公家さんが副業でやっていたらしい。任天堂という会社が京都にあって歌留多や花札を出しているのもこのことからはじまると親父に教えてもらった、あのマリオの企業も。
「あの娘もね」
「ああなるんだね」
「実際お寺絡みヤクザ屋さんって結構いてね」
「長兵衛さんもだよね」
あの江戸時代初期の有名な侠客だ、本職は人足斡旋だったらしい。
「あの人もだね」
「確か本当は住職さんの子供さんよね」
「隠し子って聞いたよ」
本来は奥さんを持てないお坊さんのだ。
「実際は」
「そのお寺の子供がそうなったりとか」
「あったんだね」
「逆もあるでしょ」
「あるね、元ヤクザ屋さんのお坊さんとか」
神父さんでもいる、どうもこうした世界とああした世界の関わり合いは随分深い。このことは僕も高恋性まで知らなかった。
「だからあの娘も」
「あの外見だったりするのよ」
「そうなんだね」
「けれどそれは外見だけで」
「いい娘なんだ」
「将来いいお寺の奥さんになるかもね」
お寺の住職さんと結婚して、というのだ。
「強いし」
「そしてその強さで」
「先輩と闘うのよ」
今からだ、実際にこの瞬間にだった。
日菜子さんとその人の勝負がはじまった、日菜子さんはその手足でどんどん攻めるけれど相手の娘は守りが固くて。
攻めてもだ、それでも。
防いでいる、それを見てだった。
僕は目を顰めさせてだ、池田さんに言った。
「日菜子さん攻めてるけれど」
「それでもね」
「あの人守り固いね」
「鉄壁っていうかね」
「あちらからはあまり攻めないけれど」
それでもだった。
「守りが堅固で」
「何か思ったよりもね」
池田さんも首を傾げさせて言う。
「あの娘守り固いわね」
「そうだよね」
今もだ、その人は日菜子さんの攻撃を受けてもだった。
その手足で的確に守っている、本当に守りが上手い。日菜子さんは激しく攻め続けているけれどここで。
僕は不安に感じた、そして池田さんに言った。
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