八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第四十話 緊張の続く試合その三
「攻めているけれど」
「その攻撃がね」
「何時かはね」
「ええ、疲れが出て」
それでとだ、池田さんも僕に答えた。その日菜子さんの勝負を観つつ・
「攻撃が止まるわ」
「そしてそこでね」
「こうした時で一番怖いのは」
「そう、その時にね」
「攻撃が止まったその時に」
池田さんは僕に言った。
「相手の攻撃が来ることよ」
「それが一番怖いね」
「攻撃のデメリットよ、それもね」
「攻撃が激しければ激しい程」
「その停止の時が怖いわ」
「そうだね」
「まずいわ」
また日菜子さんは言った。
「日菜子先輩このままだと」
「攻撃が止まって」
「その時にやられるわ」
「攻撃が止まった瞬間は」
僕も言った、日菜子さんの危険を感じて。
「守りに移るにしても」
「その瞬間がね」
「そう、無防備になるから」
「そこを狙われるわよ」
「日菜子さんなんか」
その攻撃を観ているとだ、徐々にだった。
攻撃が荒くなってきていた、これは危険な兆候だと思った。
手の動きも足のそれもだ、髪の毛にも汗がついている感じだ。僕はそうしたところまで見てそのうえで池田さんに言った。
「疲れがね」
「出てきてるわね」
「髪の毛から汗がほとぼしっていて」
「散ってるわね」
それが銀色に輝いている、この光景自体は奇麗でも。
動きが荒くなっていてそうしたものが見えている、それがだった。
「まずいわね」
「ばてないかな」
「先輩体力あるけれど」
「あそこまで激しい攻撃を続けていると」
「疲れて」
本当にだった、それで。
「攻撃が止まるから」
「相手の守りがあんまりにも固くて」
「旗上がる一打が入れば」
それでだった。
「違うけれどね」
「本当にね」
「その一打がね」
とにかくだった。
「中々出ないわね」
「それをさせないんだね」
「相手の娘がね」
こう話している間にも日菜子さんの攻撃は続いて。
そしてだ、ふとだった。
両足を交互に使っての、ムエタイを思わせる猛攻撃をはじめた。これには僕も先輩も思わず目を瞠って言った。
「えっ、ここで」
「それなの!?」
「ムエタイみたいで激しいけれど」
「そこでそこまでしたら」
「ちょっとね」
「後のスタミナが」
続かないんじゃないかと思った、本当に。
「先輩、それは」
「幾ら何でも」
二人で思わず言った、けれど。
ここでだ、日菜子さんは。
相手の防御をだった、その蹴りの連続でだった。
緩めてだ、そこからだった。
微かに、本当に微かに崩れたその場所にだった。拳を入れた。何とこの拳が。
「一本!」
「入ったね」
「そうね」
僕も池田さんも思わず言った。
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